先週のレポートでは、中国の景気減速はすでに市場は織り込んでいるということを述べた。その証左として、①安川電機2度目の下方修正でも株価は上昇したこと、②中国の新車販売28年ぶり前年割れのニュースでも景気敏感株が牽引して日経平均は200円近く上昇したこと、③日本電産、一転減益への下方修正という悪材料は市場全体に広がらず、日本電産の株価は下げ幅を縮小して終えたこと、などを挙げた。
この動きは今週も継続した。ジャスダック上場のハーモニック・ドライブ・システムズが22日に発表した2018年10~12月期の受注高は前年同期比76%減と驚異的な落ち込みとなった。メディアには「ハーモニックショック、再来」との言葉が躍った。しかし、翌23日の東京市場で、他のFA関連銘柄は意外に堅調だった。当のハーモニック自身の株価も寄り付き直後に9%を超える下げとなったものの、終値は2.5%安まで下げ幅を縮小した。一時は0.4%安まで下げを縮める場面もあった。そして24日には反発に転じる場面もあった。これは日本電産と同じパターンだ。中国減速での業績悪化はもう織り込んだということだろう。
24日付の日本経済新聞は1面トップで、「中国ハイテク生産急減」との見出しで、日本からの半導体製造装置の輸出が2018年12月に前年同月比34%減と大幅に落ち込んだことを報じている。これには目を疑った。半導体製造装置の輸出が大幅減になったことに、ではない。こんなニュースが新聞の1面トップに取り上げられることに、である。中国で投資が手控えられている、ということは既知の事実でなんらニュースバリューはない。
おもしろいもので、24日の東京市場ではアドバンテスト、SCREEN、東京エレクといった半導体製造装置メーカーやSUMCOのような半導体部材メーカーの株価が大幅高を演じた。日経の同記事のなかで、電子部品の受注額が9四半期ぶりにマイナスとも書かれていたが、ロームの大幅高をはじめ村田、TDK、京セラなど電子部品各社は軒並み高となった。
そもそも日本の対中輸出額はそれほど落ちていない。ようやく12月のデータは前年同月マイナス7%と比較的大きな低下となったが、比較対象の2017年12月は1兆5000億円を越える過去最高を記録している。そこと比べて7%減というのは、報じられている中国景気の落ち込みを考えれば比較的軽微と言えるだろう。
対中輸出額をグラフにすると以下の通り。いまだに高水準にある。
本稿を執筆している本日の寄り付き直後の東京市場では、ハーモニックの株価は6%を超える急伸となっている。
象徴的なのは東京エレクの株価が75日移動平均を上回ってきたことだ。1年以上にわたって調整してきたが、潮目が変わりつつある。真っ先に調整に入った銘柄から反転が始まっている。
SUMCOは昨日の5%高の後、今朝も7%以上の急騰となっているが、それでも1月高値からの下げ幅に対する戻り率は13%に過ぎない。日経平均やTOPIXの戻り率3割に比べて出遅れている。PERはわずか6倍台。戻り余地は大きいと思われる。
世界の景況感が悪いのはもうわかった。市場の視線はその先に向いている。今度はいつから、どこから、何から良くなってくるのかを見始めている。答えは市場にある。半導体関連、電子部品関連の大幅高がその答えだ。