2024年6月7日(金)
日本 家計調査(8:30発表)・景気動向指数(14:00発表)2024年4月公表値

【1】結果:消費は前年比+0.5%で14ヶ月ぶりのプラス、景気の基調は据え置きの下方局面への変化

【図表1】2024年4月 家計調査(消費支出)と景気動向指数の結果
出所:総務省、内閣府よりマネックス証券作成

2024年4月の2人以上の世帯の消費支出は物価変動を除いた実質ベースで前年比0.5%増と、14ヶ月ぶりにプラスの結果となりました。名目ベースの同支出額は、31万3,300円となり、消費支出を構成する6項目(全10項目)で前年比プラスの結果となりました。一方で、季節調整済みの前月比はマイナス1.2%と3ヶ月振りにマイナスとなり、消費の基調としては、上昇しているとは判断できず、一進一退の様子がうかがえます。

【図表2】消費支出(2人以上の世帯)の推移(%、前月比は季節調整済)
出所:総務省よりマネックス証券作成

2024年4月の景気動向指数は、一致指数が2ヶ月連続で上昇、先行指数・遅行指数ともに3ヶ月ぶりに下降する結果となりました。一致指数は10の構成系列のうち、6指標がプラスに寄与し、中でも同月の商業販売額(卸売業)が前年比5.4%と高水準の結果を受け、一致指数を押し上げました。

基調判断は、前回から変わらず「下方への局面変化」のまま据え置かれています。先行指数は、新設住宅着工床面積がプラスに寄与する一方で新規求人数や消費者態度指数の悪化がマイナスに寄与し、系列内で相殺されたことから横ばいで推移しています。遅行指数は、現時点で公表済み系列ではコアCPIがマイナス0.98%ポイント寄与するといった、下降の大半を占める結果となりました。

【図表3】景気動向指数の推移(2020年=100、シャドーは景気後退期)
出所:内閣府よりマネックス証券作成

【2】内容・注目点:賃上げが消費に転嫁される兆し、継続するかに注目

消費支出は、14ヶ月ぶりのプラス転換であったことはポジティブにとらえられるでしょう。プラスに寄与した構成品目を確認すると、授業料などの「教育」が最もプラス寄与の大きい1.68%ポイントでした。次いで、洋服などの「被服及び履物」が0.37%ポイント上昇に寄与しました。

一方で、マイナスに寄与した品目は、自動車等関係費などの「交通・通信」がマイナス1.48%ポイント、「教養娯楽」がマイナス0.94%ポイントと「食料」がマイナス0.73%ポイントの結果でした。

内訳は構成品目毎にまちまちの印象ですが、財・サービス別の前年比をみると、財が低下しサービスが上昇しています。足元では変動が激しくトレンドの観測は難しい内容です。インフレの波及の観点で、サービスは川下(価格転嫁に時間がかかる)と位置づけされています。

サービス消費が継続してプラスで推移していくと、先行きの価格転嫁やそれに付随した賃上げが期待されるため、サービス消費の動向に注目です。

【図表4】財・サービス別消費支出の推移(前年比、%)
出所:総務省よりマネックス証券作成

【3】所感:自動車認証不正が新たなリスク

景気動向指数から判断されるマクロの経済環境が足踏み、ひいては悪化と下方修正されていくことを危惧しています。直近で新たに自動車関連の認証不正問題が報道され、一部の車種について出荷停止が国交省より指示されていることもあり、回復の兆しがあった鉱工業生産・出荷が下押しされるでしょう。

今四半期(2024年4-6月期)のGDPは生産回復や、賃上げの結果を受けての消費増を見込んで、年率2.3%(※)増と2024年1-3月期の年率マイナス2.0%から大きく上昇する予想がされています。新たに出てきた自動車関連のリスクは、現時点では出荷停止の規模が定まっていないこともあり、GDPへの影響も不透明ですが、市場が予想するよりも低下する可能性が高いでしょう。

そうなると今期の四半期GDPは、今回の家計調査や一致指数を構成する商業販売額のような指標から、消費がどれだけプラス幅を拡大するか、またそれが上述のリスクを相殺するかが重要なポイントです。7月に発表される5月の消費関連指標もプラスであれば、消費が上向いている兆しが確認できると考えられます。

(※)2024年5月30日時点集計、QUICKコンセンサス

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太