世界各国で債券利回りの低下が続く

米国最大の経済団体である全米商工会議所がホワイトハウスを提訴する検討に入り、本日(3日)中にも判断を明らかにすると伝わっています。

これは、言うまでもなくトランプ米政権が表明したメキシコ製品への関税発動に反発し、差し止めを請求するためのものです。今度ばかりはトランプ氏のなりふり構わぬ貿易制裁策に「待った」がかかる可能性も大いにあり得るものと見られます。

また、トランプ氏の選挙公約であったメキシコとの「国境の壁」建設についても、その差し止め請求が全米20州にまで広がったことで、次の米大統領選までの公約実現は不可能な状況となっているのです。

とはいえ、足下では仮にメキシコへの制裁関税が実現した場合、世界経済全体に甚大な悪影響が及ぶ可能性があるといった点を警戒し、市場がより一層リスク回避姿勢を強めていることも事実でしょう。

実際、世界のマネーは足下で債券へのシフトを鮮明にしています。一例としてドイツの10年債利回りがマイナス0.2%台というレベルまで低下し、2016年につけた最低記録を更新するなどという、少々異常とも言える債券(価格)高の商状が世界各国の債券市場で確認されています。

ドイツと同様にフランスでも10年債利回りの低下が続いており、両国における債券利回りの低下は当然、ユーロの先行きにも大きく影響します。

足下では金利スワップ市場が織り込むユーロ圏の予想インフレ率が1.3%程度にまで低下してきており、一部からはデフレに対する懸念までもがジワリと浮かび上がってきている模様です。そのため、もはや欧州中央銀行(ECB)による当面の利上げ期待は消滅しかかっており、むしろ最近は利下げの可能性まで取り沙汰されるようになってきています。

英国の次期首相選びは波乱含みと見る必要あり

今週6月6日に行われるECB理事会では、銀行向けの新たな長期資金供給策「TLTRO3」の詳細が示されると見られています。それ自体は、すでに市場である程度織り込まれていると見られるものの、当面の政策方針に関わる声明やドラギ総裁会見の内容次第では、一段とユーロ売り圧力が強まる可能性もあり、その点は要警戒と言えるでしょう。

ユーロ/米ドルに関しては、なおも年初からの下降チャネル内での推移が続いており(図表1参照)、そのチャネル下辺は月末に向けて1.1000ドル割れの水準にまで低下して行きます。

【図表1】ユーロ/米ドル(日足)2018年2月~
出所:筆者作成

もちろん、この6月は英国で次期首相選びが本格化する点も見逃せず、そこは大いに波乱含みであると見ておく必要があるでしょう。今のところは、まだ複数の候補者が乱立しており「必ずしも合意なき離脱に至るとは限らない」という見方が完全に否定されるような状況ではありません。

しかし、これから候補者が絞り込まれるごとにEU懐疑派が勢いを増してくれば、ハードブレグジットへの懸念がジワジワと強まってポンドに一段の売り圧力がかかる可能性も十分にあると言えるでしょう。

米ドル/円は107円台前半の水準を試しに行く可能性

このように、ユーロやポンドがとかく強めの売り圧力に上値を押さえられがちとなるなか、なおも消去法的なドル高は継続しており、その点は米ドル/円の下支え役としての貢献に期待したいところでもあります。

ただ、先週5月31日の米ドル/円の日足ロウソクが久方ぶりに長い「陰線」となり、ほとんど下ヒゲを伸ばすこともなかったというのは。やはり弱気の見方を強めます。

【図表2】米ドル/円(日足)
出所:マネックス証券作成

ここで3月5日高値と4月24日高値の「ダブルトップ完成」が明確になったと考えるならば、今後一旦は107円台前半の水準を試しに行く可能性があると考えるのがセオリーでもあります。このところの米株安も弱気材料の1つとなっており、当面は一段の下値リスクに要警戒ということになるでしょう。