世界的に金利上昇がテーマに

足元の金融市場では、改めて金利上昇がテーマとなっています。欧米の長期金利は、長らくレンジ内でもみ合ってきましたが、地政学リスクやインフレ懸念を受けて、その上限近辺に位置しています。一方、日本の10年金利は、水準こそ低位ながら、上昇トレンドにあります。

【図表1】主要国の10年金利の推移
出所:Bloomberg

もう一つの特徴として、各国で超長期金利の上昇が目立っており、イールドカーブのスティープ化も進んでいます。この点でも、日本のスティープ化が特に顕著です。

【図表2】主要国のイールドカーブ(30年‐2年金利差、%)の推移
出所:Bloomberg

今後の金利上昇要因として、まずテクノロジー主導の設備投資の持続が挙げられます。AI、半導体、データセンター、電力インフラなどへの投資需要はなお旺盛で、景気を支える一方、資金需要を通じて金利に上昇圧力をもたらします。

欧州では断続的な利上げ、米国では年内1度の利上げを想定

次に、資源価格を含むインフレの持続です。エネルギー価格や輸送コストへの波及から、中央銀行は利下げに慎重にならざるを得ません。欧州では断続的な利上げ、米国では年内1度の利上げが想定されており、金利の低下期待は後退しています。

【図表3】2026年末までの利上げ・利下げ回数予想
縦軸の数値は年末までの利上げ(+)利下げ(-)回数の市場予想。2026年3月のイランでの紛争以降、欧米では年内の利下げ予想が利上げ予想に変化した。
出所:Bloomberg

さらに、積極財政や中央銀行の独立性への懸念も重要です。防衛、エネルギー安全保障、産業政策、社会保障などを背景に、各国で財政支出への需要は高まっています。財政拡張は短期的には景気を支えますが、国債発行の増加や利払い負担への懸念を通じて、長期・超長期金利の上昇要因となります。

また、政治が金融政策に強く影響するとの見方が広がれば、インフレ抑制への信認が低下し、リスクプレミアムが上乗せされやすくなります。特に日米では、長期金利上昇圧力として指摘される点です。

ウォーシュ新FRB議長の市場との対話に注目

米国では、FRB議長がウォーシュ氏に交代しました。従来のように市場へ詳細な政策経路を示すフォワードガイダンスや、危機時以外の大規模なバランスシート政策について、慎重な姿勢を示しています。政策スタンスの再調整は、短期的には市場の不透明要因となり、まずはどのようなコミュニケーションが取られるのか、注目されます。

一方、金利低下要因もあります。まず、足元の地政学リスクが鎮静化すれば、原油価格下落を通してインフレ期待を落ち着けるでしょう。中期的には、景気サイクルの反転や信用不安の勃発が挙げられます。また、長期金利の上昇は政府の利払い負担を増加させるため、各国当局がその上昇を無制限に放置するとは考えにくい、という政府の思惑も想像されます。米ベッセント財務長官からもそのようなスタンスは随時、垣間見えます。長期債より短期債の発行を増やす、規制緩和で銀行の債券保有余力を高めるなど、金利上昇を抑制する手段に出ることが考えられます。

総じて、長期金利は高止まりしやすい環境にあり、特に超長期金利への警戒は続くでしょう。投資家にとって金利上昇はリスクであると同時に、利回りという収益源を取り戻す機会でもあります。

超長期債ほどの金利上昇リスクを持たない米10年債に現在の利回りが4.5%程度の水準で投資した場合、その後3年間の期待リターンは年率5.7%程度と試算されます。また、4~5%台の利回りではリターンのばらつきが比較的小さく、低利回り局面や極端な高利回り局面に比べて、安定的なリターンが期待されやすい傾向があります。景気減速時の備えとしても、この程度の年限の債券を一定程度組み入れる意義は高まっています。

【図表4】米10年債の利回り(横軸)に対する、その後3年保有した場合の年率リターン(縦軸)
出所:Bloomberg

日本の金利上昇について

冒頭の通り、日本の金利上昇は、他国と比べると水準はまだ低いものの、その上昇トレンドは顕著です。主な要因として、政策金利期待と財政問題の二つが指摘できます。

【図表5】日本の金利上昇の要因分解
10年金利の動きを、短期金利要因、海外金利要因、財政・需給要因、インフレ要因、その他の基調要因の5つに分けてモデル化した。ただし、このモデルは10年金利の動きをこれら5つで近似したものであり、実際の10年金利を完全に再現するものではない。そのため、モデルで説明される金利水準と実際の10年金利の間には、一定のズレが生じる。
出所:マネックス証券作成

日銀の追加利上げ観測は相応に織り込まれており、図表3の通り、他国比では大きく動いておりません。むしろ今後は、財政問題にともなうタームプレミアムの上昇がより警戒されます。当社で試算した日本のタームプレミアムは持続的に上昇しており、英国で財政懸念から金利上昇(トラスショック)が発生した2022年当時の水準を上回る位置にあります。

【図表6】タームプレミアムの推移
タームプレミアム:長期債を持つリスクへの上乗せ利回り
出所:マネックス証券作成

もっとも、日本が当時の英国と同様の展開をたどる可能性は現時点では高くないでしょう。英国では年金基金のレバレッジ運用が金利上昇で逆回転し、売りが売りを呼ぶ市場混乱につながりましたが、日本には同様の構造はあまりありません。また、今のところ名目成長率が金利を上回っており、市場全体の反応も限定的です。とはいえ、一定の警戒が必要な水準に来ていることは確かであり、懸念が高まれば金利上昇、株安、円安が重なるトリプル安ともなりかねません。

ただし、その場合でも短期的なマイナス材料にとどまるでしょう。仮に市場が財政再建を促す形で金利が上昇しても、英国で見られたように、市場が納得する政策転換が示されることで、金利上昇圧力は一定程度抑制される可能性があります。もちろんその場合、マクロ環境の見通しにも変更が必要とはなってきます。

金利情勢で調整が進んだJ-REITは?

国内債券については、素直に金利低下を期待する局面ではなくなりましたが、利回り水準そのものを評価する局面に入っており、中期的な資産運用では投資妙味が生じています。

金利上昇で調整が進んだJ-REITも注目です。NAV倍率は1倍を下回り、指数ベースの配当利回りは5%台にあります。短期的にすぐ反発を期待する局面ではありませんが、値上がり益を強く見込まなくても、インカム収益を通じた投資妙味が出ています。

今後の投資環境では、金利低下に依存するのではなく、高止まりする金利を前提に、利回りをどのようにポートフォリオに取り込むかが重要になります。短期的な金利上昇リスクを警戒しつつも、中期的には利回りを味方につける視点が求められる局面です。