先週の動き:中東情勢緊迫化の中、ニューヨーク金先物価格が一時2,000ドル突破、最高値更新が続く国内金価格は9,526円で終了

先週のニューヨーク金先物価格(NY金)は、一時2,000ドルを突破するなど上値追いの展開となった。緊迫化した中東情勢を映す形で、比較的安全資産とされるゴールドが買いを集めた。

一方で、米連邦準備制度理事会(FRB)による歴史的高金利政策の高止まりが意識され、米国債相場の値動きが大きくなり、指標となる米10年債利回りが一時5%に達するなど、16年ぶりの高水準を更新した。

米長期金利の上昇は、利息を生まないゴールドの売り要因となるが、パレスチナ自治区ガザに対するイスラエル地上軍の侵攻が予想される中で、地政学リスクの高まりがゴールドを押し上げる要因になった。米長期金利上昇の中で、NY金はいわば逆行高を演じることになった。

10月20日のNY金の終値は1,994.40ドルで終了。取引時間中の高値は2,009.20ドルとなった。いずれも7月末以来、約2ヶ月半ぶりの高値水準となる。この2週間で急激に水準を切り上げたことへの警戒感から2,000ドル超では売り買い交錯状態となったものの、一定の売りは消化し、2,000ドル超で滞留。終盤にかけては、さすがに大台維持とは行かなかったものの、切り上げた水準を維持して取引は終了した。

週足は52.90ドル、2.72%高で2週続伸となった。レンジは拡大し、1,921.20~2,009.20ドルとなった。取引レンジの拡大は想定していたものの、テクニカル要因も手伝い上値が拡大することになった。先週のコラムでは想定レンジを1,920~1,980ドルとしていた。

その一方、国内金価格は米ドル/円相場が1ドル149円台での膠着が続いたことから、NY金の値動きをそのまま映し、さらに過去最高値の更新が続くことになった。10月20日の国内金価格の(日中取引)終値は9,526円となったが、4営業日連続の最高値を更新となった。週足は498円、5.51%高でレンジは9,042~9,540円となった。

先週のコラムでは、強気のレンジを予想し9,040~9,380円としていたが、上値の誤差は米ドル/円相場を148円台で読んだことによる。ちなみに10月20日のNY金が一時2,000ドルを突破したことで、国内金価格の10月20日の夜間取引(データは10月23日分として反映される)は、一時9,610円まで買われ、連日の最高値更新となった。

ファンドのショートカバーと新規買いによるNY金の急騰、目先は一巡感

先週後半にかけてのNY金の上昇は、一服状態となっていた米長期金利が再び騰勢を強める中で起こった。金利を生まないゴールドは一般的に米債金利の上昇とは逆相関性が強く、売られる傾向が強い。主にファンドのアルゴリズム(運用プログラム)による動きだが、そうした売買行動を取るファンドは、10月10日に至る2週間にわたり、米長期金利とドル指数の上昇に反応し、すでに売り越し(ネットショート)に転じていた経緯がある。

その後のイスラム組織ハマスとイスラエル間の軍事衝突を受け、これらの売りポジションが急速に買い戻され(ショートカバー)、しかも紛争拡大の可能性から新規の買い建て(フレッシュ・ロング)の積み増しに転じたことで、NY金は急反発となった。つまり、米長期金利上昇に対するNY金の逆行高は、弱気に転じていたファンドの買戻しと新規買いという金市場の内部要因の変化を映したものと言える。

米東部時間の先週末、10月20日夕刻に米商品先物取引委員会(CFTC)が発表したデータによると、目先筋のファンドは、10月10日時点で重量換算して47トンの売り越し(ネットショート)から、10月17日時点では130トンの買い越し(ネットロング)に転じており、ファンドの買いが、この間のNY金上昇の原動力になったことを表している。目先筋だけで1週間に約180トンの買いを入れたことになる。

その後10月18日にガザにある病院の爆発など事態の緊迫化などを勘案するならば、さらに買いを進めたとみられ、ポジション(ファンド持ち分)はさらに大きく買い越しに傾いたとみられる。先週末10月20日の2,000ドル超は、このような流れの中で起きている。

これは中東情勢のさらなる悪化を想定した上でのもので、民間犠牲者増が予見されることから危惧されているガザ地区へのイスラエル軍による地上攻勢をも、織り込みにかかった結果と言えそうだ。この点で目先の買いに一巡感が漂う時間帯に入っている印象が強い。

金利据え置き示唆も見通し難か?10月19日のパウエルFRB議長講演

先週は10月19日にパウエルFRB議長の講演が予定されており、米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に10月21日からFRBが対外発信を控えるブラックアウト期間に入る直前に行われることもあり、発言内容が注目されていた。

パウエルFRB議長は講演で、この数ヶ月の物価・雇用情勢について「目標に向けた進展が確認された」とし、政策運営は「不確実性やリスクなどを考慮し、慎重に作業を進めている」と発言した。

この発言を受け、11月会合での利上げ見送り観測が一気に高まることになった。ただし、一方で「現時点で金融政策が厳しすぎるという証拠はない」とも発言したことに市場は反応。米10年債利回りは一時5.001%(ロイター調べ)まで上昇する局面が見られた。おおむね鈍化傾向が続くインフレだが、「楽観視できない」「まだ高すぎる」という言葉の裏に見通しにくい経済の先行きの不透明感を感じさせることになった。

FRB内でも政策金利の水準を含め、見方の割れが続いており、市場も判断を付けかねている状況が債券相場の荒れた値動きに表れていると言えそうだ。いずれにしても、米利上げサイクルは終盤と捉えて問題ないと思う。

今週の見通し:人道的配慮を求める動きに地政学リスクはやや後退、7~9月期米実質GDP速報値、PCEコアデフレーターに注目。NY金は1,965~2,010ドル、国内金価格は9,380~9,680円を想定

一定の織り込みが進む中で、今週も引き続き中東情勢の行方が金市場に影響を与えることになる。イスラエルを後押しする米国にしても、ガザ地区での人道的被害の拡大には国際世論の手前神経質になっており、どこまでイスラエルに自制を促し、民間人の避難の時間を稼ぎ、救援物資を届けるかに腐心している。

足元の流れは、即座のイスラエルによる地上侵攻を抑止しており、「地上侵攻近し」という織り込みにかかった先週のNY金の2,000ドル超は、今週は一旦押し目を作る流れとなりそうだ。とはいえ、戦時体制ゆえに不測の事態発生はいつでもあり得ると留意する必要があるだろう。

予断を許さぬ地政学リスク拡大の中で、米下院では月初に解任された議長の後任選びが難航し、議会の空転が続いている。足元で下院共和党では6名の候補が名乗りを上げているとされるが、今週中にどう絞り込めるか。2024会計年度暫定予算切れとなる11月17日が迫るが、議会の正常化が間に合うのかさえ見通せない。今週の材料というわけではないが、遅かれ早かれ、金市場の関心事になりそうだ。

今週の米国では、10月26日に7~9月期米実質GDP速報値が発表される。前期比年率4.3%成長が見込まれているが、5%超との予想もあり、結果によっては再び米長期金利の動きが大きくなりそうだ。

10月27日にはインフレ関連で9月の個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)の発表が控える。いつものようにエネルギーと食品を除いたコア指数がどうなるか。前月の3.9%から9月は3.7%に鈍化が予想されているが、その傾向を見守る。

このような中、NY金は1,965~2,010ドル、国内金価格は9,380~9,680円のレンジを想定している。

【図表】ゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券