米国の経済指標やFOMC議事録が市場心理を反映
「すでに米国のインフレはピークアウトしたのか」そこが市場における目下最大の関心事になっています。
確かに、先週5月24日に発表された4月の米新築住宅販売件数や5月26日に発表された米中古住宅販売成約指数などの弱めの結果は「すでにピークアウトし始めている」との見方を強めるに足るものでした。
米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)による5月26日の発表によれば、米国の住宅ローン金利は足元で大幅に低下し始めているとのことで、ひとまず上昇一服となっていることは重要な事実と言えます。
加えて、先週末5月27日に発表された4月の米個人消費支出(PCE)物価指数は食品とエネルギーを除くコア指数は前回から減速し、同日発表された5月のミシガン大学消費者信頼感指数も前回実績と市場予想を下回りました。
何より、5月25日に公開された5月開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録において、米連邦準備制度理事会(FRB)が市場の想定を超えた利上げを実施する意向を示さなかったことは、市場の安心感を強めるものとして見逃せないものでした。
そもそも、インフレの一段の加速やFRBによる金融引き締め方針に対する市場の見立てが先々週あたりまで極端な悲観やタカ派に傾き過ぎていたことは確かです。それが、今回のFOMC議事録の内容や幾つかの米経済指標の結果を受けて、かなり修正され始めています。
目下、市場からは「FRBが中立金利の水準まで政策金利を迅速に引き上げた後は、利上げを一旦停止する可能性もある」との声まで聞かれ始めており、結果としてNYダウ平均は先週末5月27日まで6営業日続伸となりました。
米国産の石油・ガスに対する注目度の高さも影響か
既知のとおり、バイデン米大統領は対中制裁関税の引き下げを前向きに検討し始めていると言われます。また、この6月にはサウジアラビアのムハンマド皇太子と初会談の機会を設ける可能性もあると伝わっています。
一方で、米国内における石油・ガスの掘削装置(リグ)稼働数は足元で着実な増加傾向を辿っています。一時期、コロナ禍の下で250基程度にまで減少した稼働数は足元で720機程度にまで増加しています。
これは言うまでもなく、ロシア原油代替源として米国産への注目度が一層高まっているということです。こうしたことを通じて、徐々に「米インフレはピークアウト」との見方が現実味を帯びていくのかもしれません。
今週の米ドル/円、ユーロ/米ドルの値動き
先週の米ドル/円は、週末にかけてレンジを一段切り下げ、127円処を軸とした126.40-127.60円のレンジ内での値動きとなりました。
5月23日には一時126.35円まで下押しする場面があり、やはり4月の米新築住宅販売件数の結果は大きなインパクトになったものと思われます。
ちなみに、同水準は「3月末のポジション調整時に一時的にもつけた安値から直近高値までの上昇に対する50%押しの重要な節目です。そこで下げ渋ってからは、ほどなく127.60円処まで値を戻す動きとなり、なおも一定の底堅さは維持されているものと感じられます。
なお、5月26日にも米ドル/円は一時126円台半ばまで急落する場面がありました。これは黒田日銀総裁の発言にあった「出口」というワードに対するアルゴリズム取引の過剰反応と理解されます。
実際、ほどなく下に「往って来い」の展開となり、再び127円台を回復することとなりました。そうしたことも勘案したうえで、今週の米ドル/円は127.00円処を軸とした126.50-127.50円のレンジ内での値動きになると見ます。
一方、先週のユーロ/米ドルは欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁がブログに書き込んだ「7月に利上げが可能になる」というワードがサプライズとなって、そこから一気に上値を伸ばすこととなりました。レンジは一段切り上がった格好ですが、当面の上値は1.0800ドルあたりまでに限られると見ます。