下値の目処がたたないJ-REIT価格

好調な株式市場と逆行し、J-REIT価格は下落が続いている。直近3ヶ月で見ると東証REIT指数の高値は11月30日の1,845ポイントであったが、2月19日には1,707ポイントまで下落し2023年来安値をつけた。東証REIT指数が1,700ポイントとなるのは、コロナ禍の影響があった2020年12月以来、3年2ヶ月ぶりとなる。

12月中旬から1月中旬にかけてJ-REIT価格は持ち直しの動きを見せたが、その後は急落とも言える状態となっている。前述の通りコロナ禍の影響を受けていた時期と同水準まで価格は下落しており、下値の目処がたたない値動きとなっている。

個人投資家は割安感から投資を拡大

価格下落に伴いJ-REIT市場全体の利回りは上昇し、2月上旬には4.5%を超えている。個人投資家は、J-REITの割安感や出遅れ感に注目し2024年1月には120億円の買い越しとなった。

この買い越し額は、コロナショックでJ-REIT価格が急落した2020年3月の478億円、4月の158億円に次ぐ歴代3位の額となっている。個人投資家はコロナ禍の時と同様にJ-REIT価格は下げすぎと判断していると考えられる。しかし、個人投資家の買い越し額は、他の投資部門の買い越し額と比較すると少ないため、市場全体を反転させる動きとはなっていない。

また、前述の個人投資家とは、個別銘柄の選択を行うJ-REIT市場に比較的詳しい投資家とも言える。2023年1月から売り越しに転じた外国人投資家に代わりJ-REIT価格を支えていた投資信託は、2023年7月以降、2024年1月まで7ヶ月連続で売り越しとなっている。投資信託を通じてJ-REIT市場に入流していた個人投資家の資金は、好調な株式市場に向いていると考えられる。

機関投資家のJ-REIT離れが下落要因

投資信託と同様に機関投資家のJ-REIT売りが、価格下落の要因となっていると考えられる。その理由として機関投資家の投資対象となりやすい時価総額が大きい銘柄や機関投資家の投資対象となり利回りが低い銘柄の価格下落が鮮明となっていることが挙げられる。

直近高値の11月30日から2月20日まで東証REIT指数は7.3%下落しているが、利回りが低く、時価総額が大きい銘柄の下落幅が大きくなっている。東証REIT指数の下落幅で区分すると銘柄の動きが明確になる。

具体的には、同期間の下落幅で区分すると、下落幅が小さい31銘柄の11月30日時点の時価総額と利回りの中央値はそれぞれ1283億円、4.62%であった。一方で、下落幅が大きい27銘柄は2962億円、4.19%となっている。

つまり機関投資家の投資対象となりやすい時価総額が大きく、利回りが低い(投資家の需要が高い)銘柄の価格が下落した状態となっている。株式市場は大幅に上昇しているため機関投資家から見れば株式に投資しないリスク(機会損失)が高くなっている。この点がコロナ禍以来のJ-REIT価格下落要因になっていると考えられる。

その一方、REITの分配金というファンダメンタルズは堅調な状態が続いている。株式市場が好調な間はJ-REIT価格の反発は難しいと考えられるが、利回り面では割安感が強く、長期投資が可能な状態だ。従って、価格上昇に伴い利回りは低くなっている株式投資に代り、新NISAで高い利回りのJ-REIT投資を行うことは有望な投資手法と考えられる。