前回は、ドル/円の月足チャート上に描画した一目均衡表に注目し、月足「雲」上限の水準(現在は109.00円)を下抜けるかどうかが当面の焦点の一つと述べました。その後のドル/円は一時(17日)108.13円まで下落する場面があり、目下のところは同水準を下回る状況となっています。

もちろん、最も肝心なのは月末の時点(月足終値)で月足「雲」上限を下抜けるかどうかであり、その点は来週末28日の時点でしっかり確認したいところです。なおも、足下の相場は地政学的リスクの厚い雲に覆われた状態にありますが、最大の関心事となっている来週25日の北朝鮮軍創設85周年の記念日を通過した後、米朝関係の緊張が多少なりとも緩むこととなれば、結果的にドル/円が109円台を再び回復し、月足終値が月足「雲」上限の上方に留まる可能性も十分にあると言えるでしょう。

とまれ、足下では依然ドルが積極的に買われにくい状態となっており、結果として4月10日以降のユーロ/ドルは下げ渋る展開となっています。一昨日(17日)までのユーロ/ドルは一目均衡表の日足「雲」上限や89日移動平均線(89日線)などに絡みつくような格好でもみ合っていましたが、昨日(18日)は一気に上値を試す展開となり、一時は1.0736ドルまで上昇する場面もありました。

周知のとおり、昨日は欧州時間入り後に突然「英国のメイ首相が間もなく緊急声明を発表する」と伝わり、市場は一時騒然となりました。ところが、後に「総選挙を前倒しする」との報が伝わり、英ポンドは急騰。同時にドル全面安の展開となったことで、ユーロ/ドルが想定していた以上に強い動きを見せたわけです。

6月に実施されることが閣議で合意された英総選挙では、今のところ与党・保守党が議席を伸ばす可能性が高いと見られており、ブレグジット交渉に向けて与党が権力基盤を強化できるとの期待があることは事実です。しかしながら、英国側の権力基盤が強まったからといって、それで今後の欧州連合(EU側)との離脱条件に関わる交渉が優位に進むわけではないと思われることもまた事実です。

その意味では、少し長い目でポンドを買い直そうとする流れにも自ずと限界があると思われますし、結果的にドル全面安のなかで一旦ショートカバーの動きが強まったユーロの戻りというのも自ずと限られる可能性があるように思われます。

下図にも見られるように、昨日のユーロ/ドルの急騰は、ちょうど一目均衡表(日足)の基準線が位置する水準で上値が一旦押さえられたような格好となっています。過去にも日足の基準線が上値抵抗となった場面(図中の青点線)は幾度も見受けられており、今回も同様の展開となる可能性は大いにあると思われます。もとより、基準線は「相場の基準」であり、下落(押し目)や上昇(戻り)の限界を示すことが多いとされます。

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また、昨日のユーロ/ドルの高値=1.0736ドルは3月27日高値から4月10日安値までの下げに対する半値(50%)戻しの水準ともピタリ一致。さらに、同水準は現在31週移動平均線(31週線)が位置するところでもあり、複数の重要な節目が重なるところです。もちろん、それだけに其々の節目を今後ユーロ/ドルが上抜ける展開となれば、そこからもう一段の上値を追う可能性もあるということは一応念頭に置いておきたいところです。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役