先週(7月1日週)の振り返り=米ドル高値更新、162円直前まで続伸

先週の米ドル/円は、週明けにトランプ氏の米大統領返り咲きの可能性が高まったとの思惑などから、米金利が大きく上昇したことを手掛かりに米ドル買いが先行、この間の高値を更新し、7月3日(水)に162円突破寸前まで上昇しました。ただ、発表された米経済指標が予想より弱い結果が目立ち、米利下げ期待から米金利が低下する中で、5日(金)にかけて、米ドルは160円台前半まで反落する場面もありました(図表1参照)。

【図表1】米ドル/円の日足チャート(2024年5月~)
出所:マネックストレーダーFX

では、米ドル/円は先週後半の流れを引き継ぎ、さらに160円割れへ反落が広がるところとなるのでしょうか。それとも再び高値更新で、162円突破に向かうのでしょうか。それを考える上で注目したいのがここまでの米ドル高・円安の主導役の可能性のある短期売買を行う投機筋のポジション動向です。

CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションを見ると、最近にかけてかなり大きく米ドル買い・円売りに傾斜しているようです(図表2参照)。さらに米ドル買い・円売りを果たして続けることができるのか、逆にポジション調整で米ドル売り・円買いに転換する可能性も考えられるところでしょう。こうした投機筋の動向が、米ドル/円が160円割れの反落に向かうか、それとも162円突破に向かうかに大きく影響する可能性があるのではないでしょうか。

【図表2】CFTC統計の投機筋の円ポジション(2022年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

7月の米ドル/円は過去2年連続で比較的大きく下落しました。2022年は140円手前から130円へ、そして2023年も145円から137円へ(図表3参照)。このように、過去2年連続で7月に米ドル/円が反落した一因は、まさに投機筋のポジション調整だった可能性があります。

【図表3】米ドル/円の週足チャート(2022年7月~2024年1月)
出所:マネックストレーダーFX

米ドル買い・円売りに傾斜したポジションの調整が本格化するのはどのような状況が考えられるでしょうか。1つは、米ドル買い・円売り「行き過ぎ」懸念が強くなった状況でしょう。そしてもう1つは、米ドル高・円安「行き過ぎ」懸念が強くなった状況でしょう。ではこの2点について、過去2年の7月の投機筋ポジションを巡る状況を確認してみます。

2022年と2023年の違い

まず2023年は6月末時点で、CFTC統計の投機筋の円売り越し(米ドル買い越し)は12万枚弱に達し、当時の感覚としては米ドル買い・円売り「行き過ぎ」懸念が強くなっていた可能性がありました。加えて、同じ6月末に米ドルは120日MA(移動平均線)を7%上回り、米ドル高・円安「行き過ぎ」懸念も強くなっていた可能性がありました(図表4参照)。以上2つの「行き過ぎ」懸念が重なり、2023年7月は米ドル買い・円売りのポジション調整が広がる中で、145円から137円への米ドル反落が起こったと考えられます。

【図表4】米ドル/円の120日MAかい離率(2022年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

これに対して、2022年の場合は少し状況が違いました。CFTC統計の円売り越しは4~6月にかけて断続的に10万枚を上回っていましたが、7月にはすでに6万枚程度まで縮小していました。一方、米ドルは4~7月にかけて断続的に120日MAを10%上回るという、かなり米ドル高・円安「行き過ぎ」懸念の強い状況が続いていました。

以上から考えられるのは、2022年の場合は、6月にかけて米ドル「買われ過ぎ」、「上がり過ぎ」という2つの「行き過ぎ」懸念が継続し、「買われ過ぎ」修正といったポジション調整は6月にかけて広がり始めたものの、それでも米ドルは大きく下がらない状況が続いたということです。それはなぜだったのでしょうか。

2022年の場合は、インフレ対策の米利上げが3月から始まり、その後本格化しました。このため米金利上昇に伴う日米金利差米ドル優位拡大も、7月にかけて続きました。こうした中で、ポジション調整の米ドル売りが広がっても、7月にかけて米ドル「上がり過ぎ」が継続しました。米ドル「上がり過ぎ」の修正が本格化し、ポジション調整の米ドル売りが一段と広がる中で、米ドル/円が140円手前から130円まで急落に向かったのは、米金利上昇が一服した後からとなったのでしょう(図表5参照)。

【図表5】米ドル/円と日米10年債利回り差(2022年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

以上を踏まえて足下の状況を見てみましょう。CFTC統計の投機筋の円売り越しは、確認できる最新のデータで17万枚以上に拡大、ほぼ過去最高規模に達するなど、米ドル買い・円売りの「行き過ぎ」懸念が極めて強い状況にありそうです(図表6参照)。加えて、足下の米ドル/円の120日MAは153.4円程度なので、161円を超えるとそれを5%以上上回る計算になり、米ドル高・円安の「行き過ぎ」懸念が強まるでしょう。

【図表6】CFTC統計の投機筋の円ポジション(2000年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

米ドル買い・円売り、米ドル高・円安という2つの観点の「行き過ぎ」懸念から、記録的に大きく米ドル買い・円売りに傾斜したポジションの調整はいつ本格化してもおかしくない状況にありそうです。3年連続で7月に米ドル/円の反落が起こる可能性はやはり注目されるのではないでしょうか。

今週(7月8日週)の注目点=米ドル買いポジション「行き過ぎ」調整は始まるか

先週発表された米経済指標は、ISM(米供給管理協会)の製造業および非製造業の景気指数や雇用統計など、全般的に予想より弱い結果が目立ちました。こうした中で、年内2回の米利下げを織り込む形で米金利の低下が広がりました。

今週はCPI(消費者物価指数)など米インフレ指標発表が予定されています。下記のように、今のところ、PPI(生産者物価指数)の前年比上昇率が前回より上昇する予想になっていますが、これらの結果を受けて年内利下げ2回を織り込む米金利低下の流れが大きく変わることにならないかが1つの注目点でしょう。

7月11日:6月米CPI総合=前回3.3%、予想3.1%
同コア=前回3.4%、予想3.4%
7月12日:6月米PPI総合=前回2.2%、予想2.3%
同コア=前回2.3%、予想2.5%

その上で、米ドル/円としては、この間の高値161.9円の更新の有無に注目。高値更新となった場合はさらに米ドル高・円安を模索する展開が続きそうですが、高値を更新せず、いわゆる「二番天井」の可能性が高まった場合には、これまで見てきたように極端に大きく米ドル買い・円売りに傾斜した投機筋のポジション調整が本格化する可能性が高まってもおかしくないでしょう。

以上を踏まえて、今週の米ドル/円の予想レンジは158~162.5円中心で想定したいと思います。