最強銘柄アマゾン、創業者のジェフ・ベゾス氏がCEO退任

アマゾン(AMZN)のジェフ・ベゾスCEOが2021年第3四半期に退任することが明らかになった。今や帝国レベルの影響力を持つ米ハイテク企業の中でも、とりわけ筆者はアマゾンが最強の銘柄であると考えている。インターネットの黎明期とともにスタートしたアマゾンを、比類なき大企業に育て上げてきたのは、他でもないベゾス氏である。

ベゾス氏がアマゾンを立ち上げたのは1994年のこと。ニューヨークで金融工学の先駆け的なヘッジファンド大手「D.Eショー」に勤めていた時に考え出したのが、ネットを使った「エブリシング・ストア」のアイデアだった。当時、カズオ・イシグロの「日の名残り」を読んでいたベゾス氏は、人生を左右する選択で後悔を最小化するためには何をなすべきかを考えたという。そしてベゾス氏はヘッジファンドの高給を捨て、起業の道を選んだのだ。

2013年5月に行われたベゾス氏の講演動画では、なぜオンライン販売の「エブリシング・ストア」に本を選択したのか、初期の頃のアマゾンはどんな様子だったか等をベゾス氏自身が語っている様子を見ることができる。彼はアマゾンのビジネスを「最もインクレディブル(信じられないくらい素晴らしい)ジャーニー」とした上で次のように語っている。(詳細は2019年5月21日付コラムをご参照ください。)

1994年にアマゾンを設立した頃、インターネットの使用率は年2,300%で伸びていた。こんなものは他になかった。その中で、自分には何ができるか、オンラインで売るのは何が良いかを考えて、本を選んだ。

(中略)自分がインターネットにかかわれるとしたら、ものすごいことができると思った。しかし失敗したら後悔するか、いや、やらなかったら絶対に後悔すると思った。

(中略)両親はアマゾンの初期の投資家で300,000ドルを投資した。父親の最初の質問は「インターネットって何だ?」って。(中略)両親には正直に、たぶん70%失敗するだろうと伝えた。(中略)スタートアップは10%くらいしか成功しないから。今から考えると30%成功すると思っていた自分はとてつもなく自信過剰だった。

退任と同日に発表された第4四半期(2020年10〜12月期)の決算では、売上高は前年同期比44%増の1255億5500万ドルと、四半期として初めて1000億ドルの大台を突破した。売上規模はハイテク企業ではアップルを抜き、小売り世界最大手のウォルマートに迫るものとなった。純利益は2.2倍の72億2200万ドルで、こちらも過去最高を更新した。

アマゾンは現在、急成長がもたらす社会への歪みや反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いなど、いくつかの課題を抱えている。しかし、ビジネスは向かうところ敵なし、四半期の売上高が初めて1000億ドルを超える規模に拡大し、ベゾス氏のCEO退任としては見事なタイミングだと言えるであろう。

【図表1】
出所:筆者作成

後任にジャシー氏が選ばれた理由

ベゾス氏の後任は、現在Amazon Web Services(AWS)のCEOでベゾス氏の参謀と言われているアンディ・ジャシー氏が務めることになる。ジャシー氏はAWSを450億ドルのビジネスに成長させた立役者である。日本経済新聞の2月3日付記事では、後任となるジャシー氏は「起業家」としての顔を持つ一方、穏やかな性格で人の話をよく聞くことで知られ、社会との接点としての役割を期待されることになりそうだと伝えられている。

アマゾンは北米においてeコマースで支配的な地位を獲得しているが、実際に高い収益を生み出しているのはAWSであり、それはアマゾンの原点でもある「ローコスト・ローマージン」の文化から生まれ育ってきた。アマゾンは今や世界的な規模のサーバーとコンピュータネットワークを抱え、スケールメリットを存分に発揮し、クラウド市場において揺るぎない地位を築いている。AWSはアマゾンを小売業ではなく、ハイテク企業に変革させたと言えるであろう。(詳細は2019年6月5日付コラムをご参照ください。)

ベゾス氏は、取締役会長として引き続きアマゾンの重要な事業に関わるほか、宇宙開発事業のブルーオリジンや地球環境ファンド、またワシントンポストなどに注力するとされている。今回の退任発表に合わせ、ベゾス氏が社員宛に送ったメールがアマゾンのHPに公開されている。

私はこれまで以上に活力に満ちており、これは引退ではありません。

そして、最後の一文がアマゾンのチャレンジ精神溢れる文化を象徴している。

発明を続け、最初はクレイジーに見えても絶望しないでください。さまようことを忘れず、好奇心を羅針盤にしてください。Day 1のままで。

大切な資金の投資先として、アマゾンのような企業は非常に魅力的だと筆者は考えている。

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アマゾン(ティッカー:AMZN)
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