2012年にいわゆるアベノミクスが始まり、2013年には東京オリンピックの開催が決まりました。その結果、建設業は好景気が続きました。2013年度には売上高が28.8兆円で営業利益が1.2兆円であった東証の建設業は、2019年度には売上が31.3兆円で営業利益は2兆円と利益が倍近くになっています。

一般にスーパーゼネコンと言われる大成建設(1801)、大林組(1802)、清水建設(1803)、鹿島建設(1812)はいずれも2012年度末から2018年度末にかけて6年で1株あたりの自己資本が倍増しています。各社は同期間に増配を繰り返しており、たとえば大成建設は2013年3月期の配当が25円だったのに対し、2019年3月期には130円と毎期増配を行ってきました。それだけ株主還元をしていても1株あたりの自己資本が倍増しているわけですから、この期間に各社がどれだけ稼いだかということが分かります。実際、建設業は労働者不足に苦しむニュースも流れるなど、好景気を謳歌していたと言ってもいいでしょう。

しかし、直近は新型コロナウイルスの影響で株価が下がっていることもありますが、現在上記のスーパーゼネコン4社はいずれもPBRが1倍を切っており、解散価値よりも株価が低い状況になっています。建設業全体を見ても今回の急落が始まる前の19年12月末の数字でPBRは1倍と、解散価値と言われる水準でした。

また、建設会社は歴史のある会社も多く、前回の戸田建設(1860)のように優良な不動産資産を持っている会社も少なくありません。たとえば大林組や奥村組(1833)といった会社は不動産事業が一定のセグメント利益を稼ぎ出しているほどです。

アクティビストの活動の多くは、優良な資産や稼いだ現預金を適切に株主に還元すべしというものです。そういう観点でいうと、直近で大きな利益を生み出し、今も利益は高水準で、しかも優良資産を多数持っている建設会社はアクティビストのターゲットになりやすそうです。

次回は、前田建設工業(1824)と前田道路(1883)に起きたアクティビストに関係する動きを紹介していきたいと思います。