米大統領選の結果を受けて、今日、11月7日に株のストラテジストが書くレポートのタイトルとして、「トランプ大統領で株価はどうなるか?」以外にふさわしいタイトルはない。おそらく多くの同業者が同じようなタイトルのレポートを書いていることだろう。御用とお急ぎでない方は、それらのレポートを一通り読んでみるとよいだろう。投資に関して有益な情報は何ひとつ得られないこと、請け合いである。じゃあ、なんで「それらのレポートを一通り読め」なんて言ったのか!とお怒りになる方もいるかもしれない。だから、「御用とお急ぎでない方は」と注釈をつけたではないか。がまの油売りの口上を聞くのと、同じくらいの暇つぶしにはなるでしょう。
それで、本題。トランプ大統領で株価はどうなるか?だが、その答えは….
その答えは!?
その答えは!!!?
わかりません。
「トランプ大統領で株価はどうなるか?」「わからない」というのが答えである。
昨日11月6日の東京市場で日経平均は1005円高になった。NY市場ではダウ平均が1508ドル上げた。典型的なトランプ・トレードが起きた。しかし、それは「パブロフの犬」の反応である。「トランプ勝利ならドル高・株高」と刷り込まれていたので、その通りに反応しただけだ。条件反射である。なぜトランプならドル高・株高になるのか?ロジックはあるようで、ない。
トランプなら減税や規制緩和で米国の景気が良くなる、だからドルも強くなり株価も上がる、というのがひとつの根拠だが、それは短絡思考というものだ。
他の政策との兼ね合いも考慮しなければならないのは言うまでもない。関税は?当然、世界経済の下押し圧力になる。米国にとってはインフレの要因になる。そうなればFRB(米連邦準備制度理事会)の利下げはどうなる?場合によっては引き締めに転換するかもしれない。エネルギー政策は?EVは?移民政策は?様々な施策とそれらが米国景気に与える影響は、複雑すぎて予想が困難である。
そもそも政策が矛盾している。米運用大手ピムコのグローバル最高投資責任者、ダン・アイバシン氏は日経新聞の取材にこう回答している。「(トランプの)政策は矛盾しており、我々も社内で議論に多くの時間を費やしたが、為替相場の方向感については明確なポジションを持てないでいる」
つまり、こうだ。ピムコのような世界的に大きな運用会社でさえ、社内で議論したけど結論は「わからない」ということなのである。
なぜなら、政策が矛盾しまくっているからだ。
矛盾しているということは、整合的でないということで、そうなると理論的に考えれば、それらの政策は(すべては)実行されないと考えるのが普通である。
関税についても前回の時もそうだったが、適用除外や例外などがあって、実際にはどれだけのインパクトがあるのかは、実行されてみないとわからない。
そうなると、
トランプ(&議会も共和党)になったから、こういう政策が実施され、その結果、恩恵があるのはこのセクター、デメリットがあるのはこのセクター…
なんて絵が簡単に描けないことになる。つまり、選挙の時に言っていた政策がそのまま実行されるかは、まったくわからないのだ。
選挙であれだけ「インフレを終わらせる」と豪語したトランプだ。インフレを助長するようなことを自らやれるのか?やらないだろう、普通は。ところが、トランプは普通じゃない。だから、やるかもしれない。こんなレベルから考えなければならないのである。
つまりは、すべてこれからだ。先回り買いなんてできない。逐一で対応していくしかない。そういう4年間の始まりである。