なおも市場では、原油価格が戻りを試す展開になるとややリスクオン、原油価格が再び軟調になると一気にリスクオフに傾くといった不安定な展開が続いています。今週末に上海で開催されるG20財務相・中央銀行総裁会議において市場安定化に向けた国際協調的な方向性が示されるのではないかとの期待も市場にはありますが、そうした期待が膨らむほど失望の反応が大きく出る可能性もあり、その点は要警戒と言わざるを得ません。

市場を覆うリスクオフの霧が晴れないなか、依然としてドルは円に対して弱含みで推移している状況ですが、そんなドルに対して足下のユーロは一段と弱気に傾いてきており、ユーロ/ドルは今週22日以降、一つの重要な節目である1.1100ドルの水準を明確に割り込みました。前回更新分の本欄で「1.1100ドルを下抜けてくるような展開となれば、そうした流れにつくのも一手」と述べましたが、実際に目下のユーロ/ドルは次の節目である1.1000ドルを試す動きとなってきています。

目下のユーロの弱気材料は、まず3月10日に控える欧州中央銀行(ECB)理事会で追加緩和実施の決定が下されるとの期待が根強くあることで、それに足下のユーロ圏における域内経済の悪化懸念や英国の欧州連合(EU)離脱に対する警戒などが相まって、どうにも積極的な買いは手控えられざるを得ないといった状況を引きずっています。

下図でも確認できるように、昨年10月22日に行われたECB理事会で追加緩和実施の方向性が示されてからユーロ/ドルは大幅に下値を切り下げる展開となりました。しかしながら、昨年12月3日に行われたECB理事会で決定された追加緩和の内容が市場の期待していた内容に遠く及ばなかったことから、それ以降、ユーロ/ドルが大きく値を戻す展開となったことは記憶に新しいところです。

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昨年12月のECB理事会後にユーロ/ドルは一旦、重要な節目である1.1000ドル台の水準まで値を戻しましたが、以降は2月初旬まで長らく200日移動平均線(200日線)や一目均衡表の日足「雲」上限、89日移動平均線(89日線)などに上値を押さえられる展開を続けました。それら複数の上値抵抗を一気に上抜けることとなったのは2月3日で、この日は米1月ISM非製造業景況指数の弱い結果やダドリーNY連銀総裁の超ハト派発言などに市場が過剰に反応し、一気にドル安が進んだ結果としてユーロを大きく押し上げるムードが一旦強まりました。

ユーロ/ドルは2月11日に一時1.1376ドルまで上昇して反落。これは昨年3月半ばあたりから10月下旬まで中期的に形成されていた上昇チャネルの下辺(サポートライン)の延長線に到達したことも一因と考えられます。やはり、こうした重要な節目はときに上値抵抗や下値支持として立派に機能するものであり、その意味では目下のユーロ/ドルが再び200日線を下抜ける動きとなってきたことも大いに注目すべきでしょう。

その時々の節目、節目を試しながら展開する相場は、次に89日線や日足「雲」を強く意識することとなる可能性もあります。1月21日に行われたECB理事会後の会見でドラギ総裁が「3月の理事会で政策を再評価する」と述べたことで、当然、市場はECBの大胆な意思決定に期待しています。少なくとも3月のECB理事会が行われるまでは、ユーロ/ドルに一段の下押し圧力がかかる可能性もあり、その点は注目しておきたいところです。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役