市場は香港人権問題と米中貿易協議を別物と捉えている模様

先週11月27日、トランプ米大統領が香港での人権尊重や民主主義確立を支援する「香港人権・民主主義法」に署名したことで、ついに同法は成立する運びとなりました。

当然、中国政府は猛反発し、報復措置を講じる構えを見せましたが、今のところ具体策は明らかにされていません。中国外務省の耿爽副報道局長は11月28日の定例記者会見で「このまま見守ってほしい。来るものは来る」などと述べましたが、そこからは報復の影響が自国に跳ね返ってくる事態は避けたい中国側の苦しい胸の内が透けて見えるようでもあります。

この香港人権問題と米中貿易協議は、別に分けて考えられるものと市場は捉えている模様であり、少なくとも米政府が12月15日に予定している新たな関税の発動は、見送られる公算が大きいと見る向きが大勢を占めています。

また、米中貿易協議の第一段階での合意に向けた話し合いの行方はいまだ不透明ながらも、市場では「トランプ氏が自ら株価下落のきっかけを作ることなど考えにくい」と認識している向きが多いように見られます。

米ドル/円も早晩、上放れしたトヨタ株の値動きをトレースする?

むろん、先週は感謝祭の休場を挟んで様子見ムードが強く漂っていたため、確たることは言えませんが、基本的にドルが強い状況であることに変わりはないと言えるでしょう。その実、先週の米ドル/円は週を通して小動きながらも、基本的には強気の展開を続けることとなりました。

特筆すべきは、11月26日に109円処の節目や200日移動平均線をクリアに上抜ける動きとなり、週末11月29日には一時109.67円まで上値を伸ばす展開となったことです。目先は62週移動平均線が位置する109.81円処から、一目均衡表の週足「雲」が位置する109.94円処が意識されやすくなる(図表1参照)ものと思われます。

【図表1】米ドル/円(週足)
出所:筆者作成

上図を見てもわかるように、2015年6月に米ドル/円が125.85円の高値をつけて以来ずっと形成されてきた三角保ち合い(トライアングル)の上辺は、もはや110円台後半あたりまで水準を切り下げてきています。このことからも、今後米ドル/円がこのトライアングルを上放れるタイミングは着々と近づいてきているようにも思われるのです。

ちなみに、かねて米ドル/円の値動きは東京証券取引所に上場するトヨタ自動車の株価の動きと強い「正」の相関があるとされてきました。実のところ、そのトヨタ株は2015年3月に8,783円の高値をつけてから長らく形成してきたトライアングルを、今年9月半ばにクリアに上放れてきているのです。したがって、市場の一部には「米ドル/円も早晩、トヨタ株の値動きをトレースする」と見る向きもあるのです。

ユーロ/米ドルは当面は戻り売りで臨むのが基本

一方、対ドルでユーロの上値が非常に重いことも依然として変わりません。先週11月25日に発表されたドイツの大手経済研究所による11月のIfo景況感指数も95.0と、相変わらず振るいませんでした。このことからも、ユーロ圏経済が低迷から抜け出せず、欧州中央銀行(ECB)の緩和策が予想以上に長期化するとの見方は変わりません。

昨今よく言われるように、ドイツが財政政策を積極化すれば状況は変わってくる可能性もありますが、なおもメルケル独首相は慎重姿勢を崩していません。12月1日に欧州委員会の新委員長に就任したフォンデアライエン氏(積極財政派とされる)のお手並み拝見ではありますが、そう簡単ではないでしょう。

結果、引き続きユーロ/米ドルは31週移動平均線に上値を押さえられたままの状態を続けており、先週は再び1.1000ドルの節目を下回る場面が見られました。同水準をクリアに下抜ける展開となれば、あらためて10月安値=1.0879ドルを試すような展開となる可能性があり、当面は戻り売りで臨むのが基本ということになるとみます。