以前、『インデックス運用への批判をどう考えるか?』というコラムで、インデックス運用の優位性に関して解説しました。

ようやく、日本の個人投資家の間でもインデックス運用を始める人の比率が高まり、国内公募のインデックスファンドの残高が大きくなってきています。

しかし、インデックスファンドといっても、どのファンドを選択するかによって、運用成果に差が出てきます。最も大きな違いは、どのインデックスに連動するインデックスファンドを選ぶか、です。

知名度の高いインデックスが良いわけではない

株式、債券、不動産(REIT)など、世界中のそれぞれのマーケットごとに複数のインデックスが存在します。インデックスファンドは、どのインデックスに連動させるかを運用方針で定めて運用を行っています。

例えば日本株であれば、日経平均とTOPIXが知られていますが、それ以外にも多数のインデックスが存在しています。

問題は、知名度の高いインデックスだからといって、優れたインデックスとは限らないことです。知名度の高いインデックスは、古くから存在するものが多く、長期のデータが存在するメリットがありますが、指標の算出方法に問題があるケースが多いのです。

日本株であれば、日経平均よりTOPIX

日本株のインデックスに関して言えば、日経平均は東京証券取引所プライム市場に上場している株式の中から日本経済新聞社が225銘柄を選び、株価を単純に平均したものです(株価は株価換算係数で調整)。

日経平均には、構成銘柄が一部の大型株に偏っていることと、構成比率が時価総額比率ではなく、株価の単純平均になってしまっている問題があります。

その結果として、日本の上場株式全体の値動きと日経平均の値動きが必ずしも一致しない場合があり得ます。これは、マーケット全体の動きを代表するインデックスとしての機能を充分に果たしていないことを意味します。

また「値がさ株」と呼ばれる株価の単価の大きな銘柄の構成比率が高くなってしまう問題も生じます。

TOPIXは日経平均に比べると知名度は劣りますが、原則として東京証券取引所プライム市場の全銘柄を対象として、それらの時価総額を指数化しています。日経平均よりもより忠実に市場全体の動きを代表していると言えます。

つまり、日本株のインデックス運用を行うのであれば、日経平均ではなくTOPIXに連動するインデックスファンドを使った方が良いということです。

米国株も日本株と状況は同じ

日本株で指摘される上記のような問題は、米国株でも同じです。

米国株式のインデックスファンドは、日本国内ではS&P500に連動するものが主流です。確かに、S&P500は最も有名なニューヨークダウに比べると、構成銘柄数も多く時価総額での比率になっています。

しかし、S&P500の構成銘柄も日経平均と同じように500銘柄をS&P社が選定しており、市場全体をカバーしているわけではありません。

また、米国株に投資をするのであれば分散投資の観点からは、欧州などの先進国の株式市場も合わせて投資対象とする方が良いと言えるでしょう。

「オールイン型」のインデックスファンドは避けた方が良い

このように、それぞれの市場の中で連動するインデックスを何にするかを慎重に選ぶ必要があることに加え、インデックスファンドの選択にはもう1つの注意点があります。

それは「オールイン型」のインデックスファンドを避けることです。「オールイン型」とは、1つのファンドの中に異なる市場の銘柄が混在しているものを指します。

例えば、2023年3月末時点で国内公募投資信託の中で残高が第4位となっているeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)は、日本、先進国(除く日本)、そして新興国を幅広くカバーしてインデックス運用ができる投資信託として人気です。

しかし、組み入れ比率を見ると、日本以外の先進国が8割を超え、その中でも米国株の比率が圧倒的です。日本株は全体の5%程度に過ぎません。

このような投資信託を購入すると、1つのファンドの中に円資産と外貨資産が混在し、自分の資産全体における円と外貨の比率を把握するのが煩雑になります。

個人投資家のほとんどは預金などの投資信託以外の資産を保有しており、それら全ての資産を合算してアセットアロケーションを管理する必要があります。

その場合、幅広い投資エリアが含まれた「オールイン型」よりも、日本、日本以外の先進国、新興国とそれぞれのインデックスファンドを活用した方が管理しやすく、便利です。

効率的なインデックス運用で投資成果をより高めよう

2024年からはNISAの制度が拡充され、最大で1800万円まで投資が可能となります。せっかく税制上の優遇枠が広がったのですから、投資リターンを得られる可能性が高い方法で、資産運用を続けていきましょう。

私はインデックスファンドを資産運用の主体にすべきと考えています。その場合、どのインデックスファンドにするかについても、慎重に選択するようにしましょう。