2016年6月23日に、英国は国民投票でEUからの離脱を決定した。あれから早2年である。その後、キャメロン前首相の辞職、メイ首相の選出、2017年3月には、リスボン条約に基づいて英国からEUへの離脱の意思決定を通知し、英国がEUから離脱する協議が始まった。 リスボン条約で定められた協議期間はわずか2年、つまり2019年3月には協議が成立していなければならない。しかし、英国議会とEU議会の議決を必要とすることを考慮すると、2年という時間は短いと言わざるを得ない。貿易条件や関税設定の問題、規制基準のすり合わせ、移動や雇用の自由、そして、金融ライセンスに関する域内適用(いわゆる金融ライセンスパスポート)問題など、英国の生命線に関わる問題も含まれる。筆者は、英国への負担は、政治・行政面で莫大なものと、かねて指摘してきたが、それが現実のものとなる可能性が高まっている。 EUにとっては、英国はやはり重要な隣国であり、大国である。これまでEUという傘の下で、構築された経済的な関係も根強い。その英国との関係維持によって得られる政治・経済的メリットは認める一方で、EU法に関する反発を強め離脱を選択した英国のわがままをどこまで許容するかは、残るEU諸国内の統一維持へのモチベーションにかかわる問題となる。従って、甘い顔をすることはやはりできない。交渉は難航していると漏れ伝わってくる。 さて、香港人たちにBREXITはどう映っているのであろうか?1997年まで英国の統治のもとにあった香港は、当然ながら、英国に投資している企業は少なくない。香港でも代表的な企業であるハチソンは2015年の売上高の46%を欧州が占め、さらにそのうち21%が英国のシェアが占めていた。アジアで最も富裕な人物といわれ今年引退した李嘉誠前会長はかねてより、英国のEU離脱による悪影響は、英国のみならず欧州全体に広がるとコメントし、英国がEUにとどまるよう英国民に呼び掛けていたほどである。 2016年6月に、英国の国民投票でEUからの離脱が決まった直後、英国株も英ポンドも売りを浴びた。そして、ハチソン社株をはじめ、香港企業の株価も下落した。しかし、英ポンドの下落で投資に割安感が出たとみた香港投資家の中には、英国への投資を高めた強者たちもいる。香港株も影響は軽微であった。むしろ香港人には、市場でのボラティリティは、新たな投資機会ととらえる見方がある。実は、香港では、1997年の香港返還やアジア通貨危機も、2003年のSARS危機も、そして2007年のリーマンショックも、長期投資のバーゲンハンターにとっては、絶好の買い場となったという記憶として意識されている。 先行き不透明感や景気腰折れ懸念が言われる今年の相場は難しいが、身を軽くしておき、ボラティリティに備えることも、一つの相場への取り組みかもしれないなと、彼ら香港人たちとの会食を終えて感じたものである。

コラム執筆:Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank (NWB)
世界三大金融市場の一つである香港にて、個人投資家に、「世界水準の資産運用商品」と「日本水準のサービス品質」、個人向け資産運用プラットフォームとしての「安心感」を併せて提供している金融機関。マネックスグループ出資先