任天堂(7974)、インソース(6200)、デュアルT(3469)、安川電(6506)、ミネベア(6479)。今朝、買い気配で始まった主な銘柄である。ポケモンGO上陸間近の任天堂は説明不要、インソース(6200)、デュアルT(3469)は東証マザーズ、ジャスダック市場にそれぞれ本日新規上場した銘柄だから、これらも言うに及ばず、だろう。
注目すべきは安川電機だ。買い気配で始まり、前場では一時83円(6%)高い1468円まで買われ、約半年ぶりの高値を付けた。年初から上値抵抗と見られていた1400円どころを抜けてきた。きっかけは昨日の決算発表だ。4-6月期は円高の影響を受け純利益が前年比で4割も減った。それでも、市場が「買い」で反応したのは、主力市場の中国でスマートフォンや自動車向けで受注量が前年を上回っていることを好感したからだ。想定為替レートを1ドル105円と期初予想より円高に修正したものの、ロボットなどの受注回復もあって、通期業績見通しは据え置いた。これが先行きへの期待感を強めた。
安川電よりさらに買われたのがミネベア。一時、115円(約16%)高の849円まで急騰した。21日付の日本経済新聞が報じた、「4-6月期の営業利益は4割程度減り、70億円前後になった模様」との業績観測を受けて買いを集めた。大幅減益も、期初想定の55億円やアナリスト予想の平均(QUICKコンセンサス)の68億円を上回る。こちらも安川電と同じストーリーだ。円高の影響やスマホ向け照明部品の販売減はあるものの、主力の小型ベアリングの販売は好調だった。
いずれもヘッドラインは、<円高で大幅減益>ながらも、中身を見ると悪くない。こうした銘柄が決算発表の序盤から買われる展開は久しぶりである。実は、この流れには伏線があった。先鞭をつけたのはファーストリテイリングだ。ちょうど1週間前の14日に、16年8月期の純利益が前期比59%減の450億円になる見通しだと発表した。従来予想は45%減の600億円だったから大幅な下方修正だ。急激な円高を受けて為替差損を234億円計上したためだ。
しかし、主力の国内ユニクロ事業は直近の3-5月期だけを見ると春夏衣料や機能性肌着などが好調で4%の増収、18%の営業増益と好調だった。週末のセール販売を抑えて値引きを減らした結果、粗利率が50.7%と0.9ポイント改善した。これを受けてファストリの株価は6年9か月ぶりのストップ高を演じたのだ。
繰り返し強調したいのは、<円高で大幅減益>という見た目の悪さで盲目的に売られるのではなく、ちゃんと中身の改善を評価した買いが入るようになった点である。円高⇒業績悪化⇒株安という条件反射的な悪循環が断ち切られる兆しかもしれない。日本株相場の足腰が強くなった証左と歓迎すべき動きである。
全体観としての相場環境に言及すれば、NYダウ連日の最高値更新、107円台まで円安に戻ったドル円相場、そしてポケモン旋風と非常に好環境がそろっている。しかし、この相場のいちばん根底にあるのは7/11付レポートで述べた通り、ヘリコプターマネーを連想させるような政策発動期待である。そのレポートで述べたことを再掲しよう。
<限りなくヘリマネに近い大胆な政策。それこそが、アベノミクスのギアチェンジであろう。市場はそれを織り込みにいく。経済対策は8月上旬までにまとめられ、9月に対策の裏付けとなる補正予算案が臨時国会に提出される。追加緩和観測が高まっている日銀の金融政策決定会合は7月28日-29日だ。財政・金融面での政策期待が高まる今月末に向けて株価は堅調に推移すると考える。
7月末から8月上旬は絶好の売り場となるだろう。このチャンスを逃さないようにしたい。>
来週は決算発表が本格化する。序盤のこの流れが続けば、相場はさらに上値が期待できる。円高⇒業績悪という短絡的な材料に振り回されなくなってきた。相場の地合いは着実に改善している。月末までラリー継続との見通しは変わらない。
但し、日銀の金融政策決定会合でよほどの「サプライズ」が出ない限り、そこでラリーは終わりとなるだろう。「サプライズ」は予想できないから「サプライズ」なのであって、果たしてどんな「サプライズ」があるか予見不能だ。だが、おそらく、「サプライズ」はないだろう。日銀が追加緩和に動いても市場の予想の範囲内の手段に留まるなら、材料出尽くしで円高株安になるだろう。日銀の金融政策決定会合の結果を見極めてから、落とすことのできるポジションは一旦、手仕舞って、夏休みをとることをお勧めしたい。
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