昨日(23日)付の日本経済新聞夕刊「ウォール街ラウンドアップ」のコーナーに『トランプ氏退任を語る楽観』というタイトルで非常に興味深い話題が取り上げられていました。

NY総局の山下晃氏によれば、最近の市場では「もしもトランプ大統領が辞めたら」という話題が目立つようになってきているとのこと。なかには「(そうなれば)米国株は3~5%は上昇するだろう」との声もあり、また副大統領のペンス氏が大統領になり代われば「よりうまく経済刺激策を実行できるかもしれない」との見方も根強いなどと綴られています。

周知のとおり、先週の市場では件の「ロシアゲート」騒動が俄かに巻き起こり、米政局の混迷が続くことによって大型減税など米経済政策の早期実現は見通しにくくなるとの見方から、米株やドルが強く売り込まれる場面が見られました。その結果、先週17日のNYダウ平均は前日終値比-372ドルの大幅安となり、翌18日のドル/円は一時110円台前半の水準まで下押すこととなりました。

ところが、ロシアゲート絡みで一時動揺した市場は意外なほど早い段階で平穏状態を取り戻し、NYダウ平均に至っては先週18日から昨日(23日)まで4日続伸。ドル/円も本日の朝方には112円に迫る水準まで値を戻す展開となっています。その背景には、足下でNY原油先物価格が50ドル台を回復し、米長期債利回りも強含みで推移するなど、得も言われぬ楽観ムードが漂っているという事実があります。

外国為替市場では、一昨日(22日)まで全体のフローが完全にユーロへと集中し、あっという間にユーロ/ドルが一時1.1260ドル台に乗せるところまで急騰する展開となりましたが、昨日(23日)は少々大きく値を下げることとなり、足下ではやや落ち着いた値動きになってきています。

ユーロ/ドルに関しては、これまでの上昇の勢いを駆って一旦は昨年11月9日高値が位置する1.1300ドル処を試す展開になると見る向きも少なくはありません。ただ、仮に一旦1.1300ドル処まで上値を伸ばしたとして、その後の展開がどうなるかを明確に見通す声は今のところあまり聞こえてきません。1.1300ドル処が大方の考える当座の上値目標であるとすれば、同水準近辺に到達した後、そこで当座の目標達成感が拡がって一旦は調整局面入りするという可能性もなくはないでしょう。

下図に見るように、今年2月22日安値から3月27日高値までの値上がり幅を3月27日高値に加算して弾き出される「E計算値」は1.1310-20ドルあたりで、昨年11月9日高値や節目の1.1300ドルとほぼ一致します。ちなみに、E計算値というのは比較的強い基調が続いているときに当面の目安となる水準を弾き出すためによく用いられるものです。

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また、5月11日に1.0839ドルの安値をつけて反発してからのユーロ/ドルが短期上昇チャネル内での価格推移を昨日まで続けてきたことも上図からは見てとれます。過去に同じような短期上昇チャネルを形成した場面は幾度もありますが、そのチャネル下辺をひとたび下抜けた後は、あまり例外なく一定調整局面を迎えるということもわかります。

今後、ユーロ/ドルがもう一段の上値を試す可能性は否定できないものの、そろそろ一応の警戒も必要になってきているということは頭の片隅にでも置いておきたいところです。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役