この1週間は、3月下旬以降に一段と強まっていた"ドル高の修正"の流れが一服し、ユーロ/ドルは上げ渋り、ドル/円は下げ渋る展開となっています。とはいえ、足下ではユーロ/ドルが再びジリジリと下値を切り上げる一方でドル/円の戻りは頭打ちの状態となっており、今後、あらためて"ドル高の修正"の流れが強まるとの見方も払しょくしきれない状況となってきました。

現状、ユーロ/ドルはニュートラルの状態にあると言え、目先は明日(21日)に控えたECB理事会の結果とドラギ総裁会見の内容次第ということになるものと見られます。先週ワシントンで行われたG20会議において、ドラギ総裁は「物価押し上げに向けて必要なことは何でもする」などと述べていましたが、3月の理事会後の会見において「追加利下げが必要になるとは思わない」と発言したことで、後にユーロ/ドルが急騰となったことは記憶に新しいところです。

来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)については、すでに「利上げは見送られる」との見方がコンセンサスとなっており、全体にハト派トーンが強めの結果となることが予想されます。一方、来週の日銀金融政策決定会合については追加緩和実施の決定が下されるとの見方もあり、一応の警戒は怠れないものと思われます。実に様々なシナリオが想定できるものの、こればかりはフタを開けて見ない限りわかりません。

このように、明日以降の各国・地域における中銀の政策方針決定の行方も大いに気になるところなのですが、それに加えて来週28日に発表される米1-3月期GDP(速報値)の結果というのも極めて重要であると思われます。そして、この点に関しては今、かねてよりアトランタ連銀が公表している「GDPナウ」の結果に市場の関心が集まっており、これは私たち投資家にとっても見逃せないものです。

この「GDPナウ」は、GDPに関連するISM製造業景況指数、小売売上高、耐久消費財、個人所得・支出、国際貿易統計、住宅着工件数の6種類のデータが公表される度に速報値(予測値)が公表されることになっているもので、米1-3月期GDPの見通しについては最新のものが昨日(19日)アップデートされています。その結果は、前期比年率0.3%増という極めて低い水準に留まることとなりました(次のアップデートは4月26日です)。

周知のとおり、3月25日に発表された前四半期(2015年10-12月期)の確定値は前期比年率1.4%増と比較的堅調な値を示していました。そして「GDPナウ」も3月24日公表分までは1-3月期について1%を超える予想となっていたのです。ところが、4月に入ってからは予想値がグングン低下し、あろうことか4月8日公表分では0.1%まで低下するといった場面もありました。

実のところ、ニューヨーク連銀も4月から独自に「FRBNYナウキャスト」として米GDPの予想の公表を始めており、直近の4月15日公表分は0.8%増という結果でした。アトランタ連銀のものよりは高めの数値となっていますが、ニューヨーク連銀も4月8日時点では1.1%増と予想しており、足下ではやや低下傾向にあることが明らかとなっています。

もちろん、実際の結果はフタを開けてみてからということになりますし、1四半期だけのデータでは確たることも言えません。とはいえ、目先は28日に発表される結果が市場にとってサプライズとなる可能性もあり、しっかり注視しておきたいものです。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役