先週3月27日に東芝機械(6104)の臨時株主総会が開催されました。
結果は会社側の勝利でTOBに反対する方針と、買収防衛策が可決されました。会社が発表した同決議の賛成割合はいずれも約62%でした。直近のガバナンスの議論などを踏まえると、買収防衛策の導入は簡単ではないと考えられていました。圧勝とはいかないまでも会社側からするとよく勝てたというところだと思います。現状では両者のコメントも報道などが中心のため、今回の議決の内容や両者のスタンスについては改めて取り上げたいと思います。

今回は本TOBに伴う株価の動きを詳しく見てみます。前回の記事に書いたように臨時株主総会開催の理由となったTOBは今年1月に開始されました。当時3,000円程度だった株価と東芝機械の1株あたり株主資本を元にTOB価格は3,456円でした。東芝機械株はTOB発表時には高値で4,005円をつけています。

公開買付届出書によれば、ファンド側はもともと同社株を発行済株式数の12.75%保有でした。
買付株数は下限が14.5%の350万株、上限が31.07%の750万株でした。これは公開買付への応募が350万株未満であれば1株も買い付けず、750万株を超える場合は750万株しか買わないということです。買付価格は一律で、上記TOB価格の3,456円です。

TOBでは買付者側(今回はファンド側)への縛りが厳しく、基本的に買付価格の引き下げや買付株数の引き下げは行なえません。その目的の一つは、公開買付を前提に投資する人の保護で、条件の引き上げは可能です。つまり、東芝機械株主からすると、この公開買付が成立すると最大750万株をファンド側に3,456円で買ってもらえるわけです。

しかし、今回の臨時株主総会の決議内容はTOBの撤回事由となるため、ファンド側は今後TOBの撤回を行うと思われます。これにより750万株を3,456円で買ってもらうという権利を株主側は失うことになります。

臨時株主総会発表日の東芝機械株価は朝方には前日比6%強上げる場面が見られました。しかし、
臨時株主総会が可決されたことを受けて午前中には前日の終値を割り込み、その報道が行き渡った午後取引開始直後には15%安近くまで売り込まれました。
3月27日の終値は前日の2,300円から200円安(8.7%安)の2,100円で取引を終えています。

この1日の株価の動きでも分かるように会社側・ファンド側の動きにより株価は大きく影響を受けます。このような日は、個人投資家にとっていい取引機会になるのではないでしょうか。むしろ、アクティビストの動きを個人投資家は重要な投資判断材料の一つにせねばならないでしょう。これは中長期の投資家にとってもそうです。

ファンド側が東芝機械の株式を5%以上保有したとして大量保有報告を提出したのは2018年12月でした。その後、ファンド側の買い増しなどもあり、2019年1年間で東芝機械の株価は約50%上昇しています。これは日経平均の上昇率約18%を大きく上回っています。

個別にいろいろな論点があるもののアクティビズムが株主の利益となる一つの証左でしょう。

次回は今回の臨時株主総会を元に両者の攻防を振り返ってみたいと思います。