2023年の価格動向振り返り
2023年のJ-REIT価格は年間ベースで下落となった。東証REIT指数は2022年末の1,894ポイントに対して2023年末は1,806ポイントとなり、5%の下落で取引を終えた。
個別銘柄で見ると、19銘柄の上昇に対して39銘柄が下落。価格上昇が10%を超えた銘柄は、ホテル系のインヴィンシブル投資法人(8963)(19.6%上昇)と大江戸温泉リート投資法人(3472)(13.5%上昇)の2銘柄のみであった。
一方で、価格下落率が10%を超えた銘柄は15銘柄となり、さらにヘルスケア&メディカル投資法人(3455)(22.3%下落)と星野リゾート・リート投資法人(3287)(20.2%下落)は20%を超える下落率となった。
価格騰落率の上位と下位にホテル系が含まれていることが示す通り、用途別での傾向は少なく、銘柄の個別性が大きく影響した1年となった。価格上昇銘柄の傾向を敢えて示すとすれば、2022年に価格が既に下落していたオフィス系やオフィス主体の総合型の価格が2023年になってやや回復したという点になるだろう。
物流系銘柄は減配の可能性が低い
物流系は、特化型9銘柄及び物流主体の総合型2銘柄も含めて全て下落した。その要因としては、2023年に米国長期金利が想定以上に上昇したことが挙げられる。
物流系銘柄は外資系がスポンサーとなっている銘柄の時価総額が大きく、外国人投資家の売買動向の影響を受けやすい。米国長期金利を大幅に下回る利回りでは価格が維持することが出来ず、物流系銘柄が総崩れになった格好だ。
ただし、物流施設は大量供給が続いているという懸念材料はあるが、テナントと長期契約を締結している場合が多いため、既存物件への影響は少ない。物流施設全体の空室率上昇は、新設物件の影響であるため物流系銘柄の収益性の維持は可能だ。
さらに借入金比率が低く、長期固定金利での調達を行ってきたため、国内金利上昇の影響も他用途と比較して軽微なものになる。また予想分配金は、物件売却益や売却益による内部留保の取崩で賃貸収益ベースの分配金水準を「かさ上げ」している銘柄も少ない。言い換えれば、物流系銘柄は不動産売買市況が変調しても分配金に対する影響が少ない用途となっている。
投資妙味が高く長期投資も可能
価格面でも米国長期金利が2023年10月中旬以降低下傾向にあるため、反発の余地が大きくなっていると考えられる。ただし、物流系銘柄の価格上昇にはもう少し時間を要すると考えている。その理由として、米国10年債利回りが5%まで上昇し、その後に低下していることが挙げられる。
現状の米国債投資は高い利回りと、利回り低下による価格上昇という投資妙味が高い状態になっていることから、外国人投資家が日本の物流系銘柄への投資を拡大するまで少し時間を要すると考えられる。
一方で、米国債利回りは現状4%近くまで低下しているが、物流系銘柄の利回りは単純平均で4.2%程度と高い。従って、米国債利回りが再度上昇しても価格に与える影響は少ないと考えられる。さらに米国債利回りの低下が続けば、米国債投資の妙味は減少し、物流系銘柄への投資が拡大する可能性が高い。
また、前述の通り物流系は分配金の持続性が高い用途となっている。高い利回りで投資が可能となっているため、新NISAで長期投資を行う点でも物流系は有望な投資先と考えられる。
※ 産業ファンド投資法人(3249)と大和ハウスリート投資法人(8984)は物流施設の保有割合が50%を超える総合型