ここまで4回の連載で見てきたように建設会社は、アベノミクス・東京五輪を前にした建設好況の中で大きな利益を上げてきており、利益が積み上がってきていて、また、歴史が長い会社も多いことから優良な資産を保有していることが多く、一方で株主還元などに改善の余地があることからアクティビストのターゲットになりやすい要素があったと言えそうです。ただ、上記のような業績好調・資産拡大傾向・株主還元がいまいちだとしても成長を続けている会社はそうターゲットになることはありません。
一昔前であればアクティビストがターゲットとする会社の株の多数を保有することが少なくありませんでした。しかし、最近はそれほど高い比率の株式を保有することはなく、他の株主の同意を得て、あるいは経営陣を説得して会社の改善を進めていこうという動きがふつうになっています。
戸田建設(1860)、奥村組(1833)、前田道路(1883)、いずれのケースでもアクティビストが3割を超えるような大きな比率の株式を保有しているわけではありません。これはアクティビストが自身の要求を株主共通の利益に資するものにするようにしているためです。そういう要求であれば自身の保有が少数であっても他の株主が賛同してくれることで要求が採用されやすいのです。逆に、多数の株式を保有していても長期的目線で株主の利益にならない要求は買収防衛策の導入などで阻まれやすい状況です。
そのため、株主還元が十分でなくとも会社がしっかり成長をしていたり、成長するための戦略がしっかりしていたりすれば、アクティビストも自分たちの改善余地が少ないことからターゲットにしにくいのです。つまり、建設会社はそういう成長や成長戦略に課題があると考えられていると思われていると言えそうです。
成長戦略の不足は株価に表れます。株価を一株当たり株主資本で割った株価純資産倍率(PBR)は現在の資産に対し、株価がどの程度評価されているかを示す指標なので、各社の成長期待を示しているものです。建設会社各社のPBRを見てみましょう。
時価総額上位である大成建設(1801)のPBRは2017年で2を超えていて、一時は2.5を超えたものの2019年末には1.3倍程度まで落ちています。大林組(1802)、清水建設(1803)、鹿島建設(1812)も同様です。
長谷工(1808)にいたっては2015年に3倍を超えていたPBRが長期的に低下傾向で、2019年には1倍を割り込んでしまっています。同社の場合、13年3月期決算から18年3月期決算まで6期連続営業増益で1株資産は342円(12年3月期)から995円(18年3月期)まで大きく増えています。
一方、長谷工(1808)の株価は2018年1月に1,853円の高値をつけて以降、昨年8月には1,070円まで下落しています。同社は同時期に大きく現金・現金等価物を増やしているものの、成長期待がしぼんでしまったと言えるでしょう。これらの建設会社は環境の追い風を受けて業績を伸ばし資産が増えたものの、その使い方に疑問が持たれていると言えそうです。
一方、大和ハウス(1925)や積水ハウス(1928)はそれほどPBRが落ちてはおらず、コムシスHD(1721)、ショーボンド(1414)も同様です。大和ハウスや積水ハウスは財務的には他の建設会社と変わらないもののビジネスの幅が広いことが評価されているのかと思います。コムシスやショーボンドはこの数年で業績は上昇しているものの現金・現金等価物はあまり増えておらず、専業ではあるものの成長のための投資をしっかり行っていると評価されているようです。
こうした建設会社の経営について少数株主である個人投資家の方々はどのように思っているかアンケートを作成いたしましたのでご回答いただければ幸いです。
※アンケートへの回答期限は2020年4月21日(火)となります。ただし、当社が希望する回答数に達した場合、予定日より早くアンケート受付を終了することがありますのでご了承ください。