米中協議の行方を悲観視し過ぎない!?

先週9~10日の日程で行われた米中貿易協議の終了後、ムニューシン米財務長官は「協議は建設的だった」、劉鶴中国副首相は「協議は非常に順調に行った」などと述べたと伝わっています。

両閣僚ともに立派な“タヌキ”ぶりですが、ここで行われているレースは“チキン”であって「最終的にどちらか一方あるいは両方が崖下に転落しないとも限らない」との懸念は今後もしばらく払しょくできそうにありません。

ただ、米大統領による突然の“ちゃぶ台返し”にもかかわらず、中国副首相が自らワシントンを訪れたことや、協議は継続しながらも関税引き上げは通告通りに行われたこと、加えて既に米政権側が関税引き上げ「第4弾」についても言及していることなどを勘案すると、このレースは「目下のところ米国の方がややリードしている」と見ることができるものと個人的には考えます。

そうであるとすれば、いずれ中国側から一定の譲歩を引き出すことによって最終合意に至る可能性もあると考えられます。なおも交渉決裂の可能性は残されているものの、いたずらに悲観に傾き過ぎることは避けたいところです。

そもそも、ここにきて米中協議に対する市場の見方は徐々に冷めてきており、正直、両国間における見え透いた「ブラフ」や「威嚇」の仕掛け合いに市場が飽き飽きしてきていることも事実です。

先週見られた米・日の株価下落は少々大きなものとなりましたが、振り返れば4月下旬まで続いた超強気の展開については、やや「いいところ取りが過ぎた」との感もあります。その意味からして、足下で一定の価格調整を交えるのは当然のことであるとも考えられ、今後の相場の先行きをあまり悲観視し過ぎないことが肝心でしょう。

米ドル/円の目先は米政府の対中関税に関する中国の反応待ち

米ドル/円については、現在とりあえず一目均衡表の週足「雲」下限の位置する水準(現在は109.59円)が下値をサポートする格好となっており、この109.60-70円処というのが当面は非常に重要な節目になると見られます。

と言うのも、同水準は3月高値と4月高値をダブルトップの転換保ち合いフォーメーションと考えた場合のネックライン水準にあたるからです。今のところは「そのネックラインをクリアに下抜けた(=ダブルトップが完成した)」とも言い切れない、瀬戸際の状況にあります。

【図表1】米ドル/円(日足)
出所:筆者作成

もちろん、重要な節目であるだけに下値を強く支持する可能性もあり、ここから一旦底入れ&反発に転じた場合は、まず110円処、次に一目均衡表の日足「雲」下限、89日移動平均線などが順に意識されるところとなるでしょう。

目先は、今回の米政府による対中関税引き上げと「第4弾」の詳細発表などに対する中国側の反応を見たいといったムードが色濃く漂っていますが、場合により、中国の反応が意外なほど控えめであったりする場合には、あらためてリスク回避ムードが後退する場面もあると見られます。

ユーロ/米ドルは当面上値の余地が自ずと限られる

一方で、先週は対ユーロでもドルがやや弱含む展開となりました。ユーロ/米ドルは一時的にも1.1250ドルを試す場面が見られており、しばらく上値抵抗として機能していた21日移動平均線を足下では上抜ける動きとなっています。

ただ、今のところは「これも年初から形成されている下降チャネル内での動きに過ぎない」と見ることができ、当面の上値の余地は自ずと限られると心得ておく必要があるように思います。

ユーロがしっかり上値を伸ばしてくるためには、やはり中国経済が力強く持ち直してくることが必要と思われます。しかるに、米国から追加関税措置を講じられる可能性が残されている間、ユーロの上値は基本的に押さえられやすいと見ざるを得ません。