◆フジテレビの『最後から二番目の恋』が好きで、レポート等でよくその話題に触れている。鎌倉を舞台に40~50代の男女の恋愛を描いたコメディ・タッチのドラマである。なんといってもタイトルがいい。「最後の恋」ではなくて「最後から二番目」。そこにはふたつの意味がある。最後じゃない、つまり、この先いくつになっても恋はできる、という前向きなメッセージ。そして、この恋も - 「最後の恋」ではないのだから - 必然的にいつか終わりがくる。コメディ・ドラマでは決して描かれない、せつないけれど絶対的な真実。そんな暗示が込められている気がする。

◆3か月前に「銀行株 反撃の狼煙(のろし)」というレポートを書いた。その日から昨日まで東証33業種の上昇率ランキングを見ると、トップは「その他製品」。これは「「その他製品」指数で37%の構成ウェイトを有する任天堂が、この間ほぼ倍になる急騰を演じたせいだから例外として、2~4位は、「保険」、「その他金融」、「銀行」と金融株が軒並み上位を占めている。昨日の株式市場でも金融株は買いを集めた。国内金融機関として初の利益1兆円越えとなった三菱UFJは自社株買いも好感され寄り付きから買いが先行した。みずほ、三井住友も買われ、メガバンク3行が東証1部の売買代金トップ3を独占して大幅高で引けた。第一生命も好決算と自社株買い発表で10%超急伸して高値を更新した。

◆同レポートの主旨は、金利が底を打った感があるので金融株は買いであるというもの。自画自賛で恐縮だが、まさにどんぴしゃりであった。そのレポートでも『最後から二番目の恋』に言及した。僕は従前から、銀行株はいちばん最後に買う株だとしてきた。アベノミクスが成功しインフレ目標が達成されれば最終的に金利は上昇する。その時こそ銀行株が買われる時である、というロジックだ。ところが意外と早く金利上昇の予兆が出てきた。だから銀行株の買いタイミングをひとつ前倒ししよう。銀行株は「最後から二番目」に買う株である、というオチだった。

◆これを読んだ読者から質問がきた。「銀行株が『最後から二番目』に買う株なら、『いちばん最後』に買う株はなんですか?」 確かに「最後から二番目」なんていわれると、では「いちばん最後」はなにか、と気になるのが人情というものだろう。でも、これはレトリック、いわば言葉遊びだから、あまり真剣に捉えてもらっても困るんだけどなあ...。この質問の主はきっと女性に違いあるまい。「いちばん最後」が気になるのだから。なぜかって? オスカー・ワイルドいわく「男はいつも最初の男になりたがり、女はいつも最後の女になりたがる」からである。

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆