米ドル/円 日足 

週間予想レンジ:121.00~126.00

メインストラテジー:押し目買い

・円安は「行き過ぎ」でも継続
・当局介入まで歯止めがきかず
・2015年高値突破後新天地へ

【図表1】米ドル/円(日足) 
出所:筆者作成

アナリシス:

先週は日銀の連続指値オペもあって、円安がさらに加速され、米ドル/円相場は一時125.11をトライし、2015年高値の125.86円に迫った。ここまでくると、2015年高値更新自体が最早時間の問題となり、早晩ブレイクを果たすだろう。同高値のブレイク、またその上の定着があれば、円安の新天地を拡大し、事実上130円心理大台まで大した抵抗は見つからないと推測される。

もっとも、米ドル/円の年間変動値幅は平均15円とされており、変動率の高い年では平均20円程度の値幅が測れる。年初来安値が113円台半ばだったことに鑑みると、仮に130円心理大台を達成したとしても、異例な値動きとは言えない。3月に上昇幅が拡大し、また一気に125円大台打診があったとはいえ、年間変動幅で測る場合、「スピード違反」があっても上値余地はなお大きいとみられる。

地政学リスクに起点する「有事の米ドル高」の側面があったものの、米ドル/円の高値更新により、米利上げ周期入りに伴って、円買いポジションの総撤退や新規円売りポジションの急増が推測され、そのクライマックスが3月28日の日銀決定後の円売りで一旦完成されたかもしれないが、それはあくまでも短期スパンにおけるロジックであり、円安トレンド自体の継続は否定できないだろう。

一番わかりやすい理屈としては、ロシアによるウクライナ侵攻で地政学リスクが急上昇したことで世界株式市場の急落があったにもかかわらず、米ドル/円は底堅く推移し、円はかつてのように「リスク回避先」として評価される痕跡が全くと言っていいほどなかった。そのため、米利上げ周期入りにおける円売りは一番行われやすく、また円売りは安心感に繋がるため、これから日米金利差が一段と拡大するにあたり、さらなる米ドル買い/円売りが継続されやすいとみている。

テクニカル上の視点も然り、である。4週間前の高値更新は、年初来に形成された「上昇トライアングル」の上放れを果たしたため、円売り加速のサインと化し、連騰をもたらした。円買いポジションの踏み上げも含め、モメンタムの増強が値幅を拡大させ、また値幅の拡大でさらなる新規円売りを呼び、また円買いポジションの踏み上げに繋がるため、連鎖的な円売りムードを作り上げた。連続4週間の大幅円安は、「行き過ぎ」だったからこそ、さらなる「行き過ぎ」をもたらし、また市場センチメントの偏りに繋がったが、3月28日値幅の拡大自体に材料があっただけに、一旦「出尽くし」を果たしたわけである。従って、その後121円前半までの反落は、スピード調整の位置付けとしてみればごく当然な成り行きと言える。

要するに、米ドル高値/円安の急伸は、先週一旦反落をもって頭打ちの可能性を示唆したものの、円安の流れが強く、また先週後半すでに調整していた以上、再度高値更新を図る公算が大きい。円安を抑制するため、日銀による介入の可能性も論議されているからこそ、円安トレンドの安易な終焉はないだろう。円安の加速は実際介入されるまで続き、また2015年高値より随分高いレートでないと介入の緊迫性がないため、市場は最早当局のレッドラインを試すように、円売りをさらに仕掛けてくる可能性がある。

この意味において、もう一回高値更新を図り、また2015年高値の更新なしではさらなる緊張感に繋がらないため、逆に言えば、当面円の続落が推測されやすい。先週121円前半の支持を一旦確認したように、このまま再度125円関門のトライがあれば、直接2015年高値の更新に繋がってもおかしくないだろう。

ただし、円安の継続に異議なしではあるが、連続した円売りには限界あり、またすでに「オーバー」した値動きに注意を払う必要がある。先週における軽い調整が先行されたからこそ、これから2015年高値の125.86円のブレイクを有力視するが、同高値の更新は米ドルのロング筋にとって当面の目標達成感に繋がりやすいため、再度一服される可能性がある。

息の長い円安トレンドの形成はこれから図られるが、少なくとも125円大台~130円関門までの道のりは、3月安値以来の上昇波のようなほぼ一直線な市況は再演しにくいのではないか。この意味合いにおいて、逆説となるが、円安の限界は、まず2015年高値の更新を果たしてから、はじめて探る価値があるともいえる。

豪ドル/円 日足

週間予想レンジ:91.50~95.00

メインストラテジー:押し目買い

・急騰続きでさらなる上値志向へ
・急騰したからこそ基調を維持
・豪ドル/米ドル堅調の側面も

【図表2】豪ドル/円(日足)  
出所:筆者作成

アナリシス:

豪ドル/円相場は先週大幅続伸し、1月末から9週間連続の上昇を果たし、94円関門をトライした。その後の反落は、90円後半に留まった上、91円後半にて大引けしたことで小幅調整の完成を暗示し、また急騰したからこそ強気基調の維持を示唆した。3月28日に日銀のオペを受けた円の一段急落は、「行き過ぎ」を示したものの、その後あくまでスピード調整の先行となり、頭打ちを認識できるまでは程遠い。この辺りの視点は米ドル/円と同じであり、また米ドル/円より豪ドル/円のほうがより鮮明であった。

なにしろ、豪ドル/円の堅調が円安のみではなく、豪ドル高の側面が大きい。米ドル全体(米ドル指数)が強い基調を保つなか、豪ドル対米ドルの切り返しを維持、また対ユーロの優位性を保ってきたため、豪ドル/円における9週連続陽線引けがあっても、性急な頭打ちとは判断できない。とはいえ、先週足型自体が大きな「スパイクハイ」のサインだったことに鑑み、再度高値更新できなければ、その後頭打ちのサインが形成される可能性があることは否定できない。

もっとも、豪ドルの強気変動には、見逃せない2つ決定的なポイントがある。1つは地政学リスクの強まりで原油、穀物をはじめとした商品相場の急騰。もう1つはユーロ全面安がもたらした豪ドル対ユーロの急騰だ。その構造は目先まで継続され、しばらく調整があっても修正されることはないだろう。豪ドル対円の優位性はしばらく維持される公算が大きい。

90円心理大台を乗せて以来、豪ドル/円は事実上新たな変動範囲に入り、94円前半まで大した抵抗が見つからないだろう、といった見解は先週指摘したとおりであり、先週の直接打診で上値ターゲットの上方修正を促している。この場合、先週一旦90円後半までの反落を調整子波と見なし、すでに完成された可能性もあるため、3月15日から日足では陽線の連続形成があったものの、すでに緩和され、これから再度高値トライの機運が高まるだろう。強いトレンドだからこそ、深い調整を回避できるわけだ。週足で見る限り、94円関門以上を再度定着できれば、96円前半まで大した抵抗ゾーンが見つからないため、直接的なトライがあっても許容範囲内だろう。

その反面、週足上における「9連陽」、また先週の「スパイクハイ」のサインの点灯自体が一服する前兆として解釈できる。これから高値再更新に繋がらない場合、再度頭打ちのサインが強化され、さらなる反落があってもおかしくないだろう。要するに、これから高値更新の有無自体が試金石となり、強気変動におけるモメンタム維持の有無が測られる。

とはいえ、このような見方自体が逆張りの根拠になるとは限らない。テクニカル上の「行き過ぎ」に関する判断自体が確実なものではなく、また円売りの一環として捉える場合は、円の独歩安が背景にあるため、円売りが行き過ぎたからこそ、さらに加速され、いわゆるパニック的な円売りがさらに続く可能性が大きい。「9連陽」がすでにみられるため、「13連陽」といった極端な急騰があっても大したサプライズではない。また、3月24日安値の90.50円の割り込みなしでは本格的な調整が見られない上、本格的な調整があっても当面90円心理関門前後に留まる、といった見方が引き続き有効であり、先週末の切り返しに鑑みると、これからまず再度高値トライの蓋然性を注目しておきたい。

長期スパンにおける視点としては、度々強調してきたように、米ドル/円と同様、強気ラリーの継続が有力視される。2020年のコロナショック後の安値を起点とした大型強気変動は、2021年5月から高値圏における大型レンジを形成してきたが、それはあくまで調整子波と数える。そのため、95円大台乗せはもちろん、100円大台の打診も最早中期スパンのターゲットとして捉えていることから、息の長い上昇波として見据える必要がある。