足下の外国為替市場では、米早期利上げ観測が一定の盛り上がりを見せています。果たして、次回6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)までに追加利上げの準備が本当に整うのでしょうか。すでに発表された4月、5月あたりの米経済指標のなかには将来的な利上げ判断に結びつき得る改善傾向を示すものも少なくはありませんが、実際に利上げした場合の世界経済全体に及ぼす影響などを考慮すると、いまだ時期尚早という気もします。

周知のとおり、5月18日に公開された4月開催分のFOMC議事録に「第2四半期の経済成長が上向きで、労働市場が引き続いて強含みで推移し、物価上昇率が目標とする2%に向かって行くならば、フェデラルファンド・レートのターゲット・レンジを6月に引き上げることが適切になる」との見解が示されたことに目下の市場は強く反応している模様です。しかし、考えてみればこれはごく当たり前の見解であり、これまでの米連邦準備理事会(FRB)の方針、基本姿勢と何ら変わりはありません。

FRBにしてみれば、単に「6月の可能性を完全に封印したくはなかった(市場に特定の材料を与えたくはなかった)」ということだったのかもしれません。場合により、6月のFOMCと日銀金融政策決定会合がともに政策の「現状維持」を決定し、一旦は市場に失望ムードが拡がる可能性もあり、その点は十分に警戒しておくことも必要でしょう。

また、6月は英国で23日に行われる住民投票の行方も非常に気になるところです。万が一にも「欧州連合(EU)離脱」の結果となれば、ことは英国経済や英ポンドの問題に留まらず、国際金融市場全体にも大きなダメージを及ぼす可能性があります。当面は市場においてリスク・オフの嵐が吹き荒れることにもなるでしょう。もちろん、結果が「残留」となれば、また逆の反応で市場はひとしきり騒がしくなるものと思われます。

いずれにしても、こうした6月の各種重要イベントに相前後してユーロが動意づく可能性は高く、当面はユーロ/ドルと向き合って行くうえでも、いつも以上の慎重さが求められるものと思われます。よって今、ユーロ/ドルの重要な節目をあらためて確認しておくことは非常に重要です。

目下のユーロ/ドルは、米早期利上げ観測の盛り上がりもあって、下図に見るように5月初旬以降、下値模索を続ける展開となっています。昨年12月初旬以降は「昨年12月3日安値と今年3月10日安値を結ぶサポートラインと、それに平行して今年2月11日高値を通るアウトラインとで形成される上昇チャネル(図中①)」のなかで推移しています。

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興味深いことに、このチャネルの上辺は「昨年3月初旬から同年10月下旬まで形成されていた上昇チャネル(図中②)」の下辺を共有するような格好となっており、それだけ強い節目=当面の強い上値抵抗と考えることができます。

一方で、目下のユーロ/ドルは89日線を下抜けて、一目均衡表の日足「雲」下限をも下抜ける動きとなっており、今後はチャネル下辺を試すような動きとなる可能性も十分にあるものと思われます。もちろん、このチャネル下辺は強い下値支持になり得るもので、これらの重要な節目に対してユーロ/ドルが今後、どのように関わって行くのかを冷静に見定めることが肝要であると思われます。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役