モトリーフール米国本社、2024年4月7日投稿記事より

アナリストのコンセンサスでは、S&P500は年末にかけて下落見通し

株式市場は2024年も好調が続いています。

S&P500指数は第1四半期に10%上昇し、四半期としては2019年以来の高いパフォーマンスとなりました。ナスダック総合指数も僅差の9%上昇を記録しています。

株式市場では2023年11月以降、上昇モメンタムが続いています。人工知能(AI)革命への熱狂と力強い企業決算が株価を押し上げています。米連邦準備制度理事会(FRB)は引き続き年内3回の利下げを予想しており、経済は円滑に推移し、株式は債券と比較して魅力を維持する見通しです。

ところが、ウォール街は上昇相場が続くとは予想していないようです。15人のアナリストのコンセンサス目標株価に基づくと、S&P500指数は4月4日の終値から2%安の5,062で年末を迎える見通しです。15人のうち7人が、S&P500指数が足元の水準から下落すると予想しており、目標株価は、ジェイピー・モルガン・チェース[JPM]の4,200からオッペンハイマー・ホールディングス[OPY]の5,500と幅があります。

一部のアナリストは、ここ数ヶ月にわたって株式市場を上へ上へと導いてきた花火が終わりに近づいていると見ているということです。

ウォール街が年末にかけてS&P500が停滞すると考える3つの理由

高過ぎるバリュエーション

ウォール街の一部のアナリストは、「マグニフィセント・セブン(※)」が主導する上昇に疲れが見え始めていると考えています。

JPモルガン・アセット・マネジメントのジョージ・ガッチCEOは3月中旬、マグニフィセント・セブン銘柄の株価収益率(PER)が30倍前後であり、S&P500指数のPERも過去平均の15.7倍をはるかに上回る23.3倍である点を指摘しました。

上位銘柄の中には、異常なほどに高いバリュエーションで取引されている銘柄もあります。例えば、マイクロソフト[MSFT]のPERは38倍です。このバリュエーションには高い期待値が織り込まれており、もし四半期決算が期待に応えられなければ、株価は簡単に下落するでしょう。同様に、株価がさらに上昇するためには、PERの上昇ではなく、利益が増加する必要があります。

アップル[AAPL]、エヌビディア[NVDA]、アマゾン・ドットコム[AMZN]の株価にも割高感があり、やはり業績が予想を下回れば株価は下落する可能性があります。

利下げが行われない可能性

株式に対する強気の根拠の大部分は、金利の低下に基づいています。FRBは年内に3回の利下げを予想しており、パウエルFRB議長もその予想を繰り返し表明しています。

しかし、インフレ率は依然としてFRBの目標値を上回っています。労働市場も堅調です。FRBが利下げを行うのは通常、弱体化した経済を刺激することが目的であることから、市場関係者の間では、3回の利下げが行われる可能性について懐疑的な見方が強まっています。

利下げが行われない、あるいは実施回数が3回未満となった場合、投資家が期待値を調整するのに伴って株価が下落する可能性があります。

地政学的不確実性

地政学的不確実性がリスクでない時などありませんが、今は間違いなく、世界中がいつも以上に不確実性に満ちています。2つの戦争は終結の兆しが見えず、中国をめぐる緊張は高まっています。一方で、世界の大半は今もなお、コロナ禍後のインフレと「生活費危機」から完全には立ち直っていません。しかも、今年は米国の大統領選も控えています。

これらのイベントの一つ一つが、足元の強気相場を脱線させ、またFRBに利下げを思いとどまらせる可能性を持っています。

株は売り時なのか

これらの警告サインに基づいて何か行動を起こす前に、留意すべき点として、市場が今後も上昇し続けた場合、アナリストの目標株価の多くが上方修正される可能性があります。現在の目標株価の中には、2024年が始まる前に設定されたものもあり、JPモルガンもその1つです。

こうした目標株価が、最新の市場の動向や環境を反映していないことは確かです。

さらに、コンセンサス予想が正しかったとしても、現在の水準から2%の下落はパニックになるほどではありません。たとえそうなったとしても、S&P500指数は年間で約6%の上昇となります。

ウォール街は今回の強気相場についても、ずっと後手に回っており、アナリストの多くは景気後退を予測していました。

ウォール街の予想の背後にある根拠を検討する価値はあるかもしれませんが、投資家としては長期的視点で、自分自身で判断をするべきです。ウォール街が弱気に傾いたからという理由だけで、手持ちの株式を売るべきではないでしょう。

(※)アップル、マイクロソフト、アルファベット[GOOGL]、アマゾン・ドットコム、メタ・プラットフォームズ[META]、エヌビディア、テスラ[TSLA]の7銘柄

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アマゾン・ドットコムの子会社であるホールフーズ・マーケット元CEOのJohn Mackeyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。ジェイピー・モルガン・チェースは、モトリーフールのグループ会社アセントの広告パートナーです。元記事の筆者Jeremy Bowmanは、アマゾン・ドットコムの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はアマゾン・ドットコム、アップル、ジェイピー・モルガン・チェース、マイクロソフト、エヌビディアの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社は以下のオプションを推奨しています。マイクロソフトの2026年1月満期の395ドルコールのロング、同2026年1月満期の405ドルコールのショート。モトリーフールは情報開示方針を定めています。