先週末にかけてリスク回避の円買いが優勢

先週7月27日(月)以降の日本株は、週を通じて弱含みの展開を続けることとなりました。足下では一頃のような「リスク回避のドル買い」は鳴りを潜め、むしろ株安でドル安・円高といった流れが継続しました。

その一方で、米国株はIT・ハイテク企業の比較的良好な決算結果を受けて全体に高止まりの状態を続けています。しかし、米南部地域などで新型コロナウイルス感染拡大の勢いが一段と増していることや、追加の経済対策を巡る与野党の審議が暗礁に乗り上げていることなどから、その先行きには暗雲が漂う状況ともなってきています。

結果、足下では「米国経済の早期回復は期待薄」との見方が拡がりつつあり、先行きを懸念したストレートなドル売りの圧力が強まっている可能性もあるでしょう。加えて、米国の財政悪化懸念を背景に先行きを案じた資金が、一時的に南欧諸国の国債や金(ゴールド)などにシフトしていることもドルが軟調な推移を続けている一因と思われます

なお、日本株については相次ぐ4-6月期の企業決算における総じて厳しい結果が明らかになっていることで、これまであった「いささか明確な根拠に乏しい期待」が吹き飛び、あらためて現実を思い知らされた投資家らが一旦手持ちのポジションを整理するといった行動に出ている印象があります。そのため、全体に売り優勢の展開となるなか、リスク回避の円買いがより優勢となって米ドル/円も大きく下押すこととなりました。

ドルがストレートに売られて米金利も一段と低下するなか、同時に円買いの圧力が強まるのですから、先週末にかけて米ドル/円が一時的にも104.19円まで下押すこととなったのは道理です。ただ、一方でユーロ/米ドルが一時1.1909ドルまで買い上げられたり、NY金先物価格が1トロイオンス=2,000ドル台まで一時的にも買い上げられたりしている状況は、いくら何でもオーバースピード過ぎると言えなくもないでしょう。

ドル安要因に変化が起こる可能性

なお、先週の7月31日(金)は月末ということもあり、欧米時間帯のなかではドルが一旦急激に買い直される状況へと転じました。米ドル/円の戻りやユーロ/米ドルの調整が一気呵成に生じたことから、月末のポジション調整に加えて多くのストップロスを巻き込む動きも生じたものと見られます。

よって、市場では「一時的なドルの買い戻しに過ぎない」と見る向きも少なくないようですが、このまま円高やユーロ高が一段と進んだ場合には「さすがに日本や欧州の金融当局が何らかのアクションを起こそうとするのではないか」との思惑が強まる可能性も大いにあるでしょう。

「そろそろドル安も一服」などと簡単に口にすることは憚られますが、足下でドル安の流れを助長している幾つかの要因に今後、何らかの変化が生じる可能性もあります。ひとつには、追加経済対策を巡る米与野党の協議がどこかで妥協点を見出す可能性があるでしょう。審議は8月7日まで続けられるとのことですが、関連の法案が棚晒しにされたまま夏季休暇に突入などということが果たしてあるでしょうか。そうなれば、それこそ米国経済の先行きは大惨事となる可能性が高いと見られます。

今週はクロス円が強含みの展開を続けるかに注目

「波乱覚悟の8月」に突入し、いつも以上に厳しいポジション管理を余儀なくされる状況であることは十分に心得ておく必要があるでしょう。そのような中、何より今週注目しておきたいポイントは、これまで比較的堅調に推移してきたユーロ/円や豪ドル/円などのクロス円がなおも強含みの展開を続けるかどうかという点です。

ことに豪ドル/円に関しては、先週の週足が一目均衡表の「雲」をクリアに上抜けたことから、今後一段の上値余地が拡がってくるかどうか、しっかり見定めて行きたいと考えます。