イオン(8267)は2社の完全子会社化を発表、他企業への波及進むか

2024年はTOB(株式公開買付け)などによる親子上場解消が目立ったが、2025年はさらに加速する可能性が高まっている。

2月28日に総合スーパーのイオン(8267)がショッピングセンター(SC)の開発・運営を行うイオンモール(8905)と、SCの保守などを展開するイオンディライト(9787)を完全子会社化すると発表している。イオンはこの2社を含めて15社が親子上場の状態にあり、市場からはグループの経営効率が課題との見方があった。イオンが動いたことは、ほかの企業への波及が進むとの見方が出ている。イオンの吉田社長は会見で、「外部に流出する利益を最小化し、財務を健全化する」と語ったと報じられている。

2025年は既に、1月に富士通(6702)はグループの富士通ゼネラル(6755)について、給湯器大手パロマの持ち株会社がTOBで完全子会社化すると発表している。1月31日には日本製鉄(5401)が子会社の山陽特殊製鋼(5481)をTOBで完全子会社化すると発表している。

親子上場、2つの問題点

親子上場の課題は多い。問題点としては大きく分けて2つある。

【1】利益相反

子会社の財務や経営方針の決定権を有しているため、親会社の利益が優先される。少数株主の利益が損なわれる「利益相反」が起きやすい

【2】ガバナンス(企業統治)

親会社から役員が送られてくる、あるいは親会社と兼任することが多く、上場企業としての独立性が担保されにくい。親会社の意向に左右されやすく、透明性に欠ける。

会社以外の株主の声が反映されにくいというのは、株式を上場している意味そのものが問われるケースもある。

親子上場のメリットは?

一方、社内新規事業を子会社として上場させて成長を促すことができることや、知名度を上げて人材確保をしやすくなる、独自に資金調達できる、などのメリットもある。

なお、上場子会社のプライム市場上場には独立性社外取締役を過半数とすることが求められている。東証は2023年12月に、親子関係や持ち分法適用会社に対し、グループ経営、利益相反の状況等に関する情報開示拡充を求める文書を出している。

「親子上場に関する投資者の目線」リポート

東京証券取引所は2月4日に「親子上場に関する投資者の目線」と題したリポートを公表した。

東証ではかねてから親子関係や持ち分法適用関係にある上場企業を対象に、グループ経営や少数株主保護に対する取り組み、開示を要請している。

リポートの中では「最近においては、『資本コストや株価を意識した経営の実現』の要請も踏まえ、中長期的な企業価値向上の実現に向けた経営資源の適切な観点からも、親子上場の在り方に関する検討や開示のニーズが高まっているところ」とある。

東証では中長期の企業価値向上を重視する国内外の100社超の投資者(投資家)と面談を実施。親会社や子会社に対する投資者の目線とギャップのある事例などを紹介している。

親会社サイドについては「子会社上場のメリットを述べるだけの説明になっている」。

上場子会社の企業価値や資本効率については「子会社の問題ととらえ、そもそも親会社が対応に消極的」。

子会社サイドについては「親会社の受け身で、自社としての現在の形態が最適かどうかの検討がなされていない」「ガバナンス体制の実効性が確認できない」。

などとし、東証では親子上場企業にこれらの例示を参考とし「グループ経営や少数株主保護に対する検討や投資者との対話を進めてほしい」などと結んでいる。

こうした動きも親子上場の解消を促進する効果がありそうだ。

親子上場解消の可能性あり? 銘柄をピックアップ

親子上場を解消する際にTOBを実施した場合、プレミアムがつくケースが多い。親子上場解消の可能性がありそうな銘柄をピックアップする。

親会社 子会社 事業内容等
富士通(6702 FDK(6955 産業用リチウムイオン電池やニッケル水素電池に展開。報道では富士通は非中核事業子会社の売却を明言。
日本製鉄(5401 大阪製鐵(5449 電炉の中核。ストラテジックキャピタルが10%超保有。
  日鉄ソリューションズ(2327 製造・流通系システム構築に強みあるSI。
イオン(8267 イオンフィナンシャルサービス(8570 グループの金融サービスを統括。
  イオンファンタジー(4343 モールを軸にアミューズメント施設を運営。
日産自動車(7201 日産車体(7222 日産自動車の子会社で、車両の生産を担当。投資ファンドが大株主。物言う株主のエフェッシモも保有。日産自のリストラで株式の動向に関心。
GMOインターネットグループ(9449 GMOペイメントゲートウェイ(3769 EC業者向けに決済処理サービスを提供。時価総額約5700憶円と、親会社の時価総額3070億円を上回る。なお、GMOIGは上場子会社を9社保有。
キヤノン(7751 キヤノン電子(7739 製造子会社。
  キヤノンマーケティングジャパン(8060 販売子会社 SIなども。