モトリーフール米国本社、2024年3月26日投稿記事より

キャシー・ウッド氏の最近の動向

アーク・インベストメント・マネジメント(以下、アーク社)の共同創業者で、CEOを務めるキャシー・ウッド氏にとって2024年は現状では良い年ではありません。米国の株式市場全体の上昇相場が続く中、同氏のお気に入り銘柄の多くが下落しています。2024年は、ほとんどのグロース投資家が幸先の良いスタートを切りましたが、アーク社の最大の上場投資信託(ETF)は年初来で4%下落しています。ウッド氏が保有する上位銘柄の中には、更に下落しているものもあります。

ウッド氏は3月25日に、テスラ[TSLA]、ロク[ROKU]、ロブロックス[RBLX]を追加投資しました。3銘柄はいずれも、年初来で株価が20~31%下落しています。これら3社について詳しく見てみましょう。

テスラ[TSLA]:年初来31%安

電気自動車(EV)の主力メーカーであるテスラの株価は、2023年に2倍以上に上昇しましたが、2024年に入って様相が一変しています。1月には、第4四半期決算の内容が失望を招き、大幅に下落しました。第4四半期の売上高は252億ドルと、前年同期比でわずか3%の増加にとどまり、調整後1株当たり利益(EPS)は同40%減の0.71ドルでした。どちらも、アナリスト予想を下回る結果でした。

テスラの売上高の伸びが鈍化し、利益率が縮小しているのは驚くことではありません。同社はEVの増産に見合うだけの需要を喚起するため、2023年に繰り返し値下げを実施しました。ベースモデルのモデルXでさえ、7,500ドルの連邦税額控除が適用されるまで店頭小売価格を引き下げたことが、販売を後押ししていました。

実際に、テスラの販売は好調で、第4四半期の新車販売台数は20%増加しました。しかし、平均販売価格が前年同期比で大幅に下落したことと、顧客の間で低価格モデルのモデル3とモデルYシリーズへのシフトが続いていることが原因で、第4四半期の増収率はわずか3%という期待外れの結果となりました。値下げのペースがコスト削減のペースを上回っているため、利益が苦戦するのは当然の流れです。

2月には、市場の上昇と共にテスラの株価も反発し始めましたが、3月に入り、2024年第1四半期の業績も精彩を欠くであろうとの懸念から、株価は再び落ち込んでいます。テスラが既存在庫の購入者に対し、3月中の納車を条件とした積極的なプロモーション活動を展開していることから、観測筋の間では、第1四半期の業績も軟調になるとの見方が強まっています。アライアンス・バーンスタインのアナリスト、トニ・サコナギ氏は3月26日、テスラの目標株価を150ドルから120ドルに引き下げ、第1四半期および2024年通年の生産台数予測を大幅に引き下げました。同氏が提示した2025年予想EPSは2.22ドルですが、これはアナリストのコンセンサス予想である3.67ドルを大幅に下回るだけでなく、テスラの2022年と2023年の実績EPSと比べても大幅に低い数字です。

テスラは過去にも、大幅な下落から反発したことがあります。そのため、ウッド氏は追加投資を判断したのでしょう。テスラは現在、アーク社のポートフォリオ全体の中で2番目に大きなポジションを占めています。

ロク[ROKU]:年初来29%安

ストリーミング・プラットフォームの主力企業であるロクも、アーク社のポートフォリオ中で上位の保有銘柄であり、2023年には株価が2倍以上に上昇しました。現時点ではアーク社のポートフォリオの中で4番目に大きいポジションです。同社は視聴者を広げていますが、目先の懸念は、競争が激化しているために、しばらく黒字回復は見込めないとことです。

現在、ロクのオペレーティングシステム上のアクティブアカウント数は8,000万件に上り、過去1年間で14%増加しています。しかし、同社は赤字が続いており、2023年第4四半期のユーザー1人当たり平均売上高は前四半期比で大幅に減少しました。アナリストは、黒字回復が2027年になると予想していますが、会社側は、黒字回復を最優先事項として、さまざまな取り組みに着手しています。

ウッド氏はロクのリモコンを握りしめながら、乱高下する株価を注視し、辛抱強く待ち、追加投資のタイミングをうかがっていたのでしょう。

ロブロックス[RBLX]:年初来20%安

オンラインゲーム・プラットフォーム開発会社であるロブロックスは、アーク社の中で10番目に大きいポジションです。2023年には、テスラやロクのように株価が2倍になることはありませんでしたが、それでも61%上昇し、市場をアウトパフォームしました。ところが、ロブロックスも2024年に入って下落しています。

テスラやロクとは異なり、ロブロックスは2023年第4四半期決算が予想を上回ったことを受けて株価が上昇しました。売上高は前年同期比30%増、ブッキング(繰り延べ分などを加えた調整後売上高)は同25%増となり、2023年上半期よりも成長率が加速しています。2024年の売上高ガイダンスも心強い内容でした。しかし、赤字幅の拡大が予想されています。

1日当たりのアクティブユーザー数は、2023年第2四半期に前四半期比で減少しましたが、その後は回復しています。同社のゲームプラットフォームの人気がますます高まれば、株価も上昇するかもしれません。3月25日にロブロックスの追加投資を決めたことを考えると、ウッド氏もどうやらそのように考えているようです。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Rick Munarrizはロクの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はロブロックス、ロク、テスラの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。