1週間余り前にこう述べた。<日銀の金融政策決定会合でよほどの「サプライズ」が出ない限り、そこでラリーは終わりとなるだろう。「サプライズ」は予想できないから「サプライズ」なのであって、果たしてどんな「サプライズ」があるか予見不能だ。だが、おそらく、「サプライズ」はないだろう。日銀が追加緩和に動いても市場の予想の範囲内の手段に留まるなら、材料出尽くしで円高株安になるだろう。>(7月21日付けレポート「相場の地合い改善 - 見た目の悪さに振り回されなくなってきた」)

ほぼ想定通りの結果だが、予想外だったのは「サプライズ」があったことだ。ここまでひどい「手」を打つとは思わなかった。ETFの増額のみ - こんなことなら現状維持のほうがよっぽどましだったと思わせるような政策会合の決定である。

ヘリマネの思惑まで喧伝されるくらいに政府と日銀の協調姿勢を示すことが期待されていたというのに、そうした「市場の催促」はまったく無視。いかにも「財政ファイナンス」との誹りを恐れたかのような決定である。それこそ一番やってはいけないことだった。

金融機関に配慮したかのようにマイナス金利の深堀りもなし。これでは日銀の強固な姿勢を示すどころか、まるで及び腰である。

今回の決定は、「戦力の逐次投入はしない」と言った黒田総裁の3年前の言動とは完全に正反対、「お茶を濁して終わり」である。

言い回しや伝え方が難しいが、ご理解いただけるだろうか。今回の決定会合で日銀に求められたのは、「量的質的緩和」や「マイナス金利」といった「政策そのもの」ではない。いまさら「量」を増やしたって、あるいは金利をいくら下げたって、効果がないのは周知の通りだ。しかし、それでも日銀はやれることはなんでもやる、将来的にはもっと過激な政策にも踏み込むことがあり得るという「ファイティング・ポーズ」を見せて、手詰まり感を払拭することであったのだ。

まったく、ひどい。経済対策も見掛け倒しで実効性は乏しい。金融・財政の両面における政策期待(あるいはその協調期待)で上げてきた相場もここまでだ。

ところが、ここでもうひとつの「サプライズ」があった。株式市場が下げを埋め戻しプラスに転じたことだ(午後2時30分現在)。無論、マイナス金利拡大がなかったことで大幅高になっている銀行株が主導しているが、金融株の上昇だけで相場全体をプラスにもっていくことはできない。相場全体がしっかりしているのだ。

前回のレポートで述べた通り、足元佳境を迎えつつある企業決算は想定以上に悪くない。よってバリュエーションも額面通り受け止められる(つまり高くない)。そしてよくよく考えれば、確かにETFの買い入れ6兆円というのは、相当な資金流入額である。業績、バリュエーション、需給の面を考えれば、日銀の追加緩和が物足りないからという理由で、何もこの水準から大きく売り込むことはあり得ない。追加緩和なら急騰し、緩和見送りなら急落という反応が過剰だった。これまでの市場の反応が日銀会合の結果に振り回され過ぎだったのだ。

もしかしたら株式市場は「日銀離れ」をしたのかもしれない。そうしたら、それは「ポジティブ・サプライズ」である。

前出のレポートの結論はこうだった。<日銀の金融政策決定会合の結果を見極めてから、落とすことのできるポジションは一旦、手仕舞って、夏休みをとることをお勧めしたい。>この結論は変えるつもりはない。政策期待相場が終了したのは事実。ひとつのサイクルが終わったのだから、小休止でよい。関東地方もようやく梅雨明けして、夏らしい空が広がっている。来週からもう8月だ。バカンスの季節である。

【お知らせ】「メールマガジン新潮流」(ご登録は無料です。)

チーフ・ストラテジスト広木 隆の<今週の相場展望>とコラム「新潮流」とチーフ・アナリスト大槻 奈那が金融市場でのさまざまな出来事を女性目線で発信する「アナリスト夜話」などを毎週原則月曜日に配信します。メールマガジンのご登録はこちらから