NYダウ平均が大きく戻す
かねて筆者が想定してきたとおり、足下ではジワジワとドル高・円安傾向が強まってきています。今年の年頭にあたっては、市場関係者の大半が「2019年はドル安・円高」との見解を示していましたが、それで本当に年初から円高一辺倒の展開が続いたとしたら、投資家はどんなに楽でしょう。
むろん、現実はそう上手くは行きません。逆に、いずれ市場で「しばらくはドル高・円安」といった見方が大勢を占めるようになれば、むしろ相場は「ドル安・円高」を志向し始めるということも大いにあり得るものと思われます。
少し振り返ると、当初の「ドル安見通し」の背景には、1つに米連邦準備理事会(FRB)の政策運営スタンスが1月4日以降、一気にハト派寄りに傾いていると市場が捉え始めたことがありました。ただ、それは同時に米国株の買い材料にもなったわけで、実際に先週末2月15日のNYダウ平均は一時25,883ドルまで上昇し、昨年12月3日高値=25,980ドルに顔合わせするレベルまで大きく戻ってきています。
もちろん、この株高の要因には「過去最長となる1ヶ月超に渡った連邦政府機関の一部閉鎖が、ようやく1月下旬に解除されたこと」に加え、何より「米中貿易協議の進展に対する期待が市場で高まり、なおも持続していること」なども大きく貢献していると考えられます。
その結果として演出された米株高は日本株の出直りにも貢献し、そのことが市場全体にリスクオンのムードを漂わせ、それによって米ドル/円の下値が支えられている(円の上値が押さえられている)という点も見逃せません。
米ドル/円強気パターンの行方
また、テクニカル的に見ても米ドル/円は、まず日足ロウソクが一目均衡表の日足「雲」上限を上抜け、相前後して「転換線」が「基準線」を上抜け、さらに「遅行線」が日々線を上抜けるという「三役好転」の強気パターンとなっており、当面は200日移動平均線(200日線・現在は111.29円)や89日移動平均線(89日線・現在は111.43円)などを強く意識した展開になるものと見られます。
両線は相応の上値抵抗力を発揮するものと思われますが、それだけに同水準を上抜けてきた場合は、そこから一段の上値余地が拡がることになるものと見られます。
なお、先週の米ドル/円は週足ベースでも一目均衡表の週足「雲」上限(現在は110.19円)を終値で上抜け、さらに月足ベースでも一時的に月足「雲」上限(現在は110.61円)や31ヶ月移動平均線(31ヶ月線・現在は110.55円)を上抜ける場面がありました。
ことに、月足の推移との相関が強い31ヶ月線が上向きで推移していることは見逃せないポイントであると考えられ、仮に同線を上抜けてきた場合には、次に前述した200日線や89日線、そしていずれは現在111.73円処に位置する62ヶ月移動平均線(62ヶ月線)が意識されやすくなるものと見ます。
ちなみに、昨年10月4日高値から年初の安値までの下げに対する76.4%戻しは112.27円処であり、これは少し長い目で上値の目安になり得る水準であると思われます。
先週は、ユーロ/米ドルが幾度か節目の1.1300ドル処を下回る場面があり、そのことがドル強気の流れに一役買うことにもなりましたが、目先はユーロ売りに一服感が漂っていることも事実です。ただ、現状のユーロ/米ドルはやはり「戻り売り」が基本で、自ずと戻りには限界があるものと思われます。そうした点も考慮したうえで、今後の米ドル/円・ロングのエントリーポイントもキメ細かく設定することを心得ておきたいところです。