円安が続く背景
総務省が5月21日に発表した4月の消費者物価指数は、変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が前年同月比で0.1%低下と、9ヶ月連続の前年同月比マイナスという結果になりました。
携帯料金の値下げによる通信料の減少が全体を押し下げているとはいえ、依然として国内物価の基調は弱いままであるとの見方に変わりはないでしょう。
そのため、日本の10年国債利回りは4月初旬以降、その上値を切り下げ続けてきており、米国や独・仏の10年債利回りの推移とは好対照を成す格好となっています。
結果、市場では長らく「円全面安」の状態が続いており、ことにユーロ/円の上昇が目立つ格好です。英ポンド/米ドルも基本「強気」で、もはや2018年1月高値の156.61円処に到達するのも時間の問題であると思われます。
一方、豪ドル/円にはやや頭打ち感も出てきていますが、当面の上値抵抗として意識されやすい一目均衡表の月足「雲」上限を上抜ければ、そこから一段の上値余地が生じてくる可能性もあります。もちろん、米ドル/円も強気の展開を続けており、先週は週末にかけて一時110円台を回復する場面がありました。そこに至る過程で、米ドル/円は一目均衡表の日足「雲」を上抜けたうえ、1つの節目と見られていた109.70-80円処をも上回りました。
今のところ、その上値は月足「雲」下限が押さえる格好となっていることから、当面は同水準を上抜けるかどうかが1つの焦点になると見られます。
円安の流れは反転するか
なお、このところユーロ/米ドルの頭打ち感が強まってきていることから、足元で堅調な米ドル/円の動きには、円安のみならずドル高の側面もあると考えられます。
ここもとは、米国債の利回りが思いのほか低めに押さえられている感もありますが、それは米金融政策当局が米雇用情勢の改善度合いの鈍さを考慮していることも一因です。
むろん、その背景には「手厚すぎる米国の失業手当給付」の存在があるわけで、給付の上乗せが9月期限とされていることを考えれば、近い将来において米雇用者数の伸びは拡大し、相前後して米国債利回りも再び強含みとなってくるでしょう。
むしろ、足元で米国債利回りが低位に留まっていることは、米株価が強気ムードを取り戻すことにつながっており、連れて日本株も反発の機運を強めていることが市場全体のリスク回避ムードを後退させることに貢献しています。
その結果、目下の市場には円売りになびきやすいムードが醸成されていると見ることもできるでしょう。よって、今しばらくは基本的に円安の流れが一気に反転することはないものと見ます。
なにしろ、米連邦準備制度理事会(FRB)は「インフレ上昇は一時的」とのスタンスをそう簡単に変えそうにありません。今週もFRB高官が発言する機会は数ありますが、それに対する市場の反応は限られると思われます。
FRBのスタンスが変わらない限り、米経済指標に対する市場の反応も限定的にならざるを得ません。ただ、今週6月4日に発表される5月の米雇用統計の結果だけは、さすがに見逃せないと言えるでしょう。
注目しておきたいのは、非農業部門雇用者数(NFP)の伸びに関わる市場の事前予想です。前回(4月)と同様に少々的外れなものとなる可能性は大いにあり、肝心は予想と結果のギャップが生じたときに、それを市場がどう解釈するかです。
発表直前まで市場の予想がかなり控えめであったならば、結果は一段の米ドルの強気材料になる可能性があると見ます。米ドル/円が再び110円台乗せにトライした場合は、あらためて3月高値の110.96円を試す展開となってもおかしくないと考えています。