米ドル/円 週間予想レンジ:133.50~140.00

メインストラテジー:レンジ取引

・米利上げ減速を織り込む
・米長期金利次第では下げ渋り
・売られ過ぎのサインを点灯

【図表1】米ドル/円(日足)
出所:筆者作成

アナリシス:

米ドル/円相場は先週大きく続落し、133.62円を一旦トライ、下値余地を拡大した。そもそも先々週にて一旦142.26円をトライしたものの、再度頭売りを果たし、週足では陰線で大引け、この前の切り返しの勢いを踏襲できなかった。その上、2022年3月安値から6月安値を連結する元支持ラインの延長線を見事にタッチしてから反落したため、同ラインを抵抗ラインと一旦認定。

米10月の卸売物価指数(PPI)の低下を受け、11月15日に一旦137.68円をトライしたものの、その後切り返し、「底割れ」を一旦回避した。本来安値圏での保ち合いが先行し、また保ち合い自体の延長があってもおかくしなかったが、先週の安値トライをもって一気に130円大台の打診も見えてきた。

そもそも130円大台の打診は我々のシナリオ通りであった。11月第2週に大きく続落し、値幅を拡大させ、長大線と化していた。米10月の消費者物価指数(CPI)が想定より小さく、米国株の急伸と共に米ドル全体が売られ、米ドル/円の底割れをもたらした。底割れとは一気に9月22日安値を割り込み、またそれ以下に大引けしたことを指し、変動率の拡大もあって、米ドル/円におけるトレンドの転換を示唆したわけで、8月安値への「逆戻り」を当然な成り行きと見なす。

もっとも、11月第2週の大陰線が決定打であっただけに、その兆しはあった。11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)通過後、パウエルFRB議長のタカ派発言を受け、一時145.68円の安値から切り返したものの、148円前半に留まり、米利上げ余地の拡大が想定される中、上値追いの勢いは示されなかった。11月4日の米雇用統計自体もさらなる利上げを支持する内容となったが、一転して米ドル売り優勢の展開となり、146.59円にて大引けし、多くの市場参加者を驚かせた。

要するに、米利上げ見通しの強化自体は米ドル買いに繋がらず、円売りの限界が見えてきたわけである。米ドルのロング筋が圧倒的に多かった分、米CPI指標がリリースされた後、米ドルのロング筋は一斉にポジションを手仕舞い、米ドルの急落や円の急騰をもたらしたわけだ。

このような事情に鑑み、先週パウエルFRB議長の利上げ減速の示唆を受けた続落も至って当然な結果となった。12月2日の米雇用統計が想定より良かったにもかかわらず、米ドルの買い戻しが限定だったことも、メイントレンドとして米ドル売りが定着していることの他あるまい。

その一方、米利上げのプロセス自体はなお継続され、米2年国債利回りが本格的な反落を見せないうちに、米ドル/円の下値余地がたちまち拡大していくとは想定し難い。米利上げ減速を目いっぱい織り込んでいる以上、また130円大台を狙いに定めた以上、テクニカル上における「売られ過ぎ」のサインが点灯しやすい。11月30日の罫線が弱気サインを点灯し、同日高値139.91円までの戻り(速度調整)も容易ではないとみているが、10月高値を起点とした下落波自体の「速度違反」の可能性に鑑み、早期安値の再更新なしで一旦試されるだろう。今週安値追いには躊躇したい。

豪ドル/円 週間予想レンジ:90.50~93.00

メインストラテジー:押し目買い

・「底割れ」でもあくまで保ち合いの一環
・主導性を発揮した円買いはなし
・豪ドル自体の優位性は維持

【図表2】豪ドル/円(日足)  
出所:筆者作成

アナリシス:

豪ドル/円相場は先週大きく下落し、再度10月安値をトライした。想定外の「底割れ」となり、また目先としては地合いの悪化を避けられないが、あくまで保ち合いの一環と見なし、ベアトレンドへの転換を想定しにくいことをまずは記しておきたい。

この場合は、やはり10月安値と相まって、「ダブル・ボトム」を形成していくことがもっとも想定されやすい。言ってみれば、米ドル/円の急落につられた形での「底割れ」となったものの、主導性を発揮した円買いとは程遠いため、継続的な下値トライを想定できない。この意味合いにおいて、10月13日の罫線が示した強気サインが今回は支持を暗示する存在となり、近々強気サインの再度点灯を期待できる。

その一方、先週の大幅下落は、頭をさらに重くさせたのも間違いない。もっとも重要な週足は、10月17日~21日にて形成され、同週の大陽線があって、その後の値動きと「インサイド」のサインを形成、先々週まで10月後半以来6週連続のため、本来上放れの示唆であった。先週の安値更新は、結果的に下放れとなったわけで、目先としては地合いの悪さを示している。

ただし、それも継続的な安値トライを回避できるとみなす他、「ダブル・ボトム」の形成を有力視している。理屈としては、32年ぶりの高値を一旦更新した米ドル/円に比べ、豪ドル/円は大きく出遅れた。その大きな背景として、米ドル全面高の中、豪ドルの優位性が試されてきた経緯があった。

しかし、10月以来豪ドル対米ドルの切り返しは順調であり、また豪ドルの優位性が証左されたことで、これから出遅れを挽回してくるだろう。また年初来高値更新を果たしたユーロ/円や英ポンド/円に比べ、豪ドル/円の年初来高値更新がむしろ自然のなりゆきであり、目先の地合いが悪化しても、中段保ち合いの一環と位置付けるため、継続的なベアトレンドへの転換とは見なせない。

10月まで豪ドル対米ドルの反落が大分続いてきたものの、水準的にはなおコロナショック直後の安値より大分上に位置し、「底割れ」を果たしたユーロや英ポンドに比べ、豪ドルがむしろ堅調であり、構造上の優位性を持つ。また米ドル/円の「売られすぎ」もあって、今週は豪ドル/円の底打ちの可能性に注目しておきたい。

とはいえ、仮に底割れを回避できたとしても、豪ドルにおける頭の重い構造を当面修正することはできないだろう。12月1日や2日の大陰線があって、目先の下落幅の拡大に鑑み、切り返しがあっても限定されるだろう。

さらに、11月30日の高値は、一旦11月28日の高値をブレイクしていたにも関わらず、その後大きく反落してきたため、同サインが「ダマシ」であったことも確認できる。なにしろ、11月28日はこれまでの保ち合いのレンジを下放れした値動きを形成した日であっただけに、しばらく抵抗の厚さが意識され、豪ドルが強くても安値圏での保ち合いに留まるだろう。