米ミシガン大学消費者信頼感指数が事前予想を下回る
先週8月11日に一時110.80円処まで買い上げられていた米ドル/円が、週末8月13日のNY時間入り後に109円台半ばあたりまで急落するという一幕がありました。
既知のとおり、その主要因は8月13日に発表された8月の米ミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)が70.2と、事前予想を11ポイントも下回ったことにあります。
どうやら、新型コロナウイルスのデルタ変異株が、想定していた以上に重いダメージを米国経済に及ぼすのではとの懸念が広がり、米消費者のマインドが一気に委縮し始めている模様です。
むろん、こうしたソフトデータというのは元々移ろいやすくブレも大きくなりがちなものであり、今回の結果だけでいたずらに悲観に傾き過ぎることは避けたいところです。
ただ、8月に入ってから発表された7月のISM非製造業景況指数や米雇用統計、米生産者物価指数(PPI)、6月の米求人などが、いずれも非常に強い結果であったことも事実です。そうした中で先行きに対する期待が膨らんでいただけに、その反動から生じる感情的反応が少々過度に指数に反映されたのは致し方ないことでもあると言えるでしょう。
欧米の新型コロナウイルス対応策
確かに、デルタ変異株は脅威です。しかし、すでに欧米では感染拡大に対する具体的な対応策が徐々に講じられ始めているということも見逃すことはできません。
例えば、フランスではカフェやレストランなどでいわゆる「ワクチンパスポート」の提示が義務化され、ドイツではメルケル首相が10月からワクチン非接種者の行動を事実上制限し、ワクチン接種を促す対応措置をとると発表しています。
また米国では一部のIT大手企業がオフィス勤務にワクチン接種を義務化したり、9月半ばまでに米軍のワクチン接種を義務化したりする対応がとられ始めています。そのうえ、先週8月12日日には米食品医薬品局(FDA)が免疫力の低下している人に対する3回目のワクチン接種を承認しました。
こうした対応の効果はいずれ必ず明らかとなり、それは再び消費者のマインドを改善することに大いに貢献するものと思われます。
どのみち、米国では9月初旬までに失業保険給付の上乗せ措置が全面的に打ち切られますし、いよいよ新学期もスタートします。結果、今後は確実に求職活動を再開する向きが増え、これまで顕著に見られていた「求人と採用のミスマッチ」も一気に解消へと向かうでしょう。
また、米株式市場では先週末までNYダウ平均が4日連続で過去最高値を更新するなど、主要3指数がいずれも大きく値上がりしており、その資産効果は着実に米国景気にとってプラスに働くものと考えられます。
今後の米ドル/円、ユーロ/米ドルの動向
目下は相場が夏枯れ気味なこともあって、先週末の米ドルは少々強く売り込まれることとなりましたが、代わりに買われたユーロや円にもさしたる強気材料は見当たりません。
米ドル/円は、ひとまず89日移動平均線が位置する水準まで下押しましたが、同線が下値サポートとして機能する可能性もありますし、仮に下抜けても109円処では一旦下げ渋る展開となる可能性が高いと見ます。
今週8月17日に発表される7月の米小売売上高の結果が6月と同様に強めであれば、改めて110円台半ばあたりまで値を戻すことも十分に考えられると思われます。
一方、ユーロ/米ドルは先週末8月13日に一時1.18ドル台を回復する場面もありましたが、目先は21日移動平均線が上値抵抗となる可能性があると見られます。
前述したようにドイツ、フランスなどではデルタ変異株への対応策が講じられ始めていますが、同様に米国でも具体的な対応は行われていることから、ユーロだけが買い進まれるというのも考えにくいところです。
差し当たり、どこまでリバウンドするか見定めることが肝要ですが、限界が感じられれば再び1.17ドル近辺まで下値を試しに行く可能性もあると見ます。