先週の振り返り=米ドル高・円安再燃も伸び悩む
先週の米ドル/円は、注目イベントのFOMC(米連邦公開市場委員会)、日銀金融政策決定会合などを受けて米ドル高・円安が再燃しました。ただ、この間の米ドル高値更新となったものの、148円台半ばでは伸び悩む展開となりました(図表1参照)。
1年前の2022年9月は、このFOMC、日銀会合といった注目イベントを通過した後に米ドル高・円安が一段と進んだことに対し、9月22日、日本の通貨当局による円安阻止の最初の米ドル売り・円買い介入が行われました。その意味では、今回は円安阻止介入出動となるほど米ドル高・円安が広がらなかったという言い方もできるのではないでしょうか。それはなぜなのでしょうか。注目イベントについて、個別に振り返ってみたいと思います。
9月20日=FOMC
今回は、大方の予想通り利上げは見送りとなりましたが、6月会合以来となるメンバーの経済見通し「ドット・チャート」で、2023年の実質GDPが大幅に上方修正されるなど、「米経済は予想以上に強い」(パウエルFRB議長=米連邦準備制度理事会)として、2024年以降も高金利を維持するといった見通しが示されるところとなりました。これを受けて、米長期金利はこの間の高値を更新、それを嫌気する形で株価は急落となりました。
9月22日=日銀金融政策決定会
前回、7月末の会合で、YCC(イールドカーブ・コントロール)の柔軟化といった政策修正がありましたが、今回は事前の予想通り現行の大規模な金融緩和の継続が決まり、政策変更はありませんでした。会議終了後の植田日銀総裁の記者会見でも、「マイナス金利解除への距離感がすごく動いたわけではない」との発言などから、当面の緩和見直しの可能性はないとの受け止めから円売りでの反応となりました。
以上のように、先週の2大イベントと言えるFRBと日銀の会合では、少なくとも金融政策は事前予想通り変更なし。ただ先週は英国、スイス、さらに新興国などの金融政策決定会合も集中し、こちらは微妙な「サプライズ」もあったようです。
英国、スイスなどの金融政策決定会では「サプライズ」も
具体的には、英国とスイスは、事前の予想が分かれていた中で利上げを見送り、これを受けて英ポンド、スイスフランは一時急落となりました。これら通貨の対円での急落、つまりクロス円の急落は、米ドル/円も含めて円高圧力になった可能性があったでしょう。
以上、先週集中した金融政策決定会合を中心に振り返ってみました。FRBは「予想以上に強い米経済」としてタカ派姿勢を示し、株などのリスク資産の下落を招くところとなりました。一方で英国、スイスなどは利上げ見送りがクロス円急落をもたらしました。
そもそも、CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、すでに「売られ過ぎ」懸念が強くなっていました(図表4参照)。過剰なポジション保有はリスクの1つでしょう。こうした中で、FOMCを受けたリスクオフ、また欧州通貨/円などクロス円の急落(円高)という現象は、過剰に売られた円の買い戻しをもたらし、米ドル高・円安を足踏みさせる要因になったということではないでしょうか。
今週の注目点=FOMC後のリスクオフは続くのか
先週のFOMCではタカ派姿勢、そして日銀会合では緩和見直しを急がないであろうことが確認されたことで、日米金利差を手掛かりに、さらなる米ドル高・円安を模索する状況は今週も続く可能性が高いでしょう。
為替介入との攻防で、米ドル/円は米ドル高値圏で乱高下する可能性も
ただ先週は実現しなかったものの、日本政府関係者の発言などを見る限り、先週までの米ドル高値を更新し、150円の大台を目指す動きとなった場合は円安阻止介入が再開される可能性が高いのではないでしょうか。日本の通貨当局は2022年に円安阻止の米ドル売り・円買い介入に3回出動しましたが、介入が行われた当日の米ドル/円は5円前後の大幅反落となりました。これを参考にすると、米ドル高・円安が一段と進み、為替介入との攻防が再現した場合、米ドル/円は米ドル高値圏で乱高下する可能性があるでしょう。
もう1つの注目は、株価の動向です。FOMCのタカ派姿勢への警戒などから、先週は米国を中心に、世界的に株価が大きく下落しました。このような株安、リスクオフが続くようなら、円売りに大きく傾斜したポジションのさらなる拡大には自ずと限度があり、むしろ円売りポジションの圧縮に伴う円買い戻しが進む可能性もあるでしょう。
以上を踏まえると、今週の米ドル/円はさらなる米ドル高・円安が意外に進みあぐねるか、そうではなくて米ドル高・円安が一段と進んだ場合は日本の通貨当局による円安阻止介入再開で一時的には米ドル/円が急反落する可能性もあるのではないでしょうか。今週の米ドル/円の予想レンジは145~150円を中心に想定したいと思います。