投機の米ドル買い撤退が起こる目安
米ドル/円が120日MAを下方ブレークしたタイミング、逆に上方ブレークしたタイミングを、ヘッジファンドの取引を反映しているとされるCFTC(米商品先物取引委員会)統計の円ポジション(対米ドル)に重ねて見ると、下方ブレークすると米ドル買い・円売りポジションの手仕舞い(米ドル売り・円買い)が加速に向かい、逆に上方ブレークすると米ドル買い・円売りポジション拡大が加速に向かうパターンがあった(図表1、2参照)。
このパターンを参考にすると、足元の120日MAは148円丁度程度なので、それを米ドル/円が上回っている中では、円安阻止介入が行われた場合でも投機筋の根強い米ドル買い・円売りが続く可能性がありそうだ。一方で、148円を大きく米ドル/円が割れてくるようなら、投機筋は米ドル買い・円売りポジションの手仕舞い本格化に向かう可能性が出てくる。
2022年のケースを振り返る
2022年9~10月にかけて展開した円安阻止介入局面では、介入が行われた期間の120日MAは140円未満にとどまっていた。このため9月22日に145円程度で最初の米ドル売り・円買い介入が行われてから約1ヶ月続いた介入局面の中で、米ドル/円が120日MAを割れることはなかった。
こうした中で、CFTC統計の投機筋の円ポジションも、10月末にかけて円の売り越し(米ドル買い越し)が続いていた。要するに、9月22日~10月24日の介入局面でも投機筋の米ドル買い・円売りは続き、撤退することはなかったわけだが、それはテクニカルな観点からすると米ドル/円が120日MAを上回る推移が続いたことが大きかったのではないか。
2022年9月22日、日本の通貨当局による最初の米ドル売り・円買い介入が行われた時の120日MAは134円程度だった。この日の介入を受けて米ドル/円は140円まで急落したが、それでも120日MA割れにはまだまだほど遠い状況にあった。
この後、米ドル/円は10月21日に151円台でピークアウトし下落に転じたが、120日MAを割れたのは11月10日、「CPI(消費者物価指数)ショック」の後だった。この「CPIショック」から米ドル/円はそれまでとは打って変わって一段安に向かったわけだが、これも120日MAとの関係で考えると辻褄が合うだろう。
今回、介入が行われた場合のインパクトは?
さて今回、日本の通貨当局の米ドル売り・円買い介入は152~155円で実施されるとの見方が基本ではないか。その場合、148円程度の120日までは4~7円ということになる。上述のように、2022年9月22日の介入の際に、120日MAまで10円以上も開いていたことからするとかなり近い位置にあると言えるだろう。
2022年に行われた介入では、一日で最大5円前後の米ドル急落が起こった。今回も介入のインパクトが同程度なら、投機筋の米ドル買い撤退をもたらす120日MA割れは起こりやすい状況にあるのではないか。