前回更新分の本欄では、ドル/円の当面の下値メドを114円程度の水準としましたが、実際には先週11日に一時111円割れの水準まで下押す場面を垣間見るという些か想定外の展開となりました。結果、先週末時点で一目均衡表の週足「雲」下限を下抜けることとなり、前回更新分で「そこからの下値リスクにやや警戒を強めなければならなくなる」とした部分については想定した通りということになりました。

先週12日の欧米時間以降は、まずドイツ銀行の信用不安が一服したことに加え、石油輸出国機構(OPEC)の協調減産に対する期待が持ち上がったことなどから、市場のリスクセンチメントはやや改善。しかし、昨日(16日)カタールの首都ドーハで行われた産油4か国(サウジアラビア、ロシア、ベネズエラ、カタール)の協議は増産凍結での合意に留まり、減産で合意することができなかったことから、再びリスクセンチメントは悪化しつつあると見ておく必要がありそうです。

2月1日から11日までのドル/円の下げがあまりにも急ピッチであったことから、目先は一定の戻りを試す動きが見られることとなりそうですが、何か特別な材料でも飛び出してこない限り、当面のドル/円の戻りは限られることとなりそうです。昨日も一時114.87円まで値を戻しながら、結局は115円台を取り戻すまでには至らず、なおも上値の重さが強く感じられる状況となっています。

一つには、やはり前記の週足「雲」下限が意識されやすくなっているものと見られ、当面は同水準が上値抵抗として機能し続けるかどうかを見定める必要があるでしょう。仮に同水準を上抜ければ、1月29日高値から2月11日安値までの下げに対する50%戻し=116.33円、あるいは21日移動平均線が位置する水準ぐらいまでの戻りはあってもいいものと思われますが、現状ではそれらの水準もやや遠く感じるというのが正直なところです。

市場では、なおもドル/円の下げ基調は続いていると見る向きが多いようであり、目先の戻り一巡後は再び110円あたり、中期的には106円台半ばあたりまで円高・ドル安が進むと見る向きも少なくありません。106円台半ばというのは、一つに2011年10月につけた75円台の安値から昨年6月高値=125.85円までの上昇に対する38.2%押しの水準であり、また昨年8月安値=116.12円をネックラインとするヘッド・アンド・ショルダーズ・トップ(三尊天井)がすでに完成しているとの前提から想定される中期的な下値目標の一つでもあります。一応は念頭に置いておくことが必要でしょう。

なお、近日中のイベントのなかで市場の注目度を高めているものの一つに今週18-19日にブリュッセルで開かれる欧州連合(EU)首脳会議があります。英首相のキャメロン氏は今回の首脳会議でEU改革の合意を取りまとめ、6月末をメドとしてEU残留・離脱の是非を問う国民投票を実施したい意向であるとされており、今会議の結果次第では英国がEUを離脱する可能性に対する思惑が市場で強まる可能性があると見られています。

そうこうしているうちにも、3月(10日)の次回ECB理事会の日程はジワリ近づいてくるわけであり、追加緩和実施の可能性に対する思惑から市場がユーロ売りに傾く可能性も大いにあるものと思われます。今週のEU首脳会議に相前後してユーロ/ドル相場に一定の動意がみられるかどうかという点についても注視しておく必要はあるでしょう。一つの重要な節目と見られる1.1100ドルを下抜けてくるような展開となれば、そうした流れにつくのも一手ではないかと思われます。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役