大幅に遅れそうな米大統領選挙の決着

米大統領選挙が半月後に迫ってきました。ただ今回の大統領選挙は、勝敗の確定が11月3日の投票から大きく遅れる、異例の状況になるとの見方が強まっています。ではそれが為替相場にどう影響するかについて、今回は考えてみたいと思います。

勝敗の確定が大幅に遅れる見通しとなっているおもな理由の一つは郵便投票の影響。コロナ問題により、郵便投票が大規模に行われる見通しとなっていますが、その開票にかなりの時間がかかることは確実で、このため、これまでのように開票から一日以内の勝敗確定はほぼ不可能と見られています。

また、大統領選挙の勝敗は、勝利宣言より敗北宣言で確定するとされます。たとえば、勝敗の確定が大きく遅れた例として、2000年の選挙のケースがありましたが、この時は12月に入り、最高裁のフロリダ再集計認めずといった判決を民主党・ゴア候補が受け入れることで事実上の敗北宣言となったことにより決着となりました。

ところが、今回トランプ大統領は自らに不利な結果は受け入れないとの姿勢を示していますから、「敗北宣言」がないままに、決着つかない状況が延々と続く可能性もあるわけです。では、11月3日の投票終了後も、勝敗が確定しない状況が続いた場合、為替相場にはどんな影響となるかについて、上述のように決着が大きく遅れた2000年の大統領選挙のケースを参考に考えてみます。

勝敗確定より早く動き出した2000年のケース

2000年の大統領選挙は、フロリダ州の集計に問題があり、再集計に時間がかかったことから、勝敗の確定は、11月7日の投票日から約1ヶ月も遅れるところとなりました。こういった中で、米ドル/円は107~109円といった2円程度の狭いレンジ中心の小動きが、投票後も続くところとなったのです(図表1参照)。

【図表1】米ドル/円と90日MA (2000~2001年)
出所:リフィニティブ社データを元にマネックス証券が作成

ただ、そんな米ドル/円の小動きは、選挙結果の勝敗が確定するより早く終わりました。上述のように、勝敗の確定は、民主党・ゴア候補が、最高裁判決を受け入れることで「敗北宣言」となった12月12日でしたが、米ドル/円は11月20日過ぎにこの間ブロックされてきた109円を突破すると上昇が拡大、勝敗確定となった12月12日には111円程度まで米ドル高・円安となっていたのです。

ちなみに、2001年から始まるブッシュ政権では、2002年にかけて135円まで大幅な米ドル高・円安となりました。その意味では、この2000年の大統領選挙では、ブッシュ政権誕生が確定する前から、ブッシュ政権での大幅な米ドル高を先取りする動きが始まっていたわけです。

選挙結果より90日MA±2%ブレークに注目

ところで、そんな2000年大統領選挙前後の米ドル/円の動きを、90日MA(移動平均線)からのかい離率で見ると、長く続いた±2%のレンジを上抜けると、かい離率がプラス方向へ急拡大に向かったことがわかります(図表2参照)。これは、以前も何度か紹介したように、この2000年に限らず、米大統領選挙前後の米ドル/円におおむね共通してきたプライス・パターンでした。

【図表2】米ドル/円の90日MAからのかい離率(2000年4月~2001年6月)
出所:リフィニティブ社データを元にマネックス証券が作成

米大統領選挙年の米ドル/円は、選挙前後に小動きから一方向への大相場に「豹変」するパターンを繰り返してきたが、それを90日MAからのかい離率で見ると、「豹変」は±2%のレンジ・ブレークとほぼ一致してきたのです。

以上をまとめると、今年の米大統領選挙の決着は大きく遅れる可能性があるものの、似たような2000年の例などを参考にすると、米ドル/円の小動きは選挙の勝敗確定より早く終わる可能性もあるでしょう。90日MAからのかい離率が±2%をブレークしたら、それがかりに選挙の勝敗確定前でも、勝敗確定後のトレンドを先取りした動きが始まっている可能性は注目されるのではないでしょうか。

まさに、最近の米ドル/円も90日MA±2%の範囲での小動きが続いています(図表3参照)。このレンジ・ブレークは、大統領選挙の勝敗とは別に、新たなトレンドを考える上での手掛かりになる可能性も注目されます。ちなみに、足元で90日MAを2%下回った水準は104円程度、2%上回った水準は108.3円程度といった計算になります。

【図表3】米ドル/円の90日MAからのかい離率(2020年4月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成