米ドル/円
週間予想レンジ:113.00~116.00
メインストラテジー:戻り売り
・地政学リスクは一段と拡大へ
・リスクオフの値動き
・材料次第ではさらなる波乱に
アナリシス:
米ドル/円相場は先週反落し、頭の重い構造を示した。先々週一旦高値トライし、年初来高値に迫ったものの、2月11日の反落で上昇幅を削り、週足では「スパイクハイ」の陽線をもって上値が重いことを示した。そのため、先週の反落は当然のなりゆきとみなし、また一段と上値の重さを証明したと言える。
もっとも、2月10日の高値打診は、米消費者物価指数(CPI)の高騰を受けた米金利上昇と連動した値動きであり、我々が想定した上値トライのシナリオと合致していたため、このままでは本来の高値更新を果たし、一段と上値余地を拡大してもおかしくなかった。しかし、地政学リスクに米利上げやQT周期入り観測がもたらす圧力が現在もくすぶっているため、材料次第では大きな波乱が起きることを覚悟しておきたい。
米ドル/円相場は先週2月14日から小幅反発していたが、115円後半に留まり、また2月17日に115円関門以下で大引けし、弱含みの様子を露呈した。なにしろ、2月11日の値幅に「包まれた」形の変動があり、2月16日まで続いていたが、「インサイド」のサインを灯し、2月17日の下落で同サインの下放れを果たした。この場合、2月10日の高値と1月高値の「ダブル・トップ」形成の可能性が暗示され、早期の切り返しがないと一段と反落するだろう。
もっとも、地政学リスクの高まりで円売りポジションの圧縮が見られたが、円はかつてのようにリスク回避先として選好されることはないとみられ、あくまで受動的な値動きだと理解している。この意味合いでは、かえって材料次第では、これから変動幅の拡大が想定される。さらに、地政学リスクの不確実性に鑑み、テクニカルの視点のみでは把握できない可能性も大きく、臨機応変なスタンスが要求される。
とはいえ、114円関門割れなしでは想定より狭いレンジに留まる可能性もある。レンジの拡大があっても、年初来安値の113.50円前後のトライにつながるが、たちまち下値余地を拡大するとは限らない。一方、先週の軟調で目先としては上値の重さが証明されたため、113.50円前後の打診があってもなお高値圏における変動の一環と見なすが、リスクオフの流れでレンジ変動における下限トライが十分想定される。
1月安値から引かれた支持ラインは、2月17日に下放れを果たしたため、そのまま反落を強めれば、その起点である113円台前半への逆戻りにつながる。その場合は前述の「インサイド」の下放れや倍返しのターゲットは114円関門前後に位置し、同関門割れの有無も重要な参考点となってくるだろう。
地政学リスクや米株続落の蓋然性を鑑みると、「有事の米ドル高」でも米ドル/円のみ反落の局面が十分想定され、場合によっては一気に113円前半の打診もあるかもしれない。この場合、これは主要クロス円の急落と推測され、米ドル/円に波及する形でさらなる下値余地を拡大してもおかしくないだろう。
なにしろ、米ドル/円の上昇は、米ドル全体(米ドル指数)とリンクした値動きとして見られたものの、先々週米ドル指数が大きく反落し、それに対して米ドル/円の底堅さがむしろ確認されたが、先週米ドル指数の持ち直しで米ドル全体の底固さが証明され、米ドル/円の弱含みが逆に示唆された。
これから「有事の米ドル高」になれば、ユーロなど主要外貨の下落が想定され、受動的とはいえ、ユーロ/円に経由する円高圧力が高まるだろう。そもそもウクライナ有事はユーロにとって売り材料になりやすく、地政学リスクと言えば、ユーロ安の蓋然性が大きいと思うため、ユーロ/円の大荒れを覚悟しておきたい。
いずれにせよ、地政学リスクの高まりで不確実性が高く、また状況が流動的なので、しばらくテクニカルのみの視点では把握できない恐れが大きい。そのため、いわゆる「ダマシ」的な値動きが続くことも覚悟しておきたい。この意味では、先週と同様、短期スパンにおいてテクニカルの要素を必要以上に解釈しないことが大事である。基本的にはレンジ取引の一環とみなすが、先入観を持たず、臨機応変な対応が望ましい。
豪ドル/円
週間予想レンジ:80.00~82.50
メインストラテジー:戻り売り
・再度頭の重さを確認
・80円心理大台を試す
・リスクオフの対象
アナリシス:
豪ドル/円相場は先週値幅縮小し、先々週と同じ「インサイド」を形成した。先々週と同様、週足では「スパイクハイ」のサインを形成し、頭の重い構造を露呈した。もっとも、先々週一旦84円関門をトライしたものの、82.35円まで大引けし、週足では大きな「スパイクハイ」のサインを点灯したため、先週の値幅限定がまた再度上値限定されたことで弱気変動へ復帰する可能性が暗示された。豪ドルは明らかに地政学リスクの恩恵を受けられず、「有事の米ドル高」の流れが強まるうちは、豪ドルの一段落が想定されやすい。
とはいえ、先週までなお高値圏での保ち合いに留まっており、ベアトレンドへ復帰するとは言い切れない。そもそも値幅限定の上、先々週と同様に陰線で大引けし、また、先々週の切り返しが年初来から連続4週間の陰線引けの後陽線を形成しただけに、先週の値幅限定自体も底割れのリスクを強く示してはいない。とはいえ、先週解説したように、先々週陽線で大引けしたものの、基本的にはブルトレンドへ復帰する試しに成功したのではなく、むしろ失敗した可能性を示唆していたため、今週の値動きの詳細が同見方を証明していたとみている。
日足でみると分かるように、2月10日までの切り返しは順調であった。このまま再度年初来高値へ接近し、また高値更新してもおかしくなかったが、地政学リスクの急浮上でむしろ再度頭の重さを確認した形となった。要するに、83~84円といった抵抗ゾーンの存在が確認され、1月高値の84.32円までの上昇は、むしろ2021年10月高値の86.27円を起点とした全下落幅に対するスピード調整、といった位置付けでフォローされたため、先々週の頭打ちで再度弱含みの展開に復帰しやすい流れを作った。
もっとも、1月21日の大陰線の早期否定なしではベアトレンドの継続が有力視された。なにしろ、同日の大幅続落で1月14日~20日で形成された「インサイド」のサインの下放れが確認され、1月26日の「スパイクハイ」のサインの意味合いが一段重要になったわけだ。要するに、ベアトレンドが加速され、また構造上の継続性が示唆されていた。
先々週の続伸で一旦同日高値をブレイクしたため、同週の84円関門の再打診につながったが、高値トライした翌日に同日高値の82.54円を下回り、従来の弱気変動レンジに逆戻りした可能性が大きい。先週一旦81円半ばにトライし、その後の切り返しがみられたものの、2月17日の日陰線の出現や2月18日の「スパイクハイ」の陰線の組み合わせに鑑み、再度頭打ちを果たした公算が大きい。
この意味では、83.50円以上の早期回復なしでは1月末安値の80.36円の再打診が想定される。また先週の切り返しが再度失敗していたことでこれから本格的な反落波を展開していくだろう。要するに2月11日の下落で2月10日の日足が示した「スパイクハイ」のサインが支配的となり、弱含みのレンジ変動に復帰するなら、1月末安値の再打診自体が自然な成り行きと見なされる。
さらに、80円心理大台の打診も視野に入るため、材料次第では同関門の割り込みも覚悟しておきたいところであり、79円前半までの急落もありえるだろう。地政学リスク自体、豪ドルにとってマイナス材料ではないはずだが、米利上げ周期直前におけるリスク回避は豪ドル買いに繋がりにくく、その他クロス円と同様、むしろ間接的な円高のリスクが想定されるため、リスクオフの円買いというより、リスクオフの豪ドル売りが継続される見通しだ。
ただし、仮に80円関門割れで反落波の延長や2021年安値の割り込みがあっても、それ自体はたちまちベアトレンドへの復帰を意味しないだろう。コロナショック後の安値を起点とした上昇波の一環とみなした場合、2021年高値を起点とした大型ジグザグ変動パターンの調整波が確認されても、なお調整子波の範囲に留まるだろう。言い換えれば、リスクオフの円高という性質の値動きではないため、一時的にオーバーがあってもなお調整波の範疇に留まるとみている。
米ドル/円と同様、短期スパンに限って、ウクライナ情勢がどう変わっていくかは誰にも分からず、地政学リスクにおいて把握できない恐れも大きく、しばらくは柔軟なスタンスが要求される。「ダマシ」的な値動きの形成も警戒しつつ、リスクコントロールを優先したい。