直近のJ-REIT価格動向:分配金利回りが5%になっても価格続落傾向が続く背景

5月1日~6月9日のJ-REIT価格は続落となった。東証REIT指数は、2026年4月末の1,880ポイントから反転の動きを示すことはなく、6月8日には取引時間中に1,750ポイントを割り込む場面もあった。

分配金利回りが5%になっても価格続落傾向が続く背景としては、2026年2月以降続く国内長期金利の想定外の上昇幅に加え、利下げが想定されていた米国が利上げに転じる可能性が生じてきたことがある。J-REITの業績面で見ると、国内長期金利の想定外の大幅な上昇は、借入金の支払利息増加という影響を与えている。しかし、物件売却益の計上や内部留保の取り崩しが可能な銘柄は増配基調を維持しており、価格下落は業績への懸念とは考えられない。

したがって、国内外の金利動向に不透明感が強い状態であるため、投資家は上昇基調が鮮明な株式市場に資金を振り向ける動きが続いていると考えられる。

金利上昇で不動産価格上昇に歯止め

前述の通り、国内長期金利の上昇は支払利息増加を伴い、J-REITの業績に影響を与えている。不動産価格も同様の傾向を示している。具体的には、高騰を続けていた不動産価格が停滞に転じている点だ。

J-REITでは、各決算期に保有する物件の鑑定価格を公表している。鑑定価格を算出する際には、当該物件の想定キャッシュフロー(CF)の変動リスクや、国債などの安定資産と比較した不動産投資の期待される利回りを用いる。この期待利回りの一つとして、キャップレート(CR)がある。実質的には各決算期時点の不動産投資利回りを指している。

つまりCFが一定であれば、CRが低下すれば不動産価格は上昇し、逆にCRが上昇すれば、不動産価格は下落する。図表は、東京23区内で2023年度下期時点から2025年度下期時点(いわゆるセイムストアベース)の、J-REITが保有する賃貸住宅のCR変動幅の推移を示したものであるが、CRが低下する物件棟数が大幅に減少している。

【図表】前年度比のCR変動推移
出所:各銘柄公表資料を基にアイビー総研(株)作成

賃貸住宅は収益変動リスクが比較的小さい用途であり、CRの低下に歯止めがかかった要因は、国内長期金利の上昇だと考えられる。2026年度に入り、長期金利はさらに上昇しているため、CRが低下する棟数はさらに減少する可能性が高い。10年国債利回りで見れば、2024年末の1.2%程度から2025年末に2.0%まで上昇し、直近では2.8%まで上昇しているためだ。図表の対象となる賃貸物件の利回りは中央値で3.4%であり、CRが上昇する棟数がさらに増加する懸念もある。

実勢の不動産売買価格は、J-REITが保有物件を売却する際、CRを下回る利回りで取引が成立しており、高騰が続いているように見える。しかし、借入金利上昇に伴いレバレッジ効果(※)も低下しているため、不動産価格の上昇には歯止めがかかる可能性が高いと考えられる。

※不動産利回りより低い調達金利での借入金を活用し、自己資金ベースの投資利回りを高める効果