歴史的インフレ発生から大きく崩れた米ドル/円と実質金利差の関係
米ドル/円の長期トレンドは、2010年代までは日米の名目金利からインフレ率を引いた実質金利と高い相関関係が続いてきた。しかし、2022年以降歴史的インフレ局面を迎えたところから両者の関係は大きく崩れた(図表1参照)。そしてここ数年は、日米実質金利差(米ドル優位・円劣位)縮小を尻目に米ドル高・円安の拡大が目立っている。
日米の長期金利、10年債利回りからインフレ率(米国はコアCPI=消費者物価指数、日本はコアコアCPIを使用)を差し引いた実質長期金利差は、2022年には大幅な米ドル劣位・円優位に転じた。歴史的インフレとなり、米実質金利が大幅なマイナスになったことが大きかった。
その後は米インフレ率が大きく低下する中で、日米実質金利差は米ドル優位・円劣位を回復し、2023年にはそれが3%を大きく超えるまで拡大した。こうした日米実質金利差の変化は、2022年以降の米ドル高・円安の急拡大をある程度正当化するものにも見えた(図表2参照)。
2025年半ば頃から実質金利差縮小でも円安に
ただ、2025年半ば頃からは、日米実質金利差は大きく縮小に転じ、2026年5月には1%を大きく下回った。これに対して、米ドル/円は逆に大きく上昇に向かい、最近は160円を大きく上回り、ここ数年の米ドル高値・円安値の更新が続くところとなった。
過去1年余り、日米実質長期金利差が大きく縮小してきたのは、日本の名目金利の大幅な上昇による実質金利上昇の影響が大きいだろう。そうした名目および実質の金利上昇は円高ではなく、逆に円安をもたらしており、米ドル/円と日米実質金利の間には、かつてない異例な関係が展開している。
円安の流れを止めるために必要な財政規律への懸念払しょく
図表3は、2025年以降の米ドル/円と日本の10年債利回りを重ねたものだが、2025年半ば頃から、日本の10年債利回り上昇と米ドル高・円安の相関性が高くなったことが分かる。日本の10年債利回り上昇の主因は、財政規律への懸念とされるが、それが円売りの大きな要因になっているとも考えられる。
日本の10年債利回り上昇と米ドル高・円安は、2025年10月の高市政権誕生以降一段と加速した。以上のように見ると、日本の金利上昇、それを受けた実質金利上昇が円高をもたらさずむしろ「異例の円安」をもたらしている流れを変えるためには、財政規律への懸念の払しょく、そして高市政権の財政政策の転換がやはり必要ということになるのではないか。
