米ドルが勢いづく背景
ついに、米ドル/円が極めて重要なテクニカル・ポイントとなる「長期レジスタンスライン」を上抜けてきました。
同ラインは2015年6月高値(=125.85円)と2020年2月高値(=112.22円)を結ぶもので、2015年の年央から長らく形成されてきた「大型トライアングル(三角保ち合い)」の上辺ということにもなると考えられます。
3月26日の米ドル/円は、一時109.85円まで上値を伸ばす場面があり、2020年6月高値=109.85円と顔合わせする格好になりました。今後、同水準と前記の長期レジスタンスラインをクリアに上抜ければ、もはや心理的な節目である110円処さえも一つの通過点ということになるでしょう。
中期的には、2020年3月24日につけたコロナ・ショック後の高値=111.71円が視野に入ってくる可能性もあると見ていいでしょう。
ちなみに、米ドル/円の日足チャート上では3月に入ってから200日移動平均線がジワリと上向きに転じてきています。さらに、そんな同線を89日移動平均線が下から上に突き抜ける「ゴールデンクロス」も近く示現する可能性が高まってきており、そうなればますます米ドル強気の流れが加速しやすくなると見ます。
バイデン米大統領が示唆するワクチン接種スピードや経済対策
何より大きいのは、やはり米国内における新型コロナウイルスのワクチン接種スピードが今後一段と加速すると期待されていることでしょう。先週3月25日、大統領就任後初の会見に臨んだバイデン米大統領は、就任100日後までの接種目標を1億回から2億回に倍化させることを表明しました。
結果として、これまでバイデン米大統領が豪語してきた「5月1日までにワクチン接種対象を全成人にまで拡大する」との目標達成が現実のものとなれば、米景気回復への期待は一段と盛り上がるに違いありません。
さらに、バイデン米大統領はインフラ投資を軸とした3兆ドル規模の経済対策について今週中にも公表する方向と伝わっており、まさに米政府・当局による財政と金融の政策支援は空前絶後のスケールとなりそうです。
それは当然、一段の米株高と米ドル強気の流れを勢いづかせるものになると考えられますし、足下では日本や欧州との差異がますます鮮明となってきていることから、対円や対ユーロで米ドルが一案の強みを発揮するのも当たり前のことと考えることができるでしょう。
まして、目下のところ独・仏・イタリアなどの主要国がロックダウン(都市封鎖)を一段と強化しているユーロ圏の景気の先行きには靄(もや)がかかったままです。変異ウイルスが猛威を振るうフランスやドイツは「極めて深刻な状況」と報道されており、その材料だけでも対ユーロでの米ドル買いは進みやすくなっています。
ユーロ/米ドルは、先週3月24日に200日移動平均線を下抜け、翌25日には1.1,800ドルの節目をも下抜ける動きとなりました。欧州で変異ウイルスへの感染が拡大の一途をたどっている厳しい状況を考えれば、まだユーロはしぶとく持ち堪えている方であると言えるのではないでしょうか。
むろん、今後の下値リスクには要警戒であり、今後、場合によっては2020年11月安値=1.1603ドルあたりまで一気に下値を試しに行くような展開となる可能性もあると思われます。