前回の記事で、バリューアクトは任天堂(7974)をウォルト・ディズニーやネットフリックスのような世界的エンターテイメント会社になりうるとしている、と説明しました。ディズニー、ネットフリックスの時価総額はそれぞれ約20兆円で任天堂はその1/3程度。この差はどこにあるのでしょうか。

まず、直近の各社の売上と営業利益を見てみましょう。過去3年間の売上高・営業利益の平均と直近2年間の売上成長は以下のとおりです。1ドル100円で直近の年間決算3年分で計算しています。

任天堂 売上高:1.2兆円  営業利益:2600億円 売上成長:24%
ディズニー 売上高:6.1兆円 営業利益:13500億円 売上成長:26%
ネットフリックス 売上高:1.6兆円 営業利益:1700億円 売上成長:72%

ディズニーの売上と営業利益は任天堂の5倍程度、ネットフリックスは任天堂と似たような規模であることが分かります。ただ、規模が5倍のディズニーが売上成長において任天堂を上回っており、ネットフリックスは両社を遥かに超えるペースで成長しています。これが両社と任天堂の評価の差でしょう。

しかし、ネットフリックスの成長は理解しやすいにしても古豪ディズニーの売上増は驚くべきものです。これはディズニーが映画製作と動画配信に注力し、ピクサー、マーベル、ルーカスフィルム、21世紀フォックスなどの会社の買収を続けているためです。

その結果、ディズニーはこの10年で2017年を除いて売上が成長しています。100年近い歴史を持つ会社としては驚くべきことでしょう。一方、任天堂は2010年3月期決算以来8期連続で減収していました。2017年3月に「Nintendo Switch」を発売し、2018年3月期に前期の約4900億円から1兆円超に売上が倍増するまで厳しい状況が続いていたのです。そこから2019年3月期、2020年3月期は売上・営業利益とも大きく成長していますが、安定成長とは言いにくそうです。

バリューアクトは任天堂について、「世界的エンターテイメント会社になれる」と同時に「マリオ・ドンキーコングなどの強力な知財を有している」としています。「強力な知財」の代表的な会社がディズニーであることを考えると、そのディズニーが安定的に成長しているのに、任天堂の業績が8期連続減収など不安定であることは投資家にとっては歯がゆそうです。

ちなみにネットフリックスは売上二桁成長を10年以上続けており、その間、営業黒字も継続しています。任天堂は2012年3月期から2014年3月期は営業赤字に転落しています。ゲーム機・ゲームソフトと動画配信の差はあるにせよ、バリューアクトはそうした業績の不安定さを改善する方針ではあるのでしょう。

それでは任天堂のどういう部分に課題がありそうか、バリューアクトはどのような提案をしてきそうか、次回は任天堂の決算をさらに詳しく見てみましょう。