先週、米国株は「当然あるべき調整の場面」を迎えた

先週9月3日、NYダウ平均が一時1,000ドル超の下げを演じるなど、米国株全体に少々まとまった調整が入ることとなりました。ことにIT・ハイテク株の下げが全般的にきつく、同日のナスダック総合指数も5%近くもの下げとなりました。

俗に「ロビンフッダー」と称される投資家の一部がデリバティブで法外な損失を出したことが一因ともされますが、もともとIT・ハイテク株の株価上昇ピッチが、このところあまりに急であったことも事実です。

例えば、テスラの株価は僅か2ヶ月でおよそ2.8倍にもなり(下図参照)、9月1日には既に反落の兆候が現れていました。翌2日には一時15%もの下げを演じており、こうした動きが3日の全面安につながった可能性も大いにあると見られます。

【図表】TESLA  INC(TSLA)(日足)
出所:筆者作成

足下の過熱感に対する警戒がみるみる強まっていたことを考えれば、米株価は「当然あるべき調整の場面」を迎えたと見ていいでしょう。そうであるならば、なおも基本的にはリスクオンのムードが市場全体に漂い続けると考えることができ、少なくともリスク回避の円買いが極端に強まるといった事態にはなりにくいものと考えます。

今後も「リスク選好の円売り」がモノを言う場面は少なくはない

なにしろ、足下で米国の実質金利は一段の低下を見せており、もはやマイナス0.9~1.0%あたりのレベルにあるのです。

米連邦準備制度理事会(FRB)が打ち出している政策指針を前提とすれば、今後、景気や雇用、消費などの回復に伴ってインフレ率がジワジワと上昇してきたとしても、しばらく政策は「据え置き」となることから、米10年債利回りの上昇ペースは緩慢となり、結果として実質金利はマイナスの領域に留まりやすくなると考えることができます。

米実質金利が低い水準を維持していることが米株価にとってプラスであることは言うまでもありません。

もちろん、低金利下では米ドルの上値余地も限られやすくなるわけですが、米ドル/円に関しては米ドル安よりも円安の方が勝るケースというのも少なくはありません。米・日の株価が基本強気の基調を続けている限り、今後も「リスク選好の円売り」がモノを言う場面というのは少なくはないものと見られます。

また、日本の次期首相候補のなかで最も有力なのは菅氏との見方は海外投資家の間でも拡がっており、「今後もアベノミクス路線が踏襲されることを前提とすれば、安易に円買いの誘いに乗ることは避けたい」とのスタンスが維持されるものと見られます。

21日移動平均線が強い下値支持として機能し続けるかどうかに注目

ただ、先週は週末にかけてクロス円が全般に調整含みとなり、このまま弱気に転換してしまいやしないか少々気になるところではあります。その意味でも、目先注目しておきたいのはユーロ/円や豪ドル/円、ユーロ/米ドル、豪ドル/米ドルの21日移動平均線(21日線)が今後も強い下値支持として機能し続けるかどうかという点です。

仮に同線をクリアに下抜けるような展開になると市場のムードも相応に変化する可能性が高く、米ドル/円にも一定の下値リスクが生じてくるものと思われます。

むろん、ユーロ/円や豪ドル/円で21日線のサポートが機能し続けるならば、今しばらく米ドル/円もこれまで通りレンジ内での値動きを続けることとなるでしょう。なお、今週の米ドル/円については106.00円処を軸とした105.50-106.50円のレンジでの値動きを想定しておきたいと考えます。

なお、ユーロ/米ドルに関しては先週9月1日に一時1.2000ドル台に乗せる場面があったものの、ほどなく押し戻されるような格好で上げ一服となりました。

先週末にかけては一時的にも1.1800ドルを下回る場面もありましたが、いまだ8月初旬から形成されている緩やかな上昇チャネル内での推移に留まっていることも事実であり、当面は同チャネル下限のサポートが機能し続けるかどうかに要注目です。

同水準をクリアに下抜けた場合には、目先1.1700ドル処を目安にショートを振る算段で臨みたいと筆者は考えます。