米ドル/円は上値が継続

前回コラムで、米ドル/円について「もはや心理的な節目である110円処さえも1つの通過点」と述べました。そして案の定、3月30日に110円台を約1年ぶりに回復した米ドル/円は、翌3月31日に一時110.97円処まで一気に上値を伸ばすこととなりました。

やはり、3月下旬に2015年6月高値(=125.85円)と2020年2月高値(=112.23円)を結ぶ「長期レジスタンスライン」をクリアに上抜け、そこから大きく上値余地が広がったことが大きいと見ていいでしょう。加えて、今まさに89日移動平均線(89日線)が上向きの200日移動平均線(200日線)を下から上に突き抜ける「ゴールデンクロス」が示現しようとしている点も見逃せません。

もちろん、このところの米国経済が目を見張る回復を見せていることも極めて重要なポイントになります。実際、4月1日に米サプライマネジメント協会(ISM)が発表した3月の米製造業景況感指数は、1983年12月以来37年3ヶ月ぶりの高水準に達しました。また、4月2日に発表された3月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数(NFP)の伸びが前月比91.6万人と、事前の市場予想を大幅に上回る結果となりました。

今回の米雇用統計では、3月24日に米議会上院銀行委員会で証言の場に臨んだパウエルFRB議長が「労働市場の『極めて望ましい』改善」と表現していた「労働参加率」が着実に上昇していることを示すデータとして注目されたことも大きいと思われます。こうした雇用情勢の全体的な改善は、3月30日に発表された3月の米消費者信頼感指数を109.7という高水準まで押し上げる(事前予想は96.9)ことにも貢献していました。

米国の消費者心理の改善は、いずれ実際の消費行動を活性化させ、将来的な物価やインフレ率の上昇につながって行く可能性が高いと見られます。むろん、4月2日に一時1.73%まで上昇した米10年債利回りが依然強含みで推移していることも事実で、今後の米国債利回りの推移によっては、当局の政策対応がこれまでの想定より前倒しになる可能性もあると見ておく必要はあるでしょう。

目下のところ、米ドル/円の111.00円前後には厚めの売りオーダーが居並んでいる模様ですが、ひとたび111円台を奪回すれば、ほどなく2020年3月24日につけたコロナ・ショック後の高値=111.71円処や、2016年12月高値から2020年3月安値までの下げに対する61.8%戻し=111.98円処が視野に入ってくるようになるものと見られます。

ユーロ/米ドルはいまなお慎重な動き

一方のユーロ/米ドルについては、なおも積極的に上値を取りに行くことには慎重であらねばならないと考えます。なにしろ、ドイツではイースター(復活祭)の休暇期間中もロックダウンに伴う制限が一段と強化されている有様ですし、フランスではマクロン仏大統領が入院患者の「爆発的増加」を警告していると伝わっています。一部には、第2四半期になればワクチン供給が大幅に増加するという声も聞かれますが、それ以前に米国や英国のワクチン展開の方が一段と加速する見通しであることも確かです。

目先、ユーロ/米ドルは1.1700ドル処で下げ渋り、場合によっては一旦1.1800ドルあたりまで値を戻す可能性もあると見られます。しかし、当面のリバウンド局面は「やはり戻り売りが基本になる」と考えられ、仮に再び1.1700ドル処を試して、ほどなく同水準を下抜けるような展開となれば、そこから2020年11月安値=1.1603ドルあたりまで一気に下値を試しに行くような展開となる可能性もあると思われます。