2023年後半から調整をこなしながら上昇を続けてきた日本株式ですが、7月31日の日銀政策決定会合での利上げとアメリカ経済の減速懸念からマーケット環境は急転しました。

日経平均は8月2日に2,216円(5.8%)、5日には4,451円(12.4%)と2日間で7000円近い値下がりとなりました。5日の下落は額では過去最大、下落率でもブラックマンデーの1987年10月20日の14.9%に次ぐ史上2番目の下落率です。

そして8月6日は一転して大幅な株高となり、日経平均は3,217円(10.2%)高の34,675円で取引を終えました。この日の上昇幅は過去最大ですが、年初来高値からの下落幅を取り戻すのにはまだ時間がかかりそうです。

今後も日銀やFRBの金融政策に対する思惑や経済データに翻弄される不安定なマーケットが続きそうで、不安心理が払拭されていません。

新NISAに冷水を浴びせた日本株の急落

2024年1月からNISAの税制優遇枠が拡大され、投資に興味を持つ日本人が大幅に増えました。今回の急落はその動きに冷や水を浴びせる出来事です。

日本株式だけではなくグローバルに株価は調整しており、為替や暗号資産までその影響が広がっています。

上昇相場に乗って株式を初めて購入した投資未経験者の中には、今回の下落で短期間の大きな損失を被り、投資に対する過剰な恐怖心を持ってしまった人もいるのではないでしょうか。

タイミングを考えないドルコスト平均法の優位性

今回のような相場の変動から学ぶべき事は「投資の基本」の重要性です。例えば、購入タイミングに関して言えばドルコスト平均法を活用すべきです。

ドルコスト平均法とは、定期的に決まった金額でタイミングを考えずに購入していくことで、平均購入コストを引き下げようとする投資手法です。定額で購入することにより、株価が上昇すると購入単位が小さくなり、株価が下落すると購入単位が大きくなります。

その結果、下落した局面で、相対的に多くの投資ができることになります。タイミングを考えて高値掴みになるリスクが無く、失敗の可能性が小さい手法と言えます。

一度にまとめて投資するよりも、例えば年間の投資総額を予め決めて、その金額を毎月均等に購入していく方が合理的だと言うことです。

銘柄選択による集中投資はリスクが高い

「投資の基本」の2つ目は銘柄選択をやるべきではない、ということです。特に投資初心者にとっては簡単ではありません。

2023年来の上昇相場を牽引してきたのは半導体関連銘柄ですが、今回の調整局面では他の銘柄以上に大きく下落しました。

個別銘柄はインデックスに比べ変動率が高く、銘柄分散をしなければリスクが大きくなります。

アクティブ運用で成功するのは一握り

投資対象を分散したとしても、個人投資家が銘柄を選択してインデックスを上回るリターンを実現するのは簡単ではありません。

ある調査データによれば、2023年の1年間に日本株のアクティブファンドの中で日経平均の配当込みリターン(46%)を上回ったものは、全体のわずか14%という結果でした。ファンドマネージャーのほとんどはインデックスに勝てなかったということです。

個人投資家の銘柄選択は、プロであるファンドマネージャー以上にインデックスに勝つのが難しくなります。アクティブ運用で高い運用成果を出せるのは、高い資産運用スキルを持った限られた人か、偶然高い運用成果を出せたラッキーな人だけです。

最近ベストセラーになっている清原達郎氏の『わが投資術』にはプロの運用責任者として活躍してきた実績が赤裸々に書かれています。清原氏は25年でファンドの資産を93倍に増やした驚異的な実績の持ち主ですが、これは極めて大きなリスクを取ることによって実現されたもので、一般の個人投資家には再現性が低いことがわかります。

難易度の高い投資は誰にでもできることではなく、真似をしようと思ってはいけないのです。

長期投資でリターンを実現するには、下がったところでやめないこと

企業が経済活動によって、新しい価値を生み出し、それが株式の評価に反映していく。このような資本主義のサイクルが続く限り、株式市場は変動を繰り返しながら長期的に成長していくことになります。これは過去の株価の推移が実証しています。とすれば、今回のように株価が短期的に調整したとしても、下がったときに止めないことが重要です。

そして、銘柄選択や投資タイミングを考えるのではなく、インデックスに連動した運用を積み立てによるドルコスト平均法を使って続けていく。このような「投資の基本」を忘れずに続けていれば、そのうちに結果が出てきます。

投資対象も日本だけではなく、海外の株式や株式以外の資産にも分散させ、相場の変動に耐えられるアセットアロケーションを実践していきましょう。

2024年4月24日に公開した記事を再構成・修正して、2024年8月6日に更新しました。