モトリーフール米国本社、 2023年7月11日 投稿記事より

主なポイント

・キャシー・ウッド氏は、ジーニアス・スポーツをめぐるポジティブなニュースの直後に同社株を大量購入した
・ある株式リサーチアナリストは、ウッド氏の株式購入を受け、公表したメモで60%を超える株価上昇を見込んでいる

ジーニアス・スポーツ[GENI]の株価は年初来で2倍に上昇しているが、上昇はさらに続く見通し

スポーツに関するギャンブルには長い歴史があります。何十年も前から、人々はカジノに集まり、ギャンブルを楽しんできました。実店舗のカジノは今でも多数存在しますが、近年はオンラインギャンブルの増加もあり、スポーツベッティングの人気は高まっています。

モバイルスポーツベッティングの大手企業と言えば、ドラフトキングス[DKNG]、フラッター・エンターテインメント傘下のファンデュエル、ペン・ナショナル・ゲーミング[PENN]などが挙げられます。また、大手企業が資産の集約を図る中で、小規模なベッティング企業にも注目が集まっています。例えば、オーストラリア企業のポインツベット・ホールディングスの米国事業は最近、ライバルのドラフトキングスを含む激しい争奪戦の末、未公開のスポーツエンターテインメント企業ファナティックスに買収されました。

そうした中、ジーニアス・スポーツは最近、株価が25%急騰して52週高値を更新しました。株価が跳ね上がったとはいえ、ジーニアス・スポーツのバリュエーションは、依然として非常に魅力的です。同社成長のカタリストについて分析し、今が買い時かどうか見極めてみましょう。

ジーニアス・スポーツは何が違うのか

一般的に、ドラフトキングス、ファンデュエル、ペン・エンターテインメントといったベッティング企業はいずれも、同じ顧客を奪い合っています。各社それぞれの特徴があるかもしれませんが、ベッティング企業を選ぶ最大のポイントは、どのアプリが最も有利なオッズを提供しているかです。

そこで、ジーニアス・スポーツの出番です。ベッティング企業やカジノは、高度なデータモデルを使ってオッズを決定しています。ジーニアス・スポーツはスポーツブックやベッティングアプリの企業ではありません。同社は、機械学習を活用してスポーツブック企業にさらなる優位性を提供する、データ・テクノロジー企業です。これはどういうことでしょうか。

ジーニアス・スポーツは、NFL、MLB、PGAツアー、NCAAなどのプロスポーツリーグと提携し、スポーツブック企業やカジノにデータを提供しています。同社のウェブサイトによると、ジーニアス・スポーツは、多種多様なプロスポーツリーグで24万件のスポーツイベントをカバーしています。これにより、同社は大量のデータを収集し、合成することができます。そこから、社内の統計学者やデータサイエンティストが開発したシナリオモデルに基づいて、理論上ではイベントの結果を予想できるという仕組みです。

もちろん、スポーツに予想外はつきものです。しかし、世界中の主なスポーツリーグがジーニアス・スポーツと提携していることを考えると、同社のデータには少なくとも一定の価値があるのでしょう。ジーニアス・スポーツは、ドラフトキングスやファンデュエルといった企業にもデータを売っています。スポーツベッティングアプリを使ったことがあれば、リアルタイムで試合が進むにつれてオッズが常に変化していることに気づくはずです。これは、ドラフトキングスのようなアプリで、ジーニアス・スポーツのデータが機能しているということです。

ウォール街は強気

ジーニアス・スポーツは2021年4月に、特別買収目的会社(SPAC)を通じて上場しました。その直後から、アーク・インベストメント・マネジメントのキャシー・ウッドCEOがジーニアス株を大量に買い始めました。ウッド氏は、グロース株、それもまだ利益の出ていないテクノロジー企業に多額の投資をすることで有名です。同氏は通常、時間をかけてポジションを積み上げ、自身が運用する多くの上場投資信託(ETF)に分散させます。

アーク・インベストメント・マネジメントは現在、ジーニアス株を530万株保有しています。ウッド氏は2023年3月中旬以降、ジーニアス株を定期的に買い増していますが、興味深いことに、7月5日には約22万5,000株を一気に購入しました。その翌日、ジーニアス・スポーツがNFLとの契約を延長したことが明らかになり、株価は25%急騰しました。この偶然の一致にまつわる憶測を和らげるのに役立つかどうかは分かりませんが、ウッド氏は2021年11月の約20ドルから2023年4月の4ドル付近まで、株価が長期にわたって下落し続けた間も、ジーニアス株をドルコスト平均法で購入し続けていました。 

とはいえ、ウッド氏からお墨付きを得たことは、ジーニアス株の強気派にとっては大きな勝利と言えます。もう1つの好材料として、ウッド氏が大量購入したことを受け、クレイグ・ハルムのリサーチアナリストであるライアン・シグダル氏は投資家向けメモの中で、ジーニアス・スポーツの投資判断を「買い」で据え置き、目標株価を10ドルから12ドルに引き上げたことを明らかにしました。この目標株価は、足元の株価から60%を超える上値余地を意味します。さらに、コンセンサスの目標株価は約11ドルです。

ウッド氏による株式購入とクレイグ・ハルムのメモに先立ち、ジーニアス・スポーツはいくつかの重要なニュースを発表しています。この2週間だけで、同社はFootball DataCoとNFLとの契約延長を相次いで発表しました。NFLとは2027/28シーズンまでの契約で、「NFLの公式リアルタイム実況データ、独自の『Next Gen Stats(NGS)』データ、NFLの公式スポーツベッティングデータを、世界中のメディア企業やスポーツベッティング事業者に独占的に配信」します。

Football DataCoとの契約では、ジーニアス・スポーツは引き続き、イングランド・プレミアリーグ、イングランド・フットボールリーグ、スコットランド・プロフェッショナル・フットボールリーグのライブデータを独占配信します。

足元のバリュエーション

ジーニアス・スポーツの時価総額は15億ドルです。2023年第1四半期決算を見ると依然として赤字ですが、赤字幅は2022年第1四半期の4000万ドルから2500万ドルに縮小しており、良い兆候です。売上成長が予想を上回ったことが、赤字縮小に貢献しました。

2023年第1四半期の売上高は9700万ドルで、ガイダンスの9200万ドルを上回りました。経営陣はその後、通期売上高ガイダンスを3億9100万ドルから4億ドルに引き上げています。会社側は、パートナーシップの拡充による売上成長について明らかに強気ですが、その能力は既に証明されています。

しかし、同社は利益を生み出していないため、株価収益率(PER)といったバリュエーション指標は役に立ちません。別の指標である株価売上高倍率(PSR)に着目すると、ジーニアス・スポーツの12ヶ月実績PSRは3.4倍です。参考までに、ドラフトキングスのPSRは4.5倍、ペン・エンターテインメントはわずか0.6倍です。

リスクに関しては、スポーツベッティングがまだ初期段階にある点に留意する必要があります。スポーツベッティングは全国的には合法でないため、サービス可能な市場規模はまだ発展途上です。それでも、ジーニアス・スポーツの場合は、「皆が金を掘っている時は、シャベルを売る方が良い」という古い格言が当てはまります。スポーツベッティング業界には多くの競合が存在しますが、ジーニアス・スポーツはその中心にいて、大手企業を支える存在です。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Adam Spataccoは、記載されているどの企業の株式も保有していません。モトリーフール米国本社はジーニアス・スポーツ、ポインツベットの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社は、以下のオプションを推奨しています。ペン・エンターテインメントの2025年1月満期の25ドルコールのロング、同2025年1月満期の30ドルコールのショート。モトリーフールは情報開示方針を定めています。