米ドル/円 日足

週間予想レンジ:139.00~145.00

メインストラテジー:レンジ取引

・米CPI後に底割れ
・ロング勢の総手仕舞い
・目先行き過ぎも

【図表1】米ドル/円(日足)
出所:筆者作成

アナリシス:

米ドル/円相場は先週大きく続落し、値幅を拡大させた。米10月の消費者物価指数(CPI)が想定より小さく、米国株の急伸と共に米ドル全体が売られ、米ドル/円の底割れに繋がった。底割れとは一気に9月22日安値を割り込み、またそれ以下に大引けしたこと。変動率の拡大もあって、米ドル/円におけるトレンド転換を示唆した。

もっとも、急変とはいえ、その兆しはあった。先々週に波乱があり、米連邦公開市場委員会(FOMC)通過後、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長のタカ派発言を受け、一時145.68円の安値から切り返したものの、148円前半に留まり、米利上げ余地の拡大が想定されるなか、上値追いの勢いは示されなかった。先々週11月4日の米雇用統計自体もさらなる利上げを支持する内容となったが、一転して米ドル売り優勢の展開となり、146.59円にて大引けし、多くの市場参加者を驚かせた。

言ってみれば、米利上げ見通しの強化自体が米ドル買いに繋がらず、円売りの限界が見えてきたわけである。米ドルのロング筋が圧倒的に多かった分、緊張した雰囲気を漂わせた。そのため、先週米CPI指標がリリースされた後、米ドルのロング筋は一斉にポジションを手仕舞いし、米ドルの急落や円の急騰をもたらした。

それにしても、一気に9月22日安値の140.35円を割り込み、またそれ以下に大引けしたことに驚く市場参加者が多かった。同日は日銀が円安阻止のため、2022年介入を行った最初の日であっただけに、同日安値の割り込みを「底割れ」と認定できる。

それは他ならぬ、米ドル高/円安の終焉である。2022年初安値の102.58円を起点とした強気変動の終焉が意識され、32年ぶりの高値を再度更新した米ドル高はこれから鎮火していくと想定される。一時151.96円まで上昇したが、我々が提示したターゲットを見事にクリアしたわけで、その後日銀の再度介入で大きく反落、先週の「底割れ」もあって、トレンドの転換が測られる。言ってみれば、介入自体が成功であり、2011年の円高阻止介入と同様、今回も歴史に残る成功事例となりそうだ。

ロング筋の目標達成感が、テクニカル上の視点から得られたことも既述の通りであり、9月22日の大陰線を中心に形成した「Ioi」のサインである。9月22日高値の更新が確認された以上、同日値幅の「倍返し」で計算すれば、151円台半ばの打診が推測されていた。同ターゲットをクリアした後の介入だったことに鑑み、計算された根拠が明らかであった。

さらに、2011年円の史上最高値から2015年円安値まで、円安の値幅は約50円だった。今回円安の起点である、2021年初の102円台から測られ、同じ50円の値幅なら、152円大台が究極なターゲットとして浮上していた。今回そのターゲットに近づいていたわけで、ロング筋の目標達成感に乗った介入だったと理解される。

言ってみれば、介入自体より米ドルロング筋の目標達成や相場内部構造の指示が決定的な要素であった。従って、先週の米CPI後の急落は、結果的に前述のロジックの証明や結果と化していた。だからこそ、前述の「底割れ」の見方も重要であると思う。

その反面、米利上げはなお途中であり、円の急騰があっても目先としては継続的に高値トライしていく地合いではない。むしろ先週の急落に対する修正が先行されやすく、145円を上限とする中段保ち合いの形成を有力視している。レンジ取引のスタンスを維持していきたい。

豪ドル/円 日足  

週間予想レンジ:92.50~96.00

メインストラテジー:押し目買い

・先週はさらにに試練
・保ち合いを延長
・今後は豪ドル次第か

【図表2】豪ドル/円(日足)  
出所:筆者作成

アナリシス:

豪ドル/円相場は先週さらに波乱気味で、一時95.21円の高値トライがあったものの、92.64円まで売られ、中段保ち合いのさらなる延長を示唆した。もちろん、米CPIの結果を受けた波乱であったが、本質的には円の急騰が主導し、変動率の拡大をもたらした。

もっとも、先々週も値幅を拡大させたものの、保ち合いを維持しながら、堅調な地合いを示した。この意味合いでは、先週の大陰線は、先々週の地合いを一旦否定したようにみえる。ただし、先週の値幅も結局限定的であり、大陽線となった10月17~21日の週足と「インサイド」のサインを形成した。9月後半以来3週間連続なので、なお構造上の強さを暗示しており、これからの上放れに繋がるだろう。

理屈としては同週波乱となったものの、結局のところ大陽線を形成し、10月13日の底打ちを証明した。日銀介入など大きな材料があったが、豪ドルの優位性が発揮され、また基調の改善がむしろ確認されたことにより、一段上値トライの機運が高まっている。先週の波乱があってもなお同週の値幅の中に留まり、中段保ち合いがさらに延長されたものの、基本的な構造は変わらないとみている。

10月13日のサインは重要であった。同日一旦90.82円をトライしたものの、強気で切り返し、日足では「スパイクロー」の陽線をもって「強気リバーサル&アウトサイド」のサインを形成、底打ちを示唆した。その後日銀の大規模介入を想定していたが、結果的に同日のサインを強化することとなり、ブル基調への復帰を決定させた。

32年ぶりの高値を一旦更新した米ドル/円に比べ、豪ドル/円は大きく出遅れた。その大きな背景として、米ドル全面高の中、豪ドルの優位性が試されてきた経緯があった。しかし、先々週のFOMCや米雇用統計の結果があったからこそ、豪ドルの優位性が証明され、これから出遅れを挽回してくるだろう。先週の波乱があっても、92円台のトライ自体が「ダマシ」となる可能性が大きく、保ち合いの延長の一環と見なした場合、むしろ再度上放れの土台を構築してくれる公算が大きい。

そもそも挽回と言えば、年初来高値更新を果たしたユーロ/円や英ポンド/円に比べ、豪ドル/円の年初来高値更新がむしろ自然のなりゆきであり、先週の波乱があっても上値トライできれば、構造上の強さが一段と証明されるだろう。

なにしろ、豪ドルの優位性はなお健在である。豪ドル対米ドルの反落が大分続いてきたものの、水準的にはなおコロナショック直後の安値より大分上に位置し、「底割れ」を果たしたユーロや英ポンドに比べ、豪ドルがむしろ堅調であることを確認できる。そのため、先週の米CPIがリリースされた後の豪ドル対米ドルの急伸もあって、これから米ドル反落の受け皿として大きな役割を果たすと推測される。豪ドル/円も先週と違って、豪ドル次第の公算が大きい。

この意味では、細かい視点は不要である。92円台から93円台の支持ゾーンは、繰り返し試されてきたが、これを維持できれば、これを中段保ち合いの一環と位置付け、また遅かれ早かれ上放れを果たすだろう。他の主要クロス円に比べ、すでに出遅れている豪ドル/円ではあるが、年初来高値の再更新を有力視しており、押し目買いのスタンスは不変である。