日経平均は懸念していた通り、調整色が増してきました。最高値からの下落率は10%に及び、経験則的には「調整局面入り」と言える水準となっています。さらに経験則的に見れば、調整期間には2ヶ月程度を要し、高値からの下落率が20%を超えると弱気相場入りする、といったメドがあります。このまま弱気相場にシフトするのか、調整局面で留まり、早々に上昇トレンド回帰を実現するのか、見極めが今後は問われることになるでしょう。
なお、これまでの上げ局面でも基本的に強気を崩していなかった筆者ですが、今回はやや慎重に捉えたいと考え始めています。劇的な構造変化をもたらすAIなどは本物という見方に揺らぎはない一方、かなりの期待はすでに株価に織り込み済であり、巨額に膨らんだAI関連投資のビジネスリスクは相当に高まっているためです。こうした時こそ、相場圏外にあった魅力的な企業の発掘に時間を割くなど、落ち着いて対応するのが重要とのスタンスを継続したいと思います。
外国人株主は日本企業の経営力を進化させる「黒船」か?
さて、今回は「外国人保有比率」をテーマに取り上げてみたいと思います。前回と同様、このお題もテクニカル的なもので「アナリスト視点の相場テーマ」というタイトルにはそぐわないかもしれませんが、外国人株主の目が経営に大きな影響を与えるようになったことを考えると、これもまたファンダメンタルズの先行きを占う重要なカギになってきたのではないでしょうか。
実際、昨今の株主総会では株主から経営陣に対してかなり手厳しい、しかし合理的な指摘がなされるケースが増えており、それが企業の経営力を良い意味でさらに進化させる「黒船」になっています。忖度なく論理的アプローチを主張する傾向の強い外国人株主は、まさにその先兵としての役割を担っていると言えるでしょう。
2026年7月1日付、「【日本株】株価77倍「第二のキオクシア」を探せ!次の大化け企業を探すために必要な条件と銘柄候補」のコラムでは、その成立要件の一つに「柔軟な経営力」を挙げましたが、外国人保有比率はその経営力を示唆する指標になるとも考えます。もちろん、外国人保有比率が高いからといって柔軟とは限らず、その逆に比率が低くても柔軟であるというケースは多数存在します。ここではあくまで投資アイデアのヒントを探るという視点で、前回と同様に頭の体操といった感じで緩く読んでいただけると幸いです。
ひとくくりにはできない、市場を動かす外国人投資家の「3つの顔」
本題に入る前に、まず外国人株主をしっかりと分けて考えておきましょう。まとめて認識されるケースが多いのですが、極めて大雑把に分類すれば、
(1)積極的に売り買いするアクティブ投資家、
(2)経営関与目的で上場前から出資している投資家、
(3)日経平均などの指数連動投資を行うパッシブ投資家、
の3種類が外国人投資家には存在します。
読者の皆様がイメージする外国人投資家はおそらくこの(1)に相当する投資家層であり、巷間よく目にするアクティビストもここに含めて考えます。(2)はプライベートエクイティ(PE)ファンドがその代表格で、株式を多数保有する創業者の資産管理会社が海外にある場合も、この(2)に含まれます。(3)は実は外国人保有資産の過半を占めているのですが、指数連動であるために耳目を集める売買はまずなく、このコラムで想定する経営力示唆の対象とも考え難い位置づけとなります。会社四季報で提示されている外国人保有比率はこの(1)~(3)の合計となります。
会社四季報の「外国人保有比率」だけで株を買ってはいけない理由
そこで経営への影響に対する期待を考えると、(1)の投資家がどのような銘柄に注目しているのかが重要になります。つまり、会社四季報記載の「外国人保有比率」を鵜呑みにするのではなく、そこから(2)、(3)の投資家を除外して考える必要がある、ということです。
しかし、(1)と(3)は一つの会社がアクティブとパッシブの両方を運用しているケースが少なくなく、明確に切り分けることは困難です。そこで、(2)の影響を除くことで大まかなイメージを掴んでみましょう。具体的には、「外国人保有比率」上位企業から、(2)と目される投資家が議決権の3分の1超を有している企業を除くと、一般的なイメージに沿った「外国人保有比率」の高位企業がリストアップできます。
例えば、東証プライム上場の「外国人保有比率」上位30社から(2)の影響の大きな企業を除くと18社くらいに絞り込むことができます。なお、これら企業の年初来株価上昇率は平均38%と、日経平均の28%を大きく上回ります。ただし、歴史的な急騰となったキオクシアホールディングス(285A)を除くと15%の上昇と、実は日経平均には負けているという構図も見えてきます。
このことは、ある時点の外国人保有比率の多寡だけを見て、株価に期待を寄せるのは危険だということです。外国人保有比率が高くとも、その存在が経営陣に好影響を与える前なのか、与えた後なのか、そもそも経営陣はそれらに無頓着なのか、あるいはそれ以上に業界環境の変化が大きいのか、しっかりと見極める必要があるということです。
実際、上記(18社からキオクシアを除いた)17社の2025年の年間株価上昇率は平均約27%と、年初来の動きよりも良いものでした。とすれば、直近の株価パフォーマンスの減速は外国人投資家の与える良い効果の多くは既に一巡してしまった後という可能性も否めないのです。投資を考えるうえでは外国人保有比率だけではなく、経営力変化の効果がどこまで株価や業績に反映されているのかも考えておくべきと言えるでしょう。
実際の注目銘柄から学ぶ、株価の動きと企業分析の面白さ
では、どのような企業が注目されるでしょうか。上記18社のうち、2025年1月から現在までで50%以上値上がりをしている銘柄としては、キオクシアホールディングス(285A)、KOKUSAI ELECTRIC(6525)、ルネサスエレクトロニクス(6723)、サンケン電気(6707)、アルバック(6728)といった半導体ド真ん中銘柄に加え、住友大阪セメント(5232)やミスミグループ本社(9962)などの企業も名を連ねています。これが外国人株主の好影響なのかどうかはしっかり確認をしてみてください。
逆に、この期間の株価にやや苦戦している銘柄としては、ローランド(7944)、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(7532)、シンクロ・フード(3963)などが挙げられます。これらには業種的な逆風影響も大きいと考える一方、経営力に磨きがかかっているのであれば、むしろ今は投資妙味が高いという見方もできます。
外国人保有比率だけでも、掘り下げれば企業分析の一つのネタになるというのは実に面白いですよね。ぜひ、こうした視点でも銘柄選択のきっかけにしていただければうれしい限りです。
